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狼さんの話。  作者: 秋乃晃
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第一話

 俺の家の近所の公園の大きな木の下の根っこのあたりで、人の骨が見つかった明くる日。

 父親は会社に行かず家の片付けをはじめた。

 母親は小学校に電話をかけて、欠席の連絡をしている。

 慌ただしい朝、八時頃の話。

 いたって健康な俺は何故休まなければならないのか理解できない。

 遅刻でもない。

 父親が大きな段ボールを組み立て、食器類を新聞紙で包んでからしまっていく。

 どちらにも話しかけづらい。


「おはよう」


 母親は、受話器を置いて一呼吸したのち、俺に挨拶した。

 頭のなかがぼんやりとしている。

 月曜日。

 天気予報は、午後から雨。


「あなたも手伝って」


 物心ついたころから何度も引っ越しを経験しているから、それとなくうなずいて、作業に取り掛かる。

 作業しながらようやく、今日、引っ越すのだとわかった。

 そのために学校は欠席する。

 おそらく会社も休むのだろう。

 ここの学校では何人か友だちが作れた。

 今度は日本のどこに引っ越すのかわからない。

 遠くない場所がいいな。

 トウキョーのどこか。

 この街に来やすいところで。

 そしたら、ここの学校の人たちとまた遊べる。


「かあさん、どこに引っ越すの?」


 母親は「ちょっと遠い場所になるわね」と答える。

 ちょっとって、どのくらいだろうか。

 聞いても俺はついていくしかないのだけど。

 テレビがBGMとして、ニュースを流していた。

 ニュースキャスターは、昨日、それほど離れていない場所の公園で、人の骨が見つかったことを、伝えている。

 人の骨はこの辺に住んでいた女の人で、一昨日の、一昨日から昨日に切り替わる時間帯に、友だちと電話していたところを何者かに襲われた。

 仕事が長引いてしまい、遅い帰宅の途中だった。



 同級生というひとが画面に現れて、亡くなられた方の話をしている。

「真面目な子だった」

 次に近所のひと。

「目が合うとあいさつしてくれるいい子だった」



 卒業アルバムの写真と、名前、年齢が、映し出される。

 似たような人に、つい最近会った。

 それが具体的にどこでだったかが、思い出せない。


 小学生の俺と、この人とに、近所に住んでいる以外の接点があるのだろうか。


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