54.秘密兵器の正体は……
「まっへ、まってくらさーい」
「わわわ、待ってくださいお嬢様。フィアも一緒に……」
「貴方達はそこでゆっくり食べてなさい。誰も文句は言わないから。カルラ、二人にデザートを運んであげて」
「はい、お嬢様」
慌てて食事を突っ込むリベアとフィアさんに、ソフィーが「急がなくて大丈夫よ」と声を掛けます。
「わぁ!!」
「おいしそうですー!」
旬の果物を添えたパフェや大きなイチゴが乗せられたショートケーキなどが、メイド長のカルラさんの手によって運び込まれ、後ろに控えるメイドさん達がワゴンに乗せられたスイーツをリベア達のテーブルの上に丁寧に並べていきます。
その甘い物の数々に、二人の瞳が星のように輝き、口元からはよだれを垂らしておりました。
「ししょう、あの……」
「気にしないで食べていて下さい。あとで迎えに来ますから」
私もせっかくなのですから、食後を楽しむようにと、こちらの様子を窺っていたリベアに伝えると彼女は嬉しそうに顔を綻ばせます。
「は、はい! あ、で、でも……」
でもその後すぐに不満そうな顔をしました。私と離れるのが嫌だったのでしょう。
「本当に気にしないでいいですから」
「は、はい」
遠慮しないでいいんだよ? と小声で話しかけ、頭を撫で撫でしてあげると、彼女は不承不承といった様子ながらも頷いてくれました。
きっと私(師匠)とスイーツを天秤にかけて、ギリギリの所でスイーツが勝ったんですね。立派な乙女です。
あと顔を伏せて、こくこくと頷く弟子のお耳はちょっと赤くなっていて可愛かったなー。
「で、では頂きます」
師匠から許可を得た弟子は、カルラさんからスプーンを受け取りパフェをぱくりと口にします。
「お、おいしーい!!」
ほっぺたを押さえた弟子は、カルラさんに美味しい、美味しい! と連呼します。
「それは良かったです。おかわりも沢山ありますから遠慮しないで言ってくださいね」
「はいです!」
もう隣にいる師匠など眼中にないように、リベアはバクバクとデザートにありつき始めました。
そういう素直な所も弟子の魅力の一つでしょう。
「あ、師匠。戻ってきたら、師匠にあーんさせて下さい」
「あらあら。ティルラ様のお弟子ちゃんはとってもかわいいわね」
「……すみませんカルラさん。しばらく弟子の事をお願いします」
「ええ、任されました」
やっぱり弟子は弟子でした。
微笑ましい様子でリベアの傍に付くカルラさんに弟子の事は任せ、今度こそリーナさんの用意した個室へと向かうのでした。
◇◆◇◆
リーナさんに案内された個室は、ニ階の一番突き当たりにあるお部屋でした。
「使用人達も全員下がらせたわ。ここにいるのは私たちだけよ。それじゃあ見せてもらえるかな?」
この場にいるのは私とソフィー、そしてリーナさんの三人だけです。アラン様にはリーナさんがあとで説明してくれるそうです。
「はい。ですが今日持ってきた代物はとても貴重な物です。なのでこの事は絶対秘密でお願いします」
「ええ」
「もちろんよ」
二人が真剣な眼差しでこくりと頷きます。
「受け取るか、受け取らないかは自由です。元々これを使って交渉するつもりでしたが、思いの外簡単に和解してくれましたので」
私はアイテム袋の中から、白く透き通るような液体の入った魔法瓶を二つ取り出します。
一つはリーナさん用、もう一つはアラン様用です。
中指を軸として、二つの魔法瓶を人差し指、薬指の間に挟み、エリート研究者っぽく左手は腰に添えてドヤります。
「……この魔法瓶は?」
華麗に無視されました。
ソフィーが期待半分、不安半分といった様子で魔法瓶を指さします。最近忘れられがちですが、私の本職は研究者であり、腕利きの護衛でも商人でもありません。
故に自分の得意分野で失敗する訳がないのです! 魔導機器は失敗しましたけど……。
でも制作者に自信がないと、使う人も不安になると思います。
だから私は、自信を持ってこの魔法瓶を紹介します!
「――若返りの魔法瓶です」
「「え?」」
目を丸くする二人に、私は軽く説明をしていきます。
「簡単に効果を説明しますと、一本で10歳くらい若返ります。というか歳を取るのが遅くなると考えて下さい。もちろん飲んだ後は肌艶も結構良くなる筈ですよ。あ、でも寿命が延びるわけではありませんのでそこはご注意下さい」
寿命まで延ばせるものを作ってしまったら、それこそ世界中で戦争が起こりそうですしね。
グラトリア家に渡した魔法瓶は不死にはなれませんが、飲み続ければ不老となります。ですがそれはお勧めしませんし、渡すのも今回限りです。
まあ寿命を伸ばす方は一度作って、師匠に渡したらめちゃくちゃ怒られましたが……二つの意味で。
ここで大事な事は、寿命の伸ばす魔法瓶と若返りの魔法瓶は同時に服用する事は出来ないと言う事です。最悪死にます。
なぜ服用出来ないのかは理論的には分かりませんが、神秘的な力が働いているか、それこそ死の運命からは逃れられないと神様が言っているのでしょう。
私は神なんてものを信じてはいませんが。
「こんなものが作れちゃうなんて……やっぱりティルラちゃんは天才なのね」
私から若返りの魔法瓶を受け取ったリーナさんは、目をパチクリさせながら魔法瓶を上から見たり下から見たり傾けたりします。
「ティルラ……これお母様が飲んでも大丈夫なのよね? もし飲んで何かあったら……」
「そこに関しては安心して下さい。もう、一度試してますから」
「え、自分で飲んだの?」
「まさか。私にもしもの事があったら、誰がなんとかするんですか」
「え、じゃあ、その……まさか」
「はい、その通りです。出発前、リベアにかなり薄めた物を飲んで頂きました」
ここまで読んで頂きありがとうございました!
次話で2章は完結となります。
「面白い」
「続きが気になる」
「リベア可愛い!」
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