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狼さんの話。  作者: 秋乃晃
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第四話


 通信販売で購入した魔除けのブレスレットを右腕に装着して、わたしたちは桜の木の影から、男子生徒の群れを観察している。



「バスケかあー。みんな好きだよねー」



 隣にいるのは、クラスメイトにして理解者のゆうちゃん。

 ゆうちゃんはわたしの趣味をなんとなくわかってくれた上で、熱くなりすぎてしまったときは止めてくれる。

 親友と表現してしまっても差し支えないと思う。

 もしくは保護者?



「転校生があやしい、って、どゆこと?」

 四時間ずっと横目で監視していた結論。

 こんな話を聞いてくれるのは、ゆうちゃんぐらい。

 わたしは胸を張って主張する。

「香春隆文からどす黒いオーラが視える」

「そうなのー?」

「見てみ。ほらほら」

 メガネを外してゆうちゃんに手渡す。

 ゆうちゃんはガラス越しに香春隆文を見つめて、「なんもわからないやー」と言ってわたしに返してきた。

 オーラの視えるメガネ。

 お小遣いを貯めて通信販売で購入した。

 見た目は紫色のサングラスだが機能は本物だ。

「この時期の転校生っていうのもわけありっぽいし、四時間一度も教科書貸してないし、男子なのに給食おかわりしないし」



 怪しい要素しかない。

 トウキョーからきたってのがもう怪しい。

 なんでジャパンの首都からこんな片田舎に引っ越してくる必要があるのだ。

 ありえない。

 全校生徒合わせて百人ちょいしかいないんだぞ。



「あと、なんで男なのにランドセル黒くないの? おしゃれなの?」

「おねえさんのおさがり……?」

「トウキョーの民がそんなビンボーくさいことするわけないじゃない。絶対お金持ちだから」

「言いがかりじゃないかなー? それにほら、最近は男の子でも女の子でもいろんな色のランドセルがあるよー」



 とにかく。



 隣の席にきたことだし、徹底的に調べ上げるしかない。

 だから、男子のバスケットボールを眺めている。

 普段ならゆうちゃんといっしょに、帰りのバスに乗っている時間なのに。

 全部香春隆文が悪い。



「こうやって見てると、ちょっとかっこいいかもねー。テレビに出られそう」

 ゆうちゃんがとんでもないことを言っている。

 気のせいだよ。

 見慣れていないからそう思うだけだよ。

 子どもが少なすぎて、小さい頃からおんなじメンバーで育ってきたわたしたちとは違うに決まってる。



「あ、こっち見てる。おーい」



 無防備にゆうちゃんが手を振っている。

 視線の先に、香春隆文がいた。

 目が合う。

 メガネなしでも、それとなく、風景に交わらず、その一部分だけ、暗い。

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