リリィとユリウス〜新婚の私が書物で勉強した事~【好感度SS】
私はミアガラッハ・レム・リリアーナ。
夫であるユリウスとは学生時代からの腐れ縁で最近夫婦になった。
二人とも同じ職場で働いている。
というか事業所の共同経営者責任者であり団長・副団長という関係だ。
昼休憩の時間、いつもは彼と食事をするのだが今日は別々に摂っている。
別に喧嘩をしたとかそういうわけではない。
結婚するにあたって親から貰ったアドバイスをきちんと実行しているのだ。
私達は同じ職場に勤めているので言ってみれば四六時中一緒に居る関係だ。
ずっと一緒だと嫌な所も見えやすくなるので適度に離れる時間を作るように言われたのだ。
なるほど、確かにウチの親を見ているとそれは実践されている。
ウチには3人の母親がおり皆が働いているがいずれも父様とは別の仕事をしている。
時々小さな喧嘩くらいはするらしいがそれでも結婚して30年近くになる夫婦仲は円満と言えるだろう。
自覚はしているが私は気が短い方だ。
だからこそ、こういったアドバイスはきっちりと実践していき円満な結婚生活を送りたいと思っている。
何より、こうやって離れている時間に他の女子社員から話を聞いたりとそこから新たな発見につながる事もある。
私は平均点なところがあるのでそういった努力は欠かさない。
今もこうやって結婚生活に関する記述が載ったを書物を読みふけっている。
「なるほど…………」
今もこうやって新婚の妻がどんな言動をすれば夫が喜ぶだとかそういう記述を目にして感心している。
男の人ってのはこういうのが好きなのね…………
「ねぇ、団長がまた変なもの読んでるよ……あれって異世界の情報誌でしょ?この前、団員がダンジョンで見つけた遺産アイテム」
「あの人、変な所で真面目だから何か色々勘違いしてそう。言ってあげた方がいいんじゃ……」
「いや、面白そうだから好きにさせてあげようよ。また今度面白い話が聞けるかも」
何か聞こえてくるがあまり気にしない事にした。
とりあえず、一緒に居る時間が特に多いのだからマンネリ化は避けねばならない。
「よしっ!」
傾向と対策はしっかりと勉強した。
後は実践と踏み出す勇気だけだ。
決行は今夜、家についてからとなるだろう。
□
いつも通り二人で並んで帰る。
今までは途中で別れてそれぞれの家に帰っていたが今は同じところへ帰っている。
その違いが何かちょっと嬉しい。
元々彼が一人で暮らしていた借り家なので近々将来設計を立てて家を探したとは思っている。
正直、私は緊張していた。
いや、大丈夫だ。きちんと脳内でシミュレートした。
玄関に立った私は鍵を開けると彼の手を取り言った。
「ちょ、ちょっとここで待ってて!」
首を傾げる彼を外に残し家の中に入ると素早くキッチンにあったエプロンを身に着ける。
書物によると裸の状態で装備した方がいいらしいがさすがにちょっと恥ずかしすぎるのでそこは妥協する。
そして玄関に走り扉を開けた。
「えっと……リリィ?」
「お、お帰りユリウス。えっとその……ご、ご飯にする?」
「えっ、そ、そうかな……」
「お風呂にする?」
「えっ、お風呂?」
「そ、それとも……そ、それとも……わ、私……あぁぁぁ……」
ちょっと限界だった。
恥ずかしさのあまりその場でヘタレ込んでしまう。
言われたユリウスはというと……
「ご、ごめんリリィ。何かその、破壊力が強すぎて……」
鼻血を出してそれを必死に抑えていた。
□□
「つまり、遺産書物の新婚テクニックを実践しようとした、と……」
「ま、まあそういうわけ」
鼻血の出し過ぎでのぼせてしまった夫に膝枕をしながら頷く。
男性恐怖症だったが最近はこれくらいのスキンシップなら平気になってきた。
まあ、彼限定でだけど……
「驚いたよ。何が始まるかと思ったら……ちなみにごはんとお風呂はわかったけど『私』っていうのは……その……」
「えっとそれは……その……」
先ほどのシーンが頭に浮かび恥ずかしさがこみ上げてくる。
「だ、だからその私とその……いやぁぁぁ……」
顔面が凄まじく熱くなってくるのがわかり思わず顔を覆ってしまう。
うわぁぁ、大失敗。大失敗だぁ……
ちなみに夫はと言うと再び鼻血を出して気絶していた。
真面目過ぎるゆえにやや空回りをしてしまうリリィを書いてみたかったです。
結構初心な二人なのでユリウスもこういう反応になるのではないだろうかなって。
多分裸エプロンで出迎えていたら刺激が強すぎてユリウスが入院する羽目になったと思っています。