表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼さんの話。  作者: 秋乃晃
9/13

第九話

ゆうちゃんはね、ゆうかって言うんだほんとはね。

だけどちっちゃいから自分のことゆうちゃんって言うんだよ。


なんてね。


はじめて『ゆうちゃん』って呼ばれたとき、まだ年長さんだった。


ゆうちゃんは年長さんになってから、ここに引っ越してきました。

はじめの会では、うまく入れなくて、おかあさんの手をぎゅっと握ったまま。

おかえりのときまでおかあさんのそばから、離れられません。

おうちに帰ってから、ずーっと泣いていました。


泣きつかれて寝ちゃったあと、ばんごはんの時間に起こされましたが、一口も食べません。

口を開けば、「行きたくない」ばかり。

とうとうひとりでお風呂に入って、寝てしまいました。


ゆうちゃんはおなかがすいて、朝早くに起きてしまいました。

おかあさんもおとうさんも、まだ寝ています。

おかあさんはおなかのすいたゆうちゃんのために、おにぎりを用意していてくれました。


ゆうちゃんは、おそとを見ながらおにぎりを食べようとして、庭に出ました。

女の子がひとり、草っ原にかがんで、何かを探しています。

ゆうちゃんはびっくりして、おにぎりをひとつ、落としてしまいました。


落ちたおにぎりよりも、

「あなただれ?」

おないどしぐらいのその子に、ゆうちゃんは話しかけます。


「なにしてるの?」


声をかけられても、女の子は一切気にしていません。

草をかきわけて、一生懸命何かを探しています。


「もしかして、ようせいさん?」

絵本で読んだ。

家も古いおうちだから、ようせいさんが住み着いていてもおかしくない。

ようせいさんは、ようやく顔を上げて、「よつばのクローバーを探してるの」と答えました。


ゆうちゃんはおなかがすいていたことを忘れて、いっしょによつばのクローバーを探し始めました。

おにぎりにありがたかっています。


結局見つからなくて、ようせいさんは、「日がのぼってきたから帰るね」と、旅立ちました。


おかあさんはようせいさんのことを信じてくれなかった。

絵本の中のようなかわいいようせいさん。

おにぎりはすずめさんがみんな食べました。


ゆうちゃんは、ちゃんとあさごはんを完食して、あんなにいやがっていたことをすっかり忘れて、幼稚園に行きます。


そのあとで

(昨日のはじめの会を寝坊してそのまま欠席していた)

ようせいさんに幼稚園で会ったのは、たぶん、おそらく、偶然じゃあない。


「おはよー、ゆうちゃん」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ