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58.休日デート

引き続き閑話が続きます。今回はティルラとリベアのデート編です。

 これはとある日の休日。


 グラトリア家の家族問題を万事解決に導いた(実際には何もやってない)私は、弟子とデートなるものに挑戦していました。


「えへへー。師匠っとデート! 師匠っとデート!!」


 彼女は機嫌良さそうに、ステップを踏みながら前を歩きます。


「…………」


 なんですかこの可愛い生き物は……そんなに嬉しそうな顔をされたら、私の理性が持ちませんよ。


「ししょう♪ どうしたんですかー?」


 少し前を歩いていたリベアが、くるりとこちらを振り返り首を傾けます。それに合わせて彼女の髪がさらりと揺れ、可愛らしい瞳が私を覗き込みました。


「いえ、なんでもありません」


――見惚れてしまっていた。なんて言えるわけがありません。


 私は動揺を誤魔化すように、この街に来た感想を呟きます。


「王都も良かったですが、近場の街もいいものですねー。なんというかこう、地元って感じで」


 まだこの地域に来てから、2ヶ月くらいしか経っていませんけどね。


「はい! 今日はたくさん回りましょうね師匠!!」


 私とリベアは今、ロフロス村から近い街に来ています。ここは王都ほどではありませんが、そこそこ賑わいのある街でした。


「まずはどのお店に入りましょうかー! えへへっ、師匠はどこか行きたい所はありますか?」


「リベアが行きたい所でいいですよ。ただし宿以外で」


「は〜い」


 本当に分かってるのか分からない、間の抜けた返事が返ってきました。


(この子、私が言わなかったら本当に宿へ向かっていたかもしれませんね)


 重すぎる愛に辟易しつつ、私は自然に彼女の手を取ります。


 ポカポカしていて、触れるとこちらまで温められるような、温もりを感じるお手てでした。


「――!?」


 私が彼女の手を取ると、弟子は酷く驚いた様子で肩をビクンとさせます。


「? 何を驚いているんですか? 今日はデートのつもりできたんですよね? でしたら手を繋ぐことは普通では?」


「そ、そうですよね。いきなりだったのでちょっと驚いちゃって……そういう無自覚な所、ずるいです。でも好き」


「なにか言いました?」


「いえ。なんでもです」


「そうですか。では行きましょう」


「はい!」


 弟子が何を言ったのか、小さくて最後の方はちゃんと聞き取れませんでしたが、この調子なら大丈夫でしょう。頬を赤く染めて、嬉しそうにしてますから。


「それじゃあリベア、まずはどこに行きたいですか?」


 私は彼女の手を引いて、適当に街をふらつく事にしました。


◇◇◇


 私の予定ではぶらぶらだらだら、まったりデートの筈だったのですが実際は全然違いました。


『あっちのお店に行きたいです!』


『あの屋台で一緒に食べ合いっこしませんか?』


『師匠、あそこでおばあちゃんが具合悪そうにしています。私がおばあちゃんの介抱をするので、師匠はスリの方を追ってください!』


 いやはや、とにかく忙しかったですね。


 リベアに言われるがまま街を散策した私は、お昼前にはもうクタクタでした。


 日頃運動していなかった報いがここで出てくるとは……もう少し私もリベアと一緒に走り込みなんかをして、素の体力をつけた方がいいのかもしれませんね。


「むぅ……」


 彼女は何かを考え込む様子で、備え付けのベンチに座り込みました。


(はぁ。やっと休憩できそうです。それにしてもこれをデートって言うのでしょうか? いえ、最初は普通でしたけど、最後の方は完全に人助けをしまくった記憶しかありません)


 もしかしてリベアの買い物が遅い日の理由はこれか? と疲れた頭でも正解に辿り着く怜悧な師匠でした。


「ふう、走り回ったら喉が渇きましたね」


 かぶりつくように、水をごくごくと飲んで、「残りの半分はリベアに……」と水の入った容器を渡そうとすると、彼女は神妙な面持ちで何かを考えているご様子でした。


「リベア?」


「…………師匠。私考えたんですけど、やっぱり初デート記念に宿は外せないかと……?」


 潤んだ瞳でこちらを見上げる弟子の顔をまじまじと見つめる師匠の顔は、それはそれは冷たいものでした。


「……帰りますよ?」


「ごめんなさい」


「許します」


 速攻で謝る弟子に、師匠も速攻で返します。


 私もデートをしたくないわけではありませんので。謝ってくれるなら勘弁してやりますよ。


 頭を下げていた弟子が顔を上げると、その澄んだ瞳に先程までの泣きそうな面影はまったく見られません。やはり私が睨んだ通り、今のは同情を誘う為の演技だったようです。


「次、変なこと言ったら本当に帰りますからね」


「はいです師匠! 私、師匠のことを心から愛していますからー!!」


 言ったそばから、愛を囁く……いえ叫ぶ弟子に私は踵を返しました。周囲の人たちの視線に耐えきれず、私の顔は真っ赤になっていたと思います。


「帰ります」


「ええっー!? 今のは変なことじゃないじゃないですかー!!」


 うわーん待ってくださいーと腰辺りに、本気で泣きながら抱きつく弟子に、今日何度目かの溜息をつきます。


(こんな恥辱を受けるなんて、いったいリベアはどんな精神をしていたら、街中で愛を叫ぶなんて芸当が平気でできるのでしょうね)


 愛故なのでしょうか? それなら私には絶対無理ですね。だって恥ずかしすぎるですもの。


 私は引きこもりのコミュ症ですので、人混みは大嫌いです。引きこもる前から嫌いではありましたが、師匠が亡くなってからはもっと嫌いになりました。


 そんな私がどうしてこんな朝早くから彼女とデートする事になったのか、それには時間を少し遡ります。


 

ここまで読んで頂きありがとうございました!!


「面白い」

「続きが気になる」

「リベア可愛い!」


と思ったら、ご感想、ご評価などを頂けますと幸いです。

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