95.表と裏
気に入ったお話があれば是非いいねを! リベアはやっぱり人気ですが、シャルティア様が好きな人も多いようで。
翌朝になり、一つの部屋に集まったわたし達は朝の作戦会議中でした。
「えぇ……わたしとリベアは本日案内人のお仕事はお休みです。という訳で今日は別行動でお願いします」
「やったー! 師匠とデートですー!!」
「デートじゃないですよー」
はっちゃける弟子に釘を刺す師匠。
わたし達が今日訪れる予定の場所はデートスポットとはかけ離れた所です。
それに初デートは素敵な雰囲気の所にするって決めています。
あれ? でもデートの定義ってなんでしょう? 相思相愛の二人がどこかに出掛けるだけでそれはデートになってしまうのでしょうか?
それならもう何度か、二人で街へ買い物に行ったりしてしまっているのですが……。もしかしてわたしの初デートは終了している?
「師匠、なに難しい顔をしているんです?」
「……恋とは複雑怪奇な心の動き、恋情だなと思いまして」
「え!? 師匠は誰かに恋してるんです? それは私ですか! 私ですよね!? そうだと言ってください!!」
ぐぇっ。首に抱きつかれました。顔、ちっか! え、可愛い。天使か。
「リベア近いっ! 離れてください」
「なんですか!! 昨日はこっちが恥ずかしくなるくらい積極的だったくせに〜!」
「あれは事故です! あと話がちっとも進みませんので、暫く寝ててください!!」
「ふぎゃあ!!」
魔法で強制的にダウンさせ、二人に向き直ります。
弟子の頭からは白い蒸気がショートした時の魔道具のように出ていて、くるくる目を回していました。
「リベアさん。リベアさーん」
「うきゅぅーー」
フィアがしゃがんで彼女の頭をつんつくしますが、弟子は目を回したままでした。
「クリティカルヒットのようです」
魔法耐性の強いリベアなら5分くらいしたら復活してきますかね。ん? なんだねソフィー君、その顔は。何か不満かね?
「……ずいぶんリベアちゃんの扱いが雑になったわね。私が最初に来た時は新婚ほやほやの夫婦、付き合いたてのまだ互いに遠慮がある初々しいカップルみたいだったのに。もしかして倦怠期?」
「違いますよ! それにわたしは――」
「? なに?」
「いいえなんでも……」
わたしは弟子に恋愛的な気持ちを抱いた事はありません。……けど、リベアはそうではないようですし、わたしだってそれが一切ないとは言い切れません。
え、わたしが弟子で毎晩変な想像をしているんじゃないかって? ないない、わたしがそんな事……あるわけないでしょ!
「そう。それにしても出発前から思っていた事だけど、私の名前を変えること以外結構ガバガバよね。案内人兼護衛役設定とかその他諸々」
ぶっちゃけ、本当の素性がバレる事以外は問題ないんですよね。一番問題なのはわたし達が王女様の命を受けてここに来ているという事ですから。
「別にいいんですよ。みんな平和ボケして特に気にしてないんですし。めっちゃ怪しまれなければオッケーです」
「ほんと、適当。それで? 私たちはどうするの?」
「ソフィアとフィアには表から捜索してもらいます。夫婦を見かけたという場所や人を中心に情報を集めてください。魔道具が少しでも反応したらそこに少なくとも一度は夫婦が訪れています。反応が強ければ強いほど近付いてる証拠です」
「分かったわ」
第一の捜索場所にここコルシユゥを選んだのは聞き込み調査をした結果、夫婦によく似た人物が月一で訪れている事が判明したからです。もちろん他人の空似という事も考えられますが、確かめるに越した事はありません。
ただし普通の観光客として振る舞う分にはいいですが、そうしている事で手に入らない情報もあります。
なので必要とあれば信頼できる人間にはソフィアがソフィー・グラトリアである事を明かす事に。
どうやって証明するのかって? 家紋の入った物を一つ見せれば十分ですよ。
「フィア、魔道具の使い方は分かっていますね?」
「はい、もうバッチリです!」
わたしの作った捜索用(夫婦専用)魔道具は魔力をほんの少し流せば動く仕様にしてあります。
この役目は魔力量が少ないソフィーに代わってフィアが請け負います。
フィアの魔力量なら十分持つでしょう。ソフィーだと4、5回が限度でしょうが。
人には誰しも魔力が備わっています。
そしてこの魔道具には、わたし達が探している夫婦の魔力を定着させているのです。
今わたし達が住んでいる家は元々夫婦の家でした。
ですので、家に残っていた魔力の残滓を掻き集めてなんとか完成させたという訳です。
魔力の残滓を形あるものにする作業が大変でしたね。二度とこんな手法は取りたくありません。
ここまで苦労して魔道具を開発した訳……それは出来る限り早く村に戻りたかったからです。
わたし自身は村に残って遠出とかしたくありませんでしたが、やはり可愛い弟子とその親友とメイドが心配になってしまったのです。
(オルドスの言葉が地味に効いてますね〜……)
村には出発前に今までより強固な結界を張っておきました。その分魔力を使って眠たくなってしまいましたが。
ですがわたしの魔力半分を注ぎ込んだ結界なら並大抵の魔物、魔族が侵入することは出来ません。それこそ魔族の幹部クラスでもなければ不可能。
結界を張った時、三人にはちょっと離れるだけなのに大袈裟過ぎると言われましたが、魔族が近辺で活動している事を知っているわたしに取ってそれは大袈裟でもなんでもない。
むしろ魔法使いとしては当然の行動です。わたしが村にいない間、もしもの事が起きないとも限りませんから。
帰る場所を無くすのはとても辛いですし、義両親に何かあったらリベアがどんな風になってしまうか……考えただけで恐ろしいです。そんな事だけには絶対させません。
「表からじゃないならあなた達は?」
聞いてみてはいますが、ソフィーも当然答えは知っているのでしょう。
わたしはニッコリ笑って答えます。
「――わたし達は裏から捜索します」
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