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38.四女はエッチな悪魔ちゃん②

連続投稿中になります。

読み飛ばしにご注意ください。

 華音姉さんのお願いを受けた僕は、日下部家の2階にある美月ちゃんの部屋に行った。


「む……」


 以前、扉を開けた途端に美月ちゃんの全裸を見てしまったことがある。

 僕は警戒しつつ……慎重に扉をノックした。


「美月ちゃん、僕だけど入っていいかな?」


「ゆ、勇治!? 開けないで! 開けたら許さないからね!」


「ん? 風夏?」


 美月ちゃんの部屋の中から聞こえてきたのは、部屋の主ではなく風夏の声だった。

 風夏はやたらと焦った声をしており、ドア越しにバタバタとテンパった音が聞こえてくる。

 僕は首を傾げつつ、言われた通りにドアを開けることなく待っていたが……ガチャリとドアが内側から開かれる。


「ん……入って」


「へ……?」


「ひゃあっ!?」


 ドアを開けたのは美月ちゃんだった。無表情でぼんやりとした顔つきの少女が、ドアノブを持ったままこちらを見上げている。


 ただ……問題はそこではない。小柄な美月ちゃんの向こう側。

 そこには日下部家の三女である風夏の姿があり、おまけに何故か半裸の下着姿になっていたのである。


「ちょ……きゃあああああああああああっ!?」


「うわあっ!?」


 風夏が学習机に置かれていた鉛筆を掴み、こちらに投擲してきた。

 慌てて頭を下げた僕の頭上を、尖った鉛筆が通り抜ける。


「この変態! 絶対に開けるなって言ったでしょ!?」


「僕のせい!? 開けたのは僕じゃないんだけどね!?」


 さすがの理不尽に叫びながらドアの陰に離脱する。

 先ほどまで僕がいた場所を数本の鉛筆が飛んできて、廊下の壁に突き刺さった。


「殺すつもり!? どんなパワーで投げてんだよ!?」


「うるさい! 変態は2回死ね!」


「なんか違うキャラになってないか!? いくらツンデレだからって、そのセリフは不味いと思うけどね!」


 ツッコミながら耳を澄ませてみると、部屋の中からガサゴソと慌てて服を着る音が響いてくる。

 1分ほど待っていると、美月ちゃんが廊下に出てきてチョイチョイっと服の袖を引っ張ってきた。


「えっと……今度こそ大丈夫だよね?」


「ん……」


「……いいわよ」


 部屋の中からこれでもかと不機嫌な声が聞こえてくる。風夏の許可を得て、僕は恐る恐る部屋の中を覗き込む。


「ムウ……」


 部屋の中には腕を組んで頬を膨らませた風夏の姿がある。

 目をつり上げてこちらを睨みつけ、アゴをしゃくって「さっさと入れ!」と促してきた。


「……どうして風夏が美月ちゃんの部屋に? っていうか、何で脱いでたの?」


「ゲームをやってただけ。ジュースをこぼしちゃったから、服を着替えようとしてたの!」


 見れば、風夏が来ている部屋着のスウェットは上下ともに濡れていた。


 部屋に置かれたテレビ画面には、見慣れたゲームの映像が映し出されている。

 僕も何度となくプレイしたことがある、身体を動かしてコントローラーを振って遊ぶタイプのゲームだ。


 状況から察するに、風夏と美月ちゃんは2人でテレビゲームをしていた。

 コントローラーを振ってプレイしていたところ、うっかりテーブルの上にあった飲み物をこぼしてしまい、風夏の服が濡れてしまう。

 風夏は着替えようと服を脱ぐも、脱いだところでここが自分の部屋ではないことに思い至り、着替えもなくて「あ、部屋に戻らないと」と考えていた矢先、僕がドアをノックしたのだろう。

 風夏は「入るな」と慌てて告げたが……肌や下着を特に気にしない小学生の美月ちゃんがドアを開けてしまい、ラッキースケベが発動したのである。


「……馬鹿じゃん?」


「うるさい! 着替えてくる!」


 風夏は乱暴に怒鳴って、ドタドタと大きな足音を立てて部屋から出て行った。

 部屋の中には主である美月ちゃんと僕だけが残される。


「ん……やる……」


「あ、ゲーム?」


「ん……」


 美月ちゃんがコントローラーをグイグイと押しつけてきた。

 どうやら、一緒に遊ぶ相手がいなくなってしまったので相手をしろと言っているらしい。

 僕は本題をとりあえず置いておき、コントローラーを受け取った。


「一緒にゲームをするのも久しぶりだな。何年ぶりだっけ?」


「…………?」


「あ、そんなに時間は空いてないか」


 うっかり、考えなしの言葉を口にしてしまった。

 異世界に召喚されていたから5年以上もゲームをやっていない気分だったが……実際の時間軸では、美月ちゃんとゲームをするのはそれほど久しぶりではない。


「えっと……まずは『卓球』からでいいかな?」


「ん……」


 僕は複数のミニゲームの中から『卓球』を選択する。

 僕と美月ちゃんはテレビの前に座り、スティック状のコントローラーをラケットに見立ててゲーム画面に向かって振った。

 5ゲームほどプレイしたが、最初の3ゲームは負け続け。体感時間で5年間のブランクがあるので、勘を取り戻すのに時間がかかってしまった。

 ラスト2ゲームをどうにか勝利で飾ることができたが……トータルすると2勝3敗で負け越しである。


「あ、ゲーム変えようか? 次は『チャンバラ』とかどうかな?」


「ん……」


「オッケー。ところでさ、美月ちゃん。明後日の金曜日に保護者参観会があるのは知ってるよね?」


「…………?」


 美月ちゃんがぼんやりとした瞳で見上げてくる。

 その感情の伴わない顔つきからは何を考えているのか、想像することはできない。


「参観会だけど……僕が行くことになったから。華音姉さんが用事があって行けなくなっちゃったからって」


「…………」


「えっと……やっぱり姉さんじゃなくて僕じゃあ不満だと思うけど、一生懸命、授業を見学させてもらうよ!」


 一生懸命に見学するってどういうことだろう?

 自分でもおかしなことを言っていると思うが……美月ちゃんのノーリアクションぶりに気圧されて、変なことを口にしてしまった。


「…………」


 美月ちゃんは黙ったまま。イエスともノートも口にしない。

 ひょっとして、僕が授業を見学にくるのが嫌だったりするのだろうか?

 不安が頭によぎるが……ふと美月ちゃんが立ち上がり、胡坐をかいて座った僕の足の上に座ってくる。


「美月ちゃん?」


「ん……やる……」


「んっ!」


 美月ちゃんがテーブルの上にあったクッキーをつまんで、僕の口へと押し込んできた。

 そして、再びゲーム画面に向き直って『チャンバラ』のミニゲームをセレクトする。


「ちょっ……そこに座られたらプレイできないんだけど?」


「…………」


「問答無用!? それってズルくないかな!?」


「…………」


 美月ちゃんは無言でコントローラーを振るい、まともにプレイできなくなった僕を容赦なく叩きのめした。

 とりあえず、たぶんではあるけれど……僕が保護者参観会に参加することを嫌がっている様子ではなさそうだ。

 僕は安堵に胸を撫で下ろしながら……そのまま不自由なプレイを強いられ、驚異の20連敗を喫したのであった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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