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28.やっぱり親娘です

「ティルラ大丈夫? 足は痛まない?」


 ソフィーは親切にも、わたしに肩を貸そうとしてくれますが、それをやんわりとお断りします。


「平気ですよ。捻挫を放置し過ぎて酷くなっただけですので、お医者様にもお風呂くらいなら問題ないと言われていますから」


「それなら良いんだけど……」


 ソフィーはまだ心配、といった顔をしています。本当に大丈夫なんですけどねー。


「それに魔法で防護しているので、めちゃくちゃ動かさない限り平気な筈です」


 椅子に座って、包帯を取った足をぷらんぷらんさせて見せます。


 ソフィーは「へぇー」と感心したような、それでいて羨ましそうな様子を見せます。


「魔法って、本当に便利なのね」


「ソフィーにも教えましょうか?」


 親切心のつもりでそう提案すると、ソフィーは途端に悲しい顔をしました。


――あ、忘れていました。


 師匠から貴族でも、魔法が使えない者はいるから、無闇やたらに魔法の話をしないようにと。


 無知は時に、相手を傷つけてしまう事になるから。


「あたしには魔法の才能はないから遠慮しておく。魔法を勉強しても、悲しくなるだけだもの」


「そうですか……ごめんない」


「いいえ。気にしてないわ」


「さぁさぁ二人とも! お風呂に浸かる前に、まずは身体を洗いましょうか」


 悲壮な雰囲気を変えようと、リーナさんが声を張り、わたし達の背中をぐいぐいと押します。


「「はーい」」


 ソフィーにつられて、わたしも子供みたいな返事をしてしまいます。リーナさんは母親として、天性の才をお持ちなのかもしれません。


(わたしに母親がいたら、こんな感じだったんでしょうか? でも、こんなに仲良くは出来なかったかもしれません)


 内心変な事をされないかと、ビクビクしつつ、リーナさんと一緒に洗い場へ向かいました。


◇◇◇


 大きいです。


 リーナさんの胸じゃありませんよ。このお風呂場がです。


 まずお風呂が大きくて広いです。軽く10人くらいは入れると思いました。


 洗い場も同じくらいの人数が、同時に身体を洗えます。


 貴族の屋敷という事で、大きいだろうとは予想していましたが、ここまで大きいとは思っていませんでした。これで別荘というのですから驚きです。


 本邸はどれほど大きいのか、庶民のわたしには想像もつきません。


 お風呂に浸かって、身体の疲れを癒します。


 師匠と住んでいる山小屋では、ひと一人が限界の大きさしかなかったので、足を伸ばしてもぶつからないというのは新鮮でした。



「ふわぁー。気持ちいいですねぇ」



 結論から言いますと、9歳のわたしに、リーナさんは特に変なことはしてきませんでした。強いて言うなら、ソフィーと三人で背中の洗いっこをしたくらいです。


 わたしがソフィーの背中を洗い、リーナさんがわたしの背中を洗いました。


 ソフィーの髪は長いので、髪を結って団子にしていました。リーナさんも同じです。


 改めて見ても、やっぱり姉妹にしか見えませんでした。


「ふん、ふんふーん♪ ティルラちゃん。痒いところはありませんかー?」


「大丈夫です」


 わたしの背中をリーナさんがタオルで拭きます。怖いです。


「ティルラ。もっと強く擦りなさい」


「はい」


 わたしは力を込めて、ソフィーの背中をごしごしします。


「ぎゃあああー! ティルラやり過ぎ、痛いって」


「すみません。つい、いつも師匠にやるようにやってしまいました」


「あんた、いつもどんだけ力を込めてやってんのよ……」


「え? 師匠は全然気にしてませんでしたよ。もっと強くしてもいいって、いつも言ってらっしゃいましたし」


「…………あんたがおかしいのか、シャルティア様がおかしいのか、もう分からないわ」


「そうでしょうか? わたしは普通だと思いますがね」


 痛いって言うので、わたしは優しくソフィーの背中を拭き、丁寧に洗い流します。


 彼女の背中はとっても綺麗で、わたしが人差し指でちょっとなぞったら、「ひゅん!」と可愛らしい反応をして下さいました。


 そしたら、わたしも後ろからリーナさんに撫でられ、「ひゃっ!」と反応してしまい、またリーナさんに愛でられる事になってしまいました。


(ソフィーの髪はサラサラですね。一本一本が細いですし)


 ソフィーの髪質は、くせっ毛のないストレートです。髪を結う際に少し手伝ったのですが、わたしと違って、とてもまとめやすいものでした。


 ちなみにわたしは、肩にかかるくらいしか伸ばしていないので、髪を結う必要はありません。


 二人に一緒の髪型にしようと誘われましたが、髪が短いわたしには、どうやっても出来ないのです。


 それでもリーナさんに、後ろ髪をたくし上げられ、そのまま上で纏められました。


 二人には可愛い可愛いと言われました。そりゃあもう、うざいくらいに。


 やっぱり親娘だなと思いました。


「いいお風呂でしたー」


「次はご飯よー。カルラ、準備は出来てる?」


「はい、奥様」


 その夜は美味しいご飯を食べて、何故かソフィーとリーナさんと一緒に寝る事になりましたが、素敵な夜を過ごせました。


 リーナさんのお胸はとても柔らかく、ずっと枕にしていたいくらいでした。


 彼女もわたしの事を一晩中抱き枕にして、「とっても抱き心地が良かったわ」と言って下さったので、お互い良い関係が築けそうです。


 その日から、わたしのグラトリア家での生活は始まりました。


 

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