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第五話
村に引っ越してきてそろそろ一週間。
バスケットボールのルールを覚えて、たまにボールを持ったまま走ってしまい「おいー」と怒られるレベルまで慣れてきた。
「しょうがない……」
ランドセルを抱きかかえて、バス停にひとり、座っている。
緊急時のためにと持たされている携帯電話の画面を見つめた。
母親に、傘を持ってきてもらえるかメールを送る。
学校からバスに乗り込んだあとに、雨がざあざあと降り始めてしまったのだ。
天気予報を確認しておけばよかった。
朝はまったく降っていなかったので、傘の準備をしていない。
傘なしで家まで歩くなんてとんでもないと思えるほどの、土砂降りだ。
送信完了の文字が表示されたすぐ後に、次のバスがやってきて、停車する。
「またねー」
「また来週!」
ついていない日はとことん、ついていない。
バスから降りてきたその子は、俺の姿を見て、表情を強張らせた。