23.ソフィーの悩み
キスされる寸前。私は最後まで取っておいた切り札を切りました。
「お願いですリベア。助けてくれたら、なんでも言うことを一つ聞いてあげますから」
「――っ、なんでも!? 分かりました、ただちに」
『なんでも言うことを聞く』という魔法の言葉に、リベアが正気に戻りました。
そして、ソフィーの腰を掴み、引き剥がしにかかります。
「うーーん、ソフィーさん。師匠から離れて下さーい!!」
それでもソフィーは離れてくれません。
「おえっ、苦しい……」
それどころか、私への締め付けはさらにキツくなり、愚痴までこぼし始めました。
「お母様がねぇ、毎日のように言うのよ。そろそろ結婚を考える歳だから、仕事なんて辞めて、花嫁修行をしろとか、良い相手を探せって。そりゃ貴族の務めもあるし、ある程度はあたしも許容してやってたんだけど、もう限界なのよ! まだ結婚なんてしたくないっての! 私は仕事だけ出来れば満足なの! 早々に子供なんか作って、自由を制限したくないわ。それにあたしはまだ15よ? いくらなんでも早過ぎだわ……」
最後の方は、消え入りそうな、今にも泣き出しそうな声でした。とゆうか、もう泣いてますね。
私はソフィーの肩を掴み、なんとか諭しにかかります。
「ソフィー。貴族に生まれたからには、そういった事柄からは逃げられませんよ」
「じゃああたし、貴族やめたい。ティルラ、あんたがあたしと結婚して」
「えぇ〜。いきなり話が飛躍しましたね」
「……むぅ、師匠の人たらし」
後ろから弟子の刺すような視線を感じます。
どうしましょう。今夜、寝ている時に襲われるかもしれません。
「とにかくティルラ。あんたがなんとかしなさい!」
「えぇ……」
なんとかしろと言われましても、一個人と致しましては、他人の家庭にはあまり口出しできませんし。
ましてや、相手がお貴族様など……。
「じゃないと、今度から取引してあげないわよ」
「あ、それは困りますね。でも、とりあえず一旦離れてくれません?」
「いやだー。ティルラのそばにいると、なんだか落ち着くの」
「ふむ、まだまだ効いてるみたいですねー」
これでは埒があかないという事で、リベアに魔法で眠らせてもらいました。
「すぅ……すぅ……」
「ふぅ。ようやく離れてくれました」
先程まで泣いていたせいで、少し目元が赤くなっています。せっかく可愛い顔をしているのに、これでは台無しですね。
「リベア。今ハンカチを持っていたら、貸してください。私のはダメになってしまいましたから」
服と一緒に、持っていたハンカチにも、匂いがついてしまいましたから。
「はい、どうぞお使いください」
「ありがとうございます」
リベアから受け取ったハンカチで、ソフィーの目から零れ落ちる涙を拭き、ついでに膝枕をしてさしあげます。
そうしていると、弟子がわたしも、わたしも、とこちらにやってこようとします。
「そこで止まって下さい。それ以上近づくと、リベアもソフィーのようになる恐れがあるので」
弟子にも一応距離を取ってもらいます。
リベアまで、おかしくなってしまったら困りますから。
「はい……師匠、大丈夫でしたか?」
ちょっと残念そうですね。でも諦めて下さい。
「ええ。ソフィーも、眠っていれば可愛いんですけどねー」
私は気持ちよく眠るソフィーの後ろ髪を優しく撫でてやります。おそらく、ここに来てからあまり寝ていなかったんでしょう。ずいぶんやつれています。
今朝はよく眠れた、なんて言ってましたけど嘘だったみたいですね。化粧で上手く隠してたみたいですが、よくみると目の隈も凄いですし。今夜はぐっすりですね。
「んぅ……ティルラ……どこ?」
「はいはい。私はここにいますよ」
小さな子供のように、ソフィーは手を伸ばします。私はその手を優しく握ってさしあげました。
なんだか懐かしい気がしました。あの時とは、立場が逆になったみたいです。
(昔は、こうしてよく髪を撫でてもらいましたっけ)
まだ私が分別の無い子供だった頃、研究の方向性から、師匠と喧嘩になった事がありました。それで家から飛び出した事も。
「あの事がきっかけで、ソフィーと仲良くなったんですよね」
――それは、私がまだソフィーと仲良くなる前、師匠と山奥で修行していた頃の出来事でした。
【※読者の皆様へ】
「面白い」
「続きが気になる」
「リベア可愛い!」
と思ったら、広告下↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると嬉しいです。
今後も作品を書き続ける上で強力な燃料となります! どうか、ご協力のほどよろしくお願いします。




