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17.陰陽師1日体験日記②

2話連続投稿になります。

読み飛ばしにご注意ください。


 その後も1時間ほど、僕は華音姉さんの指導の元で結界の練習に明け暮れた。


 結界を作って、壊す。


 結界を作って、また壊す。


 形状や強度、大きさなどを変えながら、何度も何度もその作業をひたすら反復させる。


 最初は全力で精神統一しなければ作れなかった結界であったが……繰り返すうちに、そこまで集中力を必要としなくなった。


 最終的には結界を張ったままマンガを読むという二重課題の訓練をさせられ、僕は自分の作った結界を椅子代わりにしてマンガを熟読する。


 集中の継続、慣れない作業に疲労が見え始めた頃……華音姉さんのスマホがピコリと電子音を鳴らす。


「あ、ちょっと待ってくださいね。弟くん……どうやら、急なお仕事が入っちゃったみたいです」


「仕事って……つまり、裏の仕事?」


 華音姉さんは専業主婦でパートやアルバイトもやっていない。

 だが、それは表向きの話であり、陰陽師として悪霊や妖怪と戦う裏の稼業があったりする。

 聞いた話では……日本には退魔師を統括する組織のようなものが存在しており、そこから仕事を割り振られるそうだ。


「はい……どうやら、この近くの工事現場で心霊現象が発生したみたいですね。至急、対処して欲しいそうです」


「工事現場って……まさか、工事中に死人が出たりしたのかい?」


「詳細はわかりませんけど……とにかく、行かなくてはいけません。弟くんは……」


「僕も行くよ。邪魔でなければ……だけどね」


 僕は陰陽師としては二流以下かもしれないが、元・勇者として戦闘能力はそこそこ高いつもりだ。足手まといにはならないはず。


「はい、弟くんだったらそう言うと思ってました……ここからは実地訓練です。くれぐれも気をつけてくださいね?」


「わかってる……って、うわあああああっ!?」


 力強く胸を叩いてみせる僕であったが、華音姉さんは胸を叩くどころか出していた。

 突然、体操服の上を脱いでブラジャー姿になったのである。


「ちょ……何で脱いでるのかな!?」


「え? だってお仕事ですから、いつもの和服に着替えないと。大切なんですよ、私達にとってコスチュームというのは」


「それはわかるけど……更衣室に行ってくれないかな!?」


「いいじゃないですか。ここには私と弟くんしかいないんですから。私だって人前では着替えたりしませんよ!」


「僕がいるのが問題なんだけどね!? どうしてそう慎みがないのかなあ!」


 錯乱する僕をよそに、華音姉さんは手早く着替えていく。

 体操着を脱いで下着姿になり、さらに下着まで躊躇いなく脱いでいく。全裸になった素肌に黒い着物を羽織り、慣れた手つきで帯を巻いて未亡人の格好になっていく。


「お姉ちゃんは和服には下着はつけない主義なんです。一般的には襦袢を(じゅばん)を着る人が多いんですけどねー」


「どうでもいいから早く着替えてよ! 恥ずかしいじゃないか!」


「そんなことを言うわりに、弟くんは少しも目を逸らしませんねー。ジッと見つめられて、お姉ちゃんムラムラしちゃいました」


「うぐっ……」


 だってしょうがないじゃないか。

 目の前で爆乳美女が生着替えをしているのだ。

 華音姉さんの裸体が磁石のように僕の目を引きつけてきて、とてもではないが顔を背けるなんてできなかった。


 ここで目をそらしたら男じゃない。


 ここで目をそらしたら男じゃない!!!


 大事なことなので2回言ったのである。


「はい、お着替え完了! それじゃあ、行きましょうか!」


 脳内で言い訳をしているうちに着替えが終わった。

 黒い着物姿になった華音姉さんが手招きをして、僕を急かす。


「うん……行こう! 悪霊に襲われている人を助けに!」


 力強くうなずきながら……僕はしっかりと脳内ハードディスクの「だいじなもの」フォルダに先ほどの映像を保存したのである。


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