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31.モテ期到来ー!?

ブックマーク・評価のほどよろしくお願いします。

「――っていう事があったんですよ」


 長い長い回想の後、私の話を真摯に聞いていた二人が、おおっーと感嘆の声を上げて立ち上がります。


 二人の視線は私の膝の上で、すやすやと眠っているソフィーに釘付けでした。


 彼女が起きていたら、間違いなく怒られていたでしょう。


『シャルティア様ーお久しぶりです!! 実家のお土産を持ってきました!』


『おう、ありがとうな』


 昔の彼女はシャルティア様ー! シャルティア様ーと純真無垢をその身で体現しており、師匠にとても敬意を払っておりました。しかし大人になっていくにつれ、シャルティア様のダメな部分にも気が付いてしまいました。


 口調こそ変わっていなかったもの、師匠が死ぬ1年前など、大賢者である師匠にずばずばと物を言っていましたから。


 その時は本当に、お父様によく似てきたと思いました。


 私も一度お見受けしましたが、ソフィーのお父様が仕事をする様とソフィーが商業に従事する様は、本当によく似ておられます。


 顔立ちは母親似ですが、中身は父親似なのでしょう。


 それに昔は、今よりもずっと素直でしたから、昔の話をすると堪えるものがあるでしょう。


 私との出会いなんか、特にそうですね。


 ずっと友達なんて言葉、もうかれこれ数年は聞いていません。


「ソフィーさんと師匠に、そのような過去があったんですか……たしかに師匠の言う通り、腐れ縁ですね」


「ソフィーお嬢様にも、かわいい頃があったんですか。フィアは驚きです!」


「ええ、可愛い時もあったんです。それに彼女のツンデレ具合も、成長するにつれて鳴りを潜めていきましたが、結局の所、私もソフィーも根本の部分は変わっていませんね」


 ソフィーをベッドまで運び、布団をかけてあげます。まだすやすやです。


 彼女との思い出。


 家出をして彼女の家でお手伝いをしていた時、魔法は便利だからと凄くこき使われた気がします。けれど、腫れ物扱いされるよりはましでした。


 今なら分かります。


 ソフィーも、ソフィーのお父様やお母様も、彼女達なりに、私の事を気遣ってくれていたという事なのでしょうね。


「それで師匠。どうするんですか?」


「どうするとは?」


 ソフィーの可愛らしい寝顔を見て、つんつんしていたら、弟子にそう問われました。


「誤魔化さないで下さい! ソフィーさんが抱えている問題を解決してあげるのか、どうかという事です! 友達なんですよね?」


「……まぁ、確かに友達ですけど」


 ソフィーには時々……1年に一回くらいは会っていましたけれど、ご両親とはもう随分とご無沙汰しています。


 私の事を覚えてくれているでしょうか?


「フィアからもお願いします!! 今の話を聞いて、お嬢様の問題を解決出来るのは、ご友人であるティルラ様しかいないとフィアは思いました!」


 ガバッと抱きつかれます。フィアさん、こんなに大胆な子でしたっけ?


 それにいつの間にか、さん付けから、様付けに変わっています……うーん、もしかしてわざとでしょうか? フィアさん。意外とそういう所があるって、最近気づいたんですよね。


「お願いします師匠!!」


 まさかのリベアにも抱きつかれました。しっかり腰にまで手を回し、がっちりと掴んできます。え、モテ期到来ですか? 女の子相手に?


「わわっ! ちょっと分かりましたから、一旦離れて下さい!!」


「嫌です! フィアさんが離すまで、私は離しません。というか、もう離したくありません!!」


 何言ってるのこの子!? 師匠はちょっと恐怖を感じたよ!


「うぅー、フィアさんも離れてくださいっ!」


「なら約束して下さい。ソフィーお嬢様の問題を解決して下さると」


 フィアさんの締め付けが強くなります。それに合わせてリベアの方も……あと、めっちゃ顔を擦り寄せてきますねこの子……。


「分かりました。分かりました! 約束します、約束しますから!!」


 やっとの思いで二人から解放されると、服の上から分かるほど、汗をかいている事に気が付きました。


 着衣が乱れ、半裸に剥かれかけています。特に肩なんか丸出しです。すごい力でした。


 特にリベア。


 私の服を脱がしたいという想いが、よく伝わってきましたよ。


「えへへ……ちょっと息が……ふぅ」


「えへへ、じゃないです。あとそれは締められていた私の台詞です」


「はぁはぁ……」


 そして目の前には、呼吸を荒くした美少女が二人。こんな現場を見られたら、間違いなく勘違いされます。



「……あんた達何してるの?」



「ひえっ!」



 ゆっくりと声のする方に顔を向けます。ベッドの上には上半身を起こしたソフィーが、冷たい視線を私に向けておりました。なんという完璧なタイミング。運命の悪戯でしょうか。


 ソフィーは私とリベア達を交互に見て、自分がベッドに寝かされている状態を理解し、それを踏まえた上で今の状況を正確に把握します。あ、まずい。


「――このド変態ッ! リベアちゃんだけでなく、私の従者にまで手をつけたのね!! あろう事か魔法を使って眠らせて、私も襲おうとしたのね!!」


 涙目のソフィーが肩を震わし、自分の身体を庇うように腕を交差して、身をよじります。


「違うんです! 誤解なんですよ、もうどうしてこうなったんですかー!!」


 泣きたいのはこっちですよ。


 ソフィーの誤解を解くのに、それから数時間の時を要しました。

フィアは案外、黒い子なのかもしれません。

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