56.抱き枕にされてしまいました
普段より糖分多めのリベア視点となります。
「師匠起きてくださいー! 起きてー!!」
「んぅ……んゅ」
「むぅ、可愛く鳴いたってダメなものはダメです!」
本当は抱きついてお腹あたりにすりすりしたい! という衝動を抑えて、私は師匠の身体を揺らします。
「うんぅ……もうすこしだけぇ……」
「そんな事言ってると、またお昼になっちゃいます!」
私の名前はリベア・アルシュン、13歳です。こう見えても立派な魔法使いの弟子をしています。
現在私は大切なお仕事をしています。それは師匠を起こす事です。はっきり言ってうちの師匠の寝覚めは最悪です。
何度起こしに来ても、全くと言っていいほど起きる気配がないのです。やっと起きたと思ったら昼過ぎになっていたりします。
なので自発的な起床は望めません。
最近は夜更かしをして、せっせと何かを作っている節があるので、そのせいもあるのでしょうが、私が軽く注意を入れても「徹夜には慣れてますし大丈夫ですから。リベアはゆっくりお休みしててください」と言って全く聞いてくれませんでした。
ベッドの上で微睡んでいる師匠は今日も今日とて、とても可愛いらしいです。ふにゃっと緩んだ頬に思わず口付けしちゃいたくなりますが、そこは頑張って我慢します。
私は師匠の弟子なんですから。
「うぅん……」
ベッドの緑に腰掛けた私は、師匠の美しい銀髪の髪に触れます。
(師匠の髪は、北部で見られるという“雪”のような色をしていますね)
師匠は自分の髪色が気に入らないようでしたが、私からすれば師匠の髪はとても美しい色をしていると思いますし、その純白のような髪は菫色の瞳のよさを引き立てているとも思いました。
他の何者にも染まらない色。それが師匠のトレードマークだと思っています。
(師匠には、どんな時でも師匠でいてもらいたいです)
師匠の髪はちゃんと手入れをすれば、ゆるふわヘアになるのは明白で、何度か整えさせてもらっていましたが、師匠は時間がかかるのをあまり好みません。
でもいずれは毎朝の習慣にさせられるようこれからも努力を続けていきたいと思います。
「ししょう。起きましょうよ。じゃないと添い寝、しちゃいますよ?」
「んぅ、やぁー……」
頑張って妖艶な雰囲気を出してみますが、ねむねむな師匠には効果はないようでした。
「んふふー。こんな師匠を見れるのは弟子の特権ですね」
私は師匠の頭を撫で撫でします。サラサラな髪の感触と師匠の良い匂いを肌で感じます。
この時間が私にとって至福の時です。起きない師匠が悪いんですからね。
「うー……りべぁ」
これは私の予想に過ぎませんが、師匠は二日前にやってきたご友人のソフィー様の為に徹夜をしているのではないかと思います。
『リベアちゃん。私は貴族だけどティルラの友人って事で遠慮しなくていいからね』
『は、はい』
彼女には会ってからすぐに、様はつけなくていいと言われていますが、庶民の私からしたら貴族、それも伯爵家は畏怖の対象です。
こうして心の中では様付けで呼ばせて頂くことで、普段接する分にはなんとか平常心を保てています。
『リベアさん。お互い大変な人に仕えている以上、協力して頑張りましょうね!』
『は、はい。こちらこそよろしくお願いしますフィアさん!!』
お付きのメイドのフィアさんとは境遇が似ている事もあり、すぐに仲良くなれました。
『お嬢様はバカなんですよ。何の考えなしに家を飛び出して……ご両親のご提案がなければ流石の私も止めようと思ってましたから』
私と二人きりになると必ずと言っていいほど、主人の悪口をいう彼女でしたが、その言葉に棘はなく、どこか愛のある言い方でした。
『分かります分かります。うちの師匠もとっても大変で……』
聞く所によると彼女も主人であるソフィー様には振り回されっぱなしで、今回の家出もその一つなんだそうです。
師匠も思いつきで行動しがちですが、ソフィー様はその性格からか、師匠よりもっと活発に行動しているご様子でした。
「ん? ……そろそろ本格的に起こしませんと、私の理性が持ちませんね」
左手に誰かの温もりを感じてそちらを見ると、師匠が私の手を握って顔を擦り寄せてきていました。
(やば……かわゆすぎますよ。この人)
師匠は時折、こうして甘えてくることがあります。それは寝ている時限定ですが、その時の師匠はだいたいめちゃ可愛いのです。今もこうして師匠のお顔を拝見していますが、小顔で顔のパーツのバランスもよく、どこからみてもとびっきりの美少女さんです。
(きっと、師匠の師匠……シャルティア様がいた頃はこうして甘えていたんですね)
そうして顔を近づけて師匠のことをまじまじと見ていたら、「んぅーまくらぁー……」と寝惚けた師匠の所在なさげな腕に抱き込まれるのでした。
閑話なので短目に……というのは建前で長くなりそうだったので分けました。
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