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透明マジョA  作者: ねこのかぎしっぽ
恋乞いの手紙
4/14

3

結果的に、FFMPのライブはアリスに新たな世界の扉を開けさせた。


アリスの脳裏に数年前の入学式(全校生徒と新入生の親が一堂に会し、新入生は町の賢者から洗礼を受ける)が思い浮かぶほど集まった群衆には、珍しく他国の種族の姿もちらほらと見える。


大勢に囲まれ流されるようにして会場に辿り着く頃には、一緒に来ていたプルプとはぐれてひとりぼっちだった。


薄暗い会場の中、アリスはキョロキョロと辺りを見回すが、知ってる顔はひとつもない。


とんでもない所に来てしまったものだと静かに肩を落としたその時、完全に会場の電気が消えた。


観客のざわめきをかき消すように、軽やかなギターとキーボードの音色が会場を支配する。アリスは、一体これから何が起こるのかと固唾を飲んで舞台を見つめていた。


「やってきたぜマジョの国!」


音楽が終わり、若い男の声と共に地鳴りの様な歓声が巻き起こった。


ライトに照らされた舞台には、4尾のニンギョがそれぞれ楽器を携えてこちらを見据えていた。


肩掛けのキーボードを持つのはリーダーのエスパス。

ギターのリベルテはマイクパフォーマンスをしているエスパスの周りをうろちょろとちょっかいをかけており、ドラムのジェネルはにこやかに観客へと手を振っている。

ベースのシェルムは、観客に見せつけるように口から泡の輪っかを繰り返し吐き出していた。


「今日は初めてのマジョの国でのライブ!張り切って行くので、みんな最後まで着いてきてくれますかっ!?」

 

『イエー!!!!』


「よっしゃ!それじゃ、早速行きましょう。一曲目『深海の一つ星』」



力強いドラムと自己主張の激しいギターを縫う様に、まるで光が弾けるような不思議な音色の旋律。


メンバーの楽器にはそれぞれ魔石が埋め込まれており、それだけでも魔力を帯びた音を放つものであったが、歌い手のエスパスとリベルテの歌声は更に魔力が強く、相乗効果で会場の皆を途端に魅了した。


アリスは今まで経験した事のない爆音でニンギョの奏でる魔力を全身に浴び、夢心地で食い入るように舞台を凝視する。


何と美しい振動だろうか。心臓の鼓動が音楽とリンクするように激しくなる。

まるで深い海へと溺れ落ちていくような、それでいて息苦しさを微塵も感じない不思議な感覚に身を委ねるアリスの目には、もう音を奏でるFFMPしか映っていない。


まだ恋を知らぬアリスは、荒々しくも美しい音の波に恋に落ちてしまったのだった。








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