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76.王女様は帰ります!

前半は三人称、後半はユリア視点となります。

 住民に見つからぬよう闇夜に紛れて村周辺を散策していた近衛兵達の元に、少女の鼻歌が伝播する。


「この声は……」


 声のする方を向くと桃色の少女――自分達の主であるユリア第二王女が堂々と道を歩いてきていた。


「あら? ホーガンじゃない。どうしたの、こんな辺鄙な村に?」


 彼等に気付いたユリアが、あっけらかんといった様子で声を掛ける。


 見え透いた嘘だ。


 彼女と付き合いの長い老剣士ホーガンは齢50になるが現役の近衛兵筆頭であり、第二王女ユリアの警護にあたっている人物である。


 彼には自分達が迎えに来ている事を分かってて、この場に現れた事はお見通しであった。


(ホーガンはほんとに仕事が早いね)


 ユリアは王宮を抜け出す際、ホーガンが少し席を外したタイミングを狙って、姉と一緒に彼等を出し抜いた。


 ホーガンには精神系の魔法が効かない。故にユリアにとって一番の天敵といえた。


「姫さま……今までどこにいらっしゃったのですか? また勝手に王宮を抜け出して、ご両親が心配なさっていましたよ」


「私の義両親が住んでた家にちょっとね。素敵な賢者さんとも知り合えたし、十分気分転換出来たわ。でも、もう少し遅く来ても良かったんだよ?」


「はあ、そうですか……それは何よりでありますな」


 小さい頃から彼女の教育係を担っていたホーガンは、彼女の性格も完全に熟知していた。


 だから一度だけ呼び掛けた。魔力の残滓を追って、ある程度の範囲に絞ってだが。


 事態を大事にしたくないのはお互いに同じ。呼び掛ければ自分から姿を現してくれるのでは? と。


 ホーガンの声に気付いた村人が何人か家から出てきてしまったが、そこは商人に変装した近衛兵達が対応にあたり住民の混乱をスマートに避けていた。


 ただの農村に王女様が来ている事が知れたら、村中大パニックになってしまうだろう。


 それを考慮しての一度きりの賭けだったが、ホーガンは見事賭けに勝ち、ユリアは予定より早く王宮へ戻る事を余儀なくされた。


「そういえば姫様。この近くに魔法統率協会序列三位のオルドスなる者が来ていましたぞ。なにやら厄介事の匂いをさせてました故、話はしておりませぬが会いに行きますか?」


「んー私もあの人と話すのは嫌だけど、この国の安全に関わる事だったら大変だから一応会いに行くわ。……ほっといたらティルラさんと鉢合わせちゃう気もするし」


「何か言いましたかな?」


「ううん、なんでも。あ、ラッキー! 私の愛馬も連れてきてくれてたんだ。さっすがぁー! やっぱりホーガンは気がきくねー」


「そうでもしないと、姫さまは徒歩で王都に向かいかねませんからな。姫さまだけに歩かせるわけにはいかない我々の事も考えてもらいたいものです。今後は老体に鞭を振るような真似は控えてもらいたいものですな」


「ええー。だって、ただ馬車の中に乗って揺られるのって凄くつまんないだよ? 自分で乗った方が全然楽しいよ。お兄様はともかくお姉さまは馬に乗る事自体すごく怖がるし……一緒に狩りとか行きたいんだけどなー」


 愛馬を愛でながら、ユリアは可愛らしく口を尖らせる。


「世間一般の女性からすれば、馬に乗って野原を駆け回る姫さまの方が珍しいのですぞ」


「んんっ? そっかなー。まあいいや、じゃあ出発ー!」


 ラッキーという名の白馬に跨ったユリアは周囲を近衛兵に固められて出発する。


 彼女の隣を歩くホーガンは、嬉しそうに目を細めながらラッキーに話しかけるユリアを優しげに見守る。


(ふむ。姫さまはほんとうに惜しい事です。生まれる時代が違ければ大変ご活躍なさっていたでしょうに)


 ホーガンはもしもユリアが男性。それも第一王子であったなら、それはそれはとても勇敢で立派な指導者になったであろうと口惜しそうに呟く。


 今の政治の実権を握っているのが主に男性であるが為、女性はたとえ王族であったとしてもそれほど強くは出る事が出来ない風潮にある。


 その為、彼女は政治の世界では大変堅苦しい目に遭っているのだ。


 しかし一度法が変わればそれは覆るだろう。


(願わくば、我が身が朽ちる前にユリア様の殊勝な姿を見たいものですな)


 白くなった顎髭を弄りながら、孫娘を見守る祖父のような目で朗らかに笑うホーガンであった。


◇◆◇◆◇


――ティルラさんとの交渉はぎりぎりの所で成立した。


 もし彼女が私のお父様の事をもっとよく知っていたらこんな提案は受けなかった事だろう。


 だってその必要がないからだ。私が口添えするまでもなく、お父様は二つ返事で了承する筈だ。


 なにせティルラさんの師匠である大賢者シャルティア・イスティル様は、両親と深い仲にあった。三人とも小さい頃からの知り合いで、通っていた学院では特に行動を共にしていたと聞く。


 お母様から聞いた話によると、主にお父様がシャルティア様にストーカーまがいのことをしてくっついていたらしいが。


 卒業時、お父様の想いは実らなかったものの、その想い人の義理の娘にあたるティルラさんをシャルティア様に紹介されて、孫娘を見るような気持ちになったと言っていた。


 だから私が招待するまでもなく、彼女がアポ無しで王宮を訪れてもお父様なら大層歓待することだろう。


 私がティルラさんと会うのは今回が初めてだが、お父様も数える程しか会っておらず、いつかゆっくり話をしたいと言っていた。たぶんシャルティア様がお父様とティルラさんをあまり引き合わせたくなかったんだろうね。


 ティルラさんは国王との対談など望んでいないであろうが、近いうちにそれは実現する事になると思う。私が招待しちゃったから。


「ま、私はリベアちゃんともっとゆっくり話がしたかったし、義両親の事も知りたい。忍びないけどティルラさんにはお父様の犠牲になってもらいましょう」


 えいやっ! と軽く鞭を打ち、急に走り出した事でホーガン以外の近衛兵達が翻弄され陣形を崩した。


「姫さまっ! また勝手な事を……」


 その隙を狙って馬を走らせる。夜風がとても気持ちよかった。


ここまで読んで頂きありがとうございました!


ティルラ達の話を後半で出そうかと思ったら、姫様がおもったより奔放だったので長くなってしまいました。区切りが良かったのでここまで。


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