25. ツンデレとS……ではわたしは?
読者の皆様はどんなタイプがお好きですか?
先程、足を怪我して動けなくなったわたしの元に、ソフィー・グラトリアと名乗る少女が現れました。
――ティルラ・イスティル。今なら貴方と友達になってあげてもよくてよ。
そして彼女は、わたしが大賢者の正統後継者であると知っているにも関わらず、白昼堂々そんな事を宣いました。
図々しいにも程があります。わたしはそんな軽い女の子ではないのです。
――あら、嬉しくて何も物を言えないの?
扇で口元を隠しながら、何か汚い物を見るような目で、ずぶ濡れのわたしの事を見下ろしてきます。
馬鹿にされているようでムカつきました。
反抗しようとしましたが、彼女に弱みをつけ込まれ、為す術もなく壁際に追い詰められます。そして壁ドンされました。
――住む場所も食べる物もないんですってね〜。今なら、わたくしの屋敷の外にあるペット小屋に住まわせてあげてもよくてよ。
わたしは小動物のように震えながら、こくこくと頷くほかありませんでした。
――なら契約成立ね。
わたしは彼女と主従関係付きのお友達になり、今は怪我の治療をされるべく、ソフィーのメイドであるカルラさんに背負われながら、彼女の屋敷に向かっておりました。
「なんて可哀想なわたしなのでしょうかー」
「……ティルラ。最後まで黙って聞いていたけれど、あたしとの出会いを勝手に改悪するのはおよしなさい。それではあたしが悪人でしてよ。それに壁ドンなんて……あたしだってされた事ない」
「すみません。わたしからしたら、知らない人は全員そういう風に見えていますので」
「どうなってるんですのあなたは!?」
「お嬢様。ティルラ様の嘘回想に出てきた偽お嬢様の口調が移っております」
「っ!?」
カルラさんに指摘されて、ハッとなるソフィー。ふむふむ。どうやらわたしには、そっち方面の才能があるのやもしれません。
「〜っ、ティルラのばかばかばかばか!」
ソフィーがぷくーと頬を膨らせながら、カルラさんに背負われているわたしの事をポカポカと叩いてきます。子供みたいです。子供でした。
「わー、いたいですー。カルラさん助けてくださーい」
もちろん全然痛くないです。怪我人なので、手加減してくれているのでしょう。
「…………」
おや?
ポカポカ叩いていたと思ったら、今度は急にしょぼくれ始めました。
どうしたのでしょうか? もしや、わたしの痛いです演技に気付いたのでは?
「……ティルラはあたしの事が嫌いなの?」
「…………」
違いました。
これまた感情の起伏が激しい人ですね。いえ、表情豊かな方と表現しておきましょう。
「ただの冗談ですよ。わたし達は友達なんですから、あまり怒らないで下さい。初めての友達なので、ついちょっかいをかけたくなっちゃったんです。許してください」
『初めての友達』。その言葉に、ソフィーは確かに肩を震わし、反応を示しました。
「そ、そうね。あたし達は友達だものね。ふふん。あたしはあなたの他にも沢山友達はいるけれど、その友達は、こんな事でいちいち怒ったりしないもの。それに冗談を言い合うのは、友達なら普通の事よね。うん」
自分に納得させるように、うんうんと頷くソフィー。
ふっ、ちょろいですねこの子。恥ずかしそうに照れちゃって……って、もしかしてツンですか? これ、師匠が言っていたツンデレという奴なのかもしれません。
「もう怒ったりしない。だからこれからも友達でいてね、ティルラ……」
上目遣いで、こちらの様子を窺うように見てくるソフィーに、わたしの心は完全にやられました。
そんな初心な反応見せられたら、こっちまで恥ずかしくなっちゃうじゃないですか。
「ティルラ様。あんまりお嬢様をからかわないで下さいね」
そう言って笑うカルラさんは、実に楽しげでした。
この人はSという人種なのかもしれません。師匠が言っていました。そういう人種は、このような会話がなされた時に、嗜虐的な笑みを浮かべていると。
「むむむっ……」
残念ながら、そのカルラさんに背負われているために、彼女のご尊顔を拝見する出来ませんでしたが、声の調子からある程度の予想は出来ました。
(たぶん、ソフィーに友達が出来て嬉しい反面、その反応を心の底から楽しんでいる気がします……)
おそらく、わたしの他に友達がいるというのは、嘘なのでしょう。
それくらいはわたしだって分かります。
「ほらほらお嬢様。しっかり前を向いて歩いて下さい。転びますよ」
という事で、わたしはこの妙な空気を変えるために、話題転換する事にしました。
「えっと、ソフィーは結構良いところのお嬢様なんですよね?」
暫くソフィーとの過去編が続きます。
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