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66.王女様の里帰り

今回はアリスちゃん視点となります。

 今日は他国からお客様がやってきていた。主な客層は諸外国の王族や貴族。


 私の姉であるビエンカ第一王女と勇者クロス様は近々結婚する。その祝典に参加する者達がこぞって稀代の勇者様に媚び……挨拶しにやって来ている。


「ビエンカお姉様……」


 自室でため息と共に姉の名を呟く。


 本当はずっと私のお姉様でいて欲しかったけど、そうも言ってられない。姉も大人の事情で、勇者様との結婚は避けられない事だと言っていた。


『そんな顔しないでユリア。別に一生会えなくなるわけじゃないんだから。それにクロス様はとっても優しいのよ』


 妹想いの姉は、私の事を元気付けようと仕事の合間を縫っては会いにきてくれている。


 でも姉の口から、知らない男の名前が出てくる事が我慢ならなかった。


 別にクロス様の事を知らないわけでも、嫌いなわけではない。


 魔王討伐に出発する際、帰国した際に顔を合わせている。だがどうにも勇者様の顔を思い出せずにいた。おそらく父が勇者様に何か言っている最中、ずっと隣に座るお姉様の事を見ていたからだと思う。


 だから実質的に私は彼のことを知らない。出発する際に何か話しかけられた気もするが、殆ど覚えてなかった。


「はぁー。お姉様は結婚の準備で忙しいし、それはお父様達も同じ。わたしにも与えられた役割があるけど、知らない人と話すのはほんとうに退屈。腹の探り合いをするだけの会話なんて会話じゃない」


 先程一通りの挨拶回りは済ましたから暫くは休めるだろう。


 貴族達の大半の関心は姉とクロス様に集中しているが、中には婚約者のいない私と関係を深めたい者も少なからずいた。


 きっとその誰もが愛なんて持ち合わせていない。ただ勇者様の親族になりたいだけ。私はその為の道具にしか過ぎない。


 私を本当に愛してくれているのは家族だけだ。



「お義父様とお義母様に会ってみたいなー」


 

 私は生まれてすぐ政敵相手に誘拐され、王都からかなり離れた村に捨てられたという。

 そして王家の迎えが来るまで、まだ赤ん坊だった私を育ててくれたのがその村に住んでいた若い夫婦だったと聞いている。


 あれから成長した私は、お父様達からその話を聞かされ何度も村に訪れようとしたがそれは叶わなかった。


 理由は魔族という敵が存在し、王都から離れるのはあまりに危険すぎたからだ。


「でも今は魔王がいなくなって平和になった。今なら……」


 思い立ったらすぐに行動に移す。それが私だった。


「ユリアいるー? 少し時間から取れたから二人でお茶でも――」


 丁度いいタイミングで、姉が給仕と共に扉をノックした。


「あ、お姉様いい所に!」


「ん? どうしたのユリア?」


 給仕の人には退出してもらい、私は事情を説明し、なんとか王宮を抜け出せないかと姉に相談を持ちかけた。


 すると姉は、


「お姉ちゃんに、まっかせなさい!」


 と言って、片方の腕を袖まくりして曲げ、もう片方の手をひじの内側に添えた。


「お姉様……恥ずかしいから。部屋の外に人だっているんだし」


「でもここでは二人きりよ? そういう時はいつもみたいにお姉ちゃんって呼んで欲しいな?」


 小悪魔的な笑みを浮かべるお姉ちゃんには逆らえなかった。普段は大人っぽいのに、私と二人きりの時だけ見せる子供みたいな表情。それはずるいよ。


「もう、分かったよお姉ちゃん。だからお姫様を退屈な舞踏会から連れ去って」

「ふふっ分かった。でもお姉ちゃんは手引きをするだけ、一緒に行くことは出来ないの」


「どうして? お姉ちゃん!」


「それは私に愛する人がいるからよ! ユリア!」


「どうして。どうして私を選んでくれないのお姉ちゃん!!」


「ごめんなさい。これは家の決まりなの。許してちょうだい」


 よよよ、と下手な泣き真似をする姉と茶番劇をいくらかして沢山笑い合った後、私は彼女の手引きを受けて王宮を抜け出した。


 私のメイドや従者達にはお姉様が交渉し、体調が悪いことにしてもらった。


 そうやって口裏を合わせ、お父様達を見事騙し退けた。うちの姉にはそういった才能もあるらしい。


 私もみんなには少しの間だけ王宮を離れるとしか言っておらず、使用人達もそれくらいならと姉の信頼と私の境遇を考えて暫しの息抜きを許してくれた。


 街を少し歩いたら帰ってくると言ってあった為、近衛兵の護衛もいない。王族が一人で行動する。普通なら危険な事態だが、これに関しては問題ない。私は普通の人達よりもずっと強いからだ。


「姫さま? そのお荷物は?」


「『気にしないで』」


「は、はい……」


 少し散歩しに行くだけなのに、それにしては荷物が多いのを見て訝しがる者もいたが、少し言葉に魔力を乗せることで誤魔化していた。これは言霊という魔法。王族の特権の一つだ。


 同じ方法で検問も突破し、街を無事に出た私はお父様達から聞いた話と朧げな記憶を頼りにロフロス村へと向かった。


 赤ん坊の頃の記憶は殆どないが、私は人より幼子だった頃の記憶を覚えていた。それに幸い村の名前だけは父から聞いて知っていたので、目的地まで二日かかったが迷う事はなかった。


「ここがロフロス村……」


 そこはなにもない殺風景な田舎。

 その中心にあるのは、王都という国の中心、それも王宮から来たので余計にさびれて見える住宅の数々。

 集落と呼んでも、差し支えないほどに小規模な村だった。


「お義父様、お義母様、待っててくださいまし。きっと()()()が見つけに行きますから」


 あとは十数年ぶりに会うお義父様達の顔が分かるかどうかだった。

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