42.全裸で迎える大団円⑧
謎の薬で変貌したムス太であったが、化け物となったことで彼は『世界の敵』と呼べるほどの力に達してしまった。
そうなると、僕が所有している女神の加護の対象となってしまう。つまり、『勇気の聖剣』を使うことができるということだ。
僕がこれまで触手メインで戦っていたのは女子にセクハラしまくる大義名分が欲しかったわけではなく、僕が持っている女神の加護の使い勝手が悪いからだ。
女神の加護が使える状況であれば、強力なそっちを使うに決まっている。
「また、つまらぬ物を斬ってしまった……成仏しろよ」
僕は真っ二つになって倒れていくムス太に追悼の言葉を贈る。
相手は町で戦争を起こして、多くの人の命を奪おうとした悪人だ。斬り捨てたことに罪悪感などなかった。
「さて……悪は滅んだわけだが、これからどうしようか?」
一応、この男は市長であったらしい。
いなくなってしまったら、それなりに騒ぎになりそうなものである。
困ったように後ろを振り返ると、月白父が顔を引きつらせて口を開く。
「そ、そうだな……ウチの組で死体を始末して、証拠隠滅を……」
『オオオオオオオオオオオオオオオッ! この私がこの程度で死ぬものかアアアアアアアアアアアアアアアッ!』
「へ……?」
絶叫に振り替えると、身体を両断されていたはずのムス太が立ち上がっていた。
「おかしいな……間違いなく斬ったはずなのに……」
『勇気の聖剣』は不敗の剣。
世界の敵にしか通用しない代わりに、命中すればほぼ一撃で敵を撃ち滅ぼすことができるはずだった。
「世界の敵に該当しない? いやいや、それなら最初から聖剣が使えるはずがないんだけど……」
『町の支配者である私にこの無礼……ただでは済まさぬぞおおおおおおおおおおおっ!』
「おおっ!?」
ムス太の身体が空に浮き上がり、彼を中心にして竜巻が生じた。
肌を切り裂くような強風はどんどん強くなっていく。空がぶ厚い黒雲に覆われていき、雨あられ、雷の雨が降りそそぐ。
「天候を支配する力……これはまさしく、大天狗様の力だ!」
「このまま規模がデカくなれば町が吹っ飛んじまう! どうするんだ!?」
月白父、伏影父が叫ぶ。
ムス太がどうやってこんな短時間で強くなったのかは知らないが、このまま放置しておけばとんでもない災厄になってしまうだろう。
3つのギャングのボスらにできることはなさそうだし、ここは僕がどうにかしなくてはいけない。
「とはいえ……この距離では聖剣は届かない。やはり最後は邪術に頼るしかないか」
「……ま、また身体を触るんですか?」
月白さんが自分自身の身体を両腕で抱くようにして、恐々と言う。
「正直、恥ずかしいですけど……八雲君に町を救って欲しい、抗争を止めて欲しいと依頼をしたのは私です。責任を取って、この身体を捧げさせていただきます……」
「真雪だけに汚れ役を押しつけるわけにはいかねえ! オレのことも好きにしやがれ!」
「私も協力しますよー……貴方のためじゃなくて、真雪さんのためですからねー」
月白さんに続いて、伏影ナズナと有楽院ツバキも僕のセクハラに身を捧げることを了解してくれた。
「「「…………」」」
その後ろではそれぞれの父親がものすごく嫌そうな表情をしているが、ここは見ないことにしておく。
「オッケー。それじゃあ、遠慮なく」
「「「んっ!」」」
3人に触手を伸ばして身体に触れると、彼女達は同時にビクリと震えた。
服の中に潜り込んだ触手が大中小の3つの膨らみを弄び、お尻や太ももを撫でていく。
「ちょっと邪魔だから脱がしちゃうね?」
「ッ……!」
服を脱がして全裸にしてやると、流石に怒ったように3人が睨みつけてくる。
しかし、すでに許可はもらっているし、町を救うためという大義名分もあった。僕は構うことなく三者三様の美少女にセクハラをしまくる。
「んっ、あっ……ああんっ」
「エネルギーは満ちてきたが……ちょっと出力が足りないかな?」
3人の艶姿に欲望を満たす僕であったが、最後のピースが足りない気がする。
目の前で荒れ狂い、勢いを増していく竜巻。アレを貫いて敵を叩くとなると、もっと力を高める必要があった。
「仕方がない……この手段はつかいたくなかったんだけど……」
「「「…………!」」」
僕は服を脱ぎ捨てて裸になった。
触手に身体を弄られていた美少女が驚きに目を見開き、僕の裸に……下半身の一部に視線を集中させる。
こうやって女の子に見られていると、それだけで邪力が高まっていくのを感じるが……それだけでは終わらない。
アイテムボックスから取り出したそれを頭に装着する。
「変身!」
全裸になった僕が頭に付けたのは女子のパンティである。
それは僕の敬愛しているお隣さんの長姉……日下部華音の下着だった。
華音姉さんがお風呂に入っている間に使用済みのパンティを確保して、アイテムボックスに入れておいたのである。
脚を通す穴から目を出すようにして顔に装着した……いわゆるHKスタイルだった。
「へ、変態……」
「変態だな……」
「変態な仮面です……」
3人の美少女がドン引きしているのが伝わってくる。
いやいやいや、好きでやってると思わないでくれ。町を守るために仕方がなく、涙を呑んでパンツを被っているんだからね?
本当に変態な仮面を目指すのであれば下にも装着しなくてはいけないが、さすがに裂けてしまいそうなのでやめておく。
「何はともあれ……華音姉さんのパンツを被った今の僕は無敵。喰らいやがれ――『淫蕩砲』!」
掌に邪力を集中させ、全裸にパンツを被った状態で腰を落として構える。
大量の邪力が圧縮されていく。3人から……そして、愛するお隣さんから授かった力が破壊のエネルギーへと変換されていく。
全てのエロを込めた一撃がまさに解放されようとしている。
「仲間の力を借りて撃ち放つ……これぞまさに主人公の一撃だ!」
絶対に違う……誰かがつぶやく声を聞きながら、僕は掌に集めたエネルギーを解放させる。
ピンク色の卑猥な色彩の光線が竜巻を纏っているムス太に向けて放たれる。
荒れ狂う暴風を蹴散らし、雨あられ、雷を引き裂いて、諸悪の根源たる男へと肉薄した。
『馬鹿な……おおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?』
道の攻撃を前にしてムス太が愕然と叫び……ピンクの光線に飲み込まれて、跡形もなく蒸発する。
「勝った……」
晴れ渡った空から陽光が差し、町に平和が戻ってきた。
町の平和は一人の変態によって守られたのである。