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15.狼さんは不良少女⑥


 ドレッドヘアーのラテン系の男がナズナの身体を抱きかかえ、俺達から距離を取る。

 ナズナをどこかに連れて行こうとする男に……月白さんが大声で叫ぶ。


「そんな……私はナズナさんに危害を加えるつもりはありません! ただ話し合いをしたいだけで……」


「ハッハアッ! ウチが経営する店にカチ込みをかけてきておいて、今さらそりゃあねえダロウガヨ!」


 ドレッドヘアーの男はゲラゲラと笑って、こちらに向けて中指を立ててきた。


「ヒニクな話ダゼ! 平和を望んで話し合いにキテ、それが宣戦布告になるんだからナ。お嬢様をこんな風にしたんダ。もう平和的な解決は不可能だろうヨ!」


「そんな……私達はそんなつもりでは、戦うつもりはなかったのに……!」


 月白さんが絶望に表情を凍らせる。

 抗争を避け、平和的に問題を解決しようとやってきたはずなのに……その結果として、かえって戦争を引き起こしてしまった。

 月白さんが顔を青ざめさせるのも無理はないことである。


「それじゃあ、俺達は引き上げさせてもらうゼエ。次に会った時には戦場になるダロウ……」


「逃がすかヨ!」


「ウオウッ!?」


 俺はすぐさま男に向けて駆けていって短剣を振るう。

 ドレッドヘアー男が慌てて飛び退る。あと少し、惜しいところで避けられてしまった。


「おっかねえナア! こんな物騒な用心棒をどこで雇ったんだヨ!?」


「ただのクラスメイツだYO! そんなことより……その先輩を置いていけYO!」


 何故か僕もわけのわからない口調になりながら、男に追撃しようとした。

 だが……床から出た影が壁のように立ちふさがり、男とナズナへの接近を阻止する。


「くっ……このっ……!」


 僕は短剣でザクザクと影の壁を斬り裂き、男との距離を詰めようとした。

 近づいてくる僕に男が焦ったような表情になり……チラリとサングラス越しに月白さんの方を見る。


「やれやれ……今時の若者は血の気が強くていけねえナア! そっちがその気なら……そっちだYO!」


「きゃあっ!?」


 再び、床から影が蛇のように伸びてくる。

 長くのたうつ影が月白さんの足首を掴み、天井近くまで逆さづりにした。


「月白さん!?」


 何ということだ。月白さんが捕まってしまった!

 そして、逆さづりにされたことで制服のスカートが捲れあがり、パンツが丸見えになっている。

 魅力的な三角の布地。色はまさかの黒色だった。

 清楚系の少女かと思いきや、黒のレースなんてエッチな下着を着ているなんて……とんでもない衝撃である。


「おまけに上着までまくれ上がってきて、このままだとブラジャーまで……!」


「八雲君、そういう場合じゃないですよ!? エッチな目で見ないでください!」


「そうでした! ごめんなさい!」


 短剣で影を斬り裂き、落ちてきた月白さんをキャッチする。

 定番な展開としてはここで胸や尻を触ってしまい、ラッキースケベになるものだが……パンツを見せてもらったことだし、それは全力で回避しておく。


「アイツは……逃げられたか」


 そして、いつの間にか革ジャンの男とナズナが消えていた。

 どうやら、月白さんを捕まえたのは逃げるための時間稼ぎだったようである。


「パンツで気を引いてその隙に逃げ出すなんて、男の心を鷲掴みにする策略を……! 奴は現代に蘇ったパーリーピーポーな孔明なのか!?」


「……八雲君。シリアスな空気で言っていますけど、言葉の内容は最低ですよ?」


 月白さんが顔を真っ赤にしてスカートを両手で押さえている。

 上目遣いで睨みつけてくる彼女から顔を逸らし、僕はコホンと咳払いをした。


「えーと……話し合いで抗争を回避するという目的は不達成になっちゃったね。すまない……僕の力が足りなかったせいで」


「……それは構いません。あちらも本気だったようですし、どちらにしても戦いを回避することは不可能だったでしょう」


「そっか……これからどうするつもりかな? 平和的な解決を諦めるのかい?」


「…………」


 尋ねると、月白さんがフルフルと首を横に振る。


「いいえ。ナズナさんの説得は失敗してしまいましたけど、私はまだ諦めていません。必ず……絶対に、みんなを説得してみせます!」


 月白さんは強い決意を込めた眼差しで、先ほどまでナズナがいた場所を見つめている。

 月白さんとナズナとの間に何があったのかは知らないが……依頼人がまだやる気であれば、僕も付き合わないわけにはいかなかった。


「わかった、僕も協力するよ。出来ることがあるのなら何でも言って欲しい」


「ありがとうございます……早速ですけど、1つお願いがあるのですがよろしいですか?」


「へ……?」


 首を傾げると……月白さんはビックリするほど清々しい笑顔で口を開く。


「今から、私は八雲君のことをパーで叩きますけど……避けないでくださいね?」


「…………押忍」


 どうやら……パンツを見てしまったことは許してもらえなかったらしい。


 僕は甘んじて両手を後ろに回して直立し、月白さんからの闘魂注入を受け入れるのであった。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 無償で護衛してもらってるのにパンツ見られたくらいで恩人の頬を打つとかこの女意味分からん こういう小説の女って大概自分の置かれてる状況を忘れて感情だけで動くよな?嫌いなタイプだわ
[一言] 一章の面白さがなくなった気がします。というより、テンポが悪い。終着点は見えてるのに過程が長い感じ。
[一言] なんか主人公のキャラが変わってしまった気がするな。
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