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透明マジョA  作者: ねこのかぎしっぽ
恋乞いの手紙
1/14

プロローグ

 それは、昔々から世界中で語り継がれる童話である。


世界の中央の島に聳え立つのは世界樹と呼ばれる神秘の樹。世界樹から滴る雫は万病を癒し、葉は死者をも生き返らせる。


そんな世界樹の島を8つの島国が囲むように点在する。


薬と魔法を駆使して暮らすマジョの国。


水中でも生きられ、魔力を帯びた歌声を持つニンギョの国。


雲が触れられるほど高い所まで飛べる翼がある種族であるリュウの国。


優れた目と耳、鋭い牙と爪を使い魔物を狩り肉を喰らう種族であるケモノの国。


マグマでさえ湯船にしてしまう、世界でもっとも強い身体と美しいツノをもつ種族であるオニの国。


美しい花を身体に宿し植物と共に生きる種族であるハナの国。


魔力を美しい石に変え、装飾品や魔法具を作る事に長けた種族であるホウセキの国。


蝶のような翅を持ち魔法以上の神秘も行使する種族であるヨウセイの国。


どの国も世界樹の恩恵を欲しがったが、もちろん葉も雫も有限。限りある資源を巡って悲惨な戦争が起きた。


悪戯に死傷者を増やしていく戦争に心を痛めた各国の若い少女達はそれぞれ決死の覚悟で国を飛び出し、そして世界樹の前で出会った。


世界樹までたどり着いた8人は、国や種族が違えども持つ願いは同じなのだと確信し、世界に平和が戻るように全員で祈った。


すると、それに応えるかのように世界に暖かく柔らかい雨が降り注ぎ、争う者達の身体を癒していった。


以後戦争は終結し、100万年以上争いごとのない平和な世界が保たれている。


祈りを捧げた乙女達は後に聖女と呼ばれ、彼女ら亡き後も世界樹の下には必ず各国から選抜された乙女達「世界樹の聖女」が派遣され、今なお平和を願う祈りを世界樹に捧げ続けている。



 パタリと、宙に浮いた手袋が本を閉じた。


「世界樹と8人の乙女」と書かれている本の表紙はボロボロで薄汚れており、年季を感じられる。


手袋は、同じように日焼けをした背表紙が並ぶ本棚へそっと本を差し入れた。


「聖女かぁ………ま、国を出れない私には夢物語だよね」


部屋に声の主の姿は見えない。否、声の主は何にも写らない。


宙に浮いた紺色の手袋とローブの中身こそが声の主、アリス。


姿が見えない事以外はなんて事はない、ただの幼いマジョだった。




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