21章 プロム
この事件の後、ミンチン学院にはふたつの大きな変化がありました。
ひとつは、元学院長のマルク先生がミンチン学院の副院長になったこと。これでミンチン先生はおかしなことができません。マルク先生はこのためにスーツを新調しました。
もうひとつは、「ダイヤモンドプリンセス」になったセーラとローラがプラチナ生として復学したことでした。
セーラとローラがプラチナ寮に戻ったので、空いていた部屋に豪華な家具などが運び込まれました。もちろん、バニーユとフレーズも一緒です。それだけではありません。セーラとローラの希望で、ベッキーはセーラの、シンディはローラの専属メイドになりました。
「おかえり、セーラ、ローラ。」
ニコルはプラチナ寮に戻ったセーラとローラにそう言いました。いつもならクールにふるまうニコルですが、セーラとローラが生徒に戻ったことを喜んでいました。セーラが先に部屋に戻ると、ローラがニコルに言いました。
「ニコル、屋根裏部屋に来てくれた時に何を言おうとしたの?」
その言葉に、ニコルは顔を赤らめました。そして、ローラの手を取りました。
「再会したあの日からずっと、美しく成長したお前に心を奪われていたんだ。ずっと子どものままじゃなかったんだな。」
「あたしも成長したのよ。」
ローラは少し呆れました。それを見て、ニコルはクスリと笑いました。
「とにかく、俺はお前が好きだ。愛している。」
そう言われて、ローラの顔が赤くなりました。そして、うなずきました。
「あたしも大好きよ、ニコル。こんなにかっこよく、そして頼もしく成長しているなんて思わなかったんですもの。」
そう言ってローラは、ニコルを強く抱きしめました。
それから間もなく、「白薔薇様に恋人ができた」とミンチン・タイムスで特集が組まれました。その「恋人」とはもちろん、ローラのことです。今まで女の子と恋をしたことがないニコルにとって、ローラと一緒に過ごす時間は幸せそのものでした。
「ローラと一緒にいられて、俺は幸せだ。」
ローズガーデンのベンチに座っているニコルは、横に座るローラの肩に手を回しました。それを遠くのテーブルから、アーメンガードとロッティが見ていました。
「白薔薇様って、ローラと一緒にいると優しそうな表情をするわね。」
こうつぶやくアーメンガードに、ロッティが言いました。
「ローラも白薔薇様もことが好きなんだよ!」
「幸せそうね。ところでロッティ、リックはどうしたの?」
「お兄ちゃんなら、ジャネットに呼び出されてたよ。お兄ちゃんはジャネットに告白されるんじゃないかな?」
セーラにとっても恋人のハリーと過ごす時間は幸せなものでしたし、ハリーも意中の相手と交際することができて幸せでした。学院のメイドとしての辛い日々を乗り越え、自分を愛してくれる相手との恋をすることを知ったセーラは、美しくなっていました。
これら二組のカップルはあまりに幸せそうだったので、「こんな恋をしてみたい」と憧れる生徒がいるほどでした。
「わたしはこの幸せを、みんなに分けてあげたいと思っているの。」
セーラはローラにこう言いました。人を幸せにすることは、プリンセスが人々に贈り物をすることと同じだと思ったからです。
ミンチン学院では毎年3月に「プロム」と呼ばれるダンスパーティーが開催されますが、この年のプロムは、例年以上の盛り上がりを見せました。
ダイヤモンドでできたアクセサリーをつけ、美しいドレスを着たセーラとローラは美しく、プロム会場にいた人たちは思わず見とれていました。
「あのニコルが積極的に女の子をエスコートするとはね。去年までとは大違いだよ。」
クラウスはジュースを飲みながら、セーラとローラの前に行ったハリーとニコルを見て言いました。去年までのニコルは白薔薇としての建前でプロムに参加しており、女の子たちが集まってダンスのお誘いを受けていましたが、自分からダンスに誘うことはありませんでした。
「きっとハリーならセーラを、ニコルならローラを幸せにしてくれる。僕もダンスの相手を見つけようかな。」
クラウスはそう言って、壁の花になっている女の子を探しました。
セーラとローラの前に、ハリーとニコルはそれぞれ手を差し伸べました。恋人をプロムの相手として選んだからです。セーラはハリーの手を、ローラはニコルの手を取り、楽しく踊り明かすのでした。




