188.油断は、しません!
今回はリベアちゃん視点です。
「師匠ー!!!! えへへへー! いっぱい褒めてくれてる!! これで作戦は――」
ひとしきり手を振り、師匠からのお褒めの言葉をしっかり受け取った私は、対戦相手の様子を確認しようと振り返りました。
その瞬間――目の前に、飛刀が迫っていました。
「……え?」
勝利を確信した、まさにタイミング。
至近距離から放たれた暗器。それは、普通の魔法使いであれば、まず防げないタイミングでした。
「むんっ!」
ですが私は違います。反射的に発動した防御魔法が、飛刀を弾きました。
普段から訓練を積んできた成果ですね!
「危なかった……」
飛刀はカラカラと音を立てて床を転がり、付与されていた魔法の輝きも、ほどなく消えていきます。
威力や速度を底上げする魔法が施されていたのでしょう。
身体の外に放出していた魔力がなければ、防御は間に合っていませんでした。
顔に刺さっていれば、間違いなく致命傷です。
「ま……だ……」
こんな真似をする人物は、この場に一人しかいません。
(なんてタフな!? 私の攻撃をあれだけ喰らったのに! いくら師匠より威力は劣るとはいえ、動けない筈なのに!!)
全身はボロボロで、立っているのもやっとの状態。それでもネウロさんは、震える足取りでこちらへ歩み寄ろうとしていました。
彼女は肩を押さえています。
その肩を破壊したのは、間違いなく私です。
それでも暗器を投げ、今なお肩を押さえながらも上がらない腕で杖を持ち、魔法を放とうとしている――その執念に、正直驚かされました。
(どうして……そこまで……)
慌てて距離を取り、杖を構えます。
ですがネウロさんは、一向に魔法を放ってきません。
視界が定まっていないのでしょう。
私が与えたダメージで、狙いをつけられないようです。
――話しかけるなら、今。
「ネウロさん! もう勝負は決しました! これ以上戦っても、無意味です!」
「…………」
返事はありません。
ですが、代わりに返ってきたのは、極上の殺意でした。
「私は、あなたを殺す気はありません! もうこれ以上傷付けたくないんです」
一触即発の空気。
暴走したネウロさんを取り囲むように、教師陣や見慣れない魔法使いたちが配置されていました。
師匠が言っていた、王宮付きの魔法使いでしょう。
師匠の反応からしても、作戦は順調に進んでいるようです。
ネウロさんも、すでに確保対象になったのでしょう。
審判や、その他洗脳されていた人たちが、どこまで記憶を保持しているかは分かりません。
ですが、ここで捕まれば、重要参考人である彼女の取り調べは免れないはずです。
「……最後のあがきに……どうして反応できたんです? 今までの人、みんな……油断して、やられたのに……」
杖を構えたまま、彼女は問いかけてきました。
だから私は、正直に答えます。
「そんなの当然ですよ。だって過去に会った時、師匠はあなたの事を警戒していました。師匠が万に一つの可能性を考えて警戒していた相手なんですから」
息を整え、言葉を続けます。
「誰であっても、どんな時でも油断しない。私も、その姿勢を見習っただけです。だから、何があっても対応できるよう、編み込んでいた魔力を少しだけ手元に残していました」
「……そう、ですか……」
ネウロさんは、小さく息を吐きました。
「リベアさん……いいことを、教えてあげます。私の力は……借り物です。あの方――エメラルダ様から、受け取った力……」
彼女は、かすれた声で続けます。
「でも、そのエメラルダ様の魔力を感じ取れない……つまり、負けてしまわれた、ということです。だから……今まで魔法にかけられていた人たちの記憶や洗脳状態は……元に戻ると思います」
視線が、わずかに揺れました。
「長くかけられていた人ほど記憶は残り、短い人は……ほとんど覚えていない、でしょうけど……」
「……随分とネタバラシしてくれるんですね? どういう風の吹き回しですか?」
「警戒していた……他の人にも、認められていたんだと思えて、嬉しくなったからです」
一拍、置いて。彼女は嗤った。目を釣り上げて、ギョッとするような顔で。
「けど、それだけじゃ……ないです。だって私が負け、リベアさんを殺せず、エメラルダ様も捕らえられた今……もう手段を選ばないから……です。ひひっ、ひひひひっ。ひひひひひ」
狂ったようにネウロさんは笑い続けました。
「楽しみにしてたみたいですけど……後夜祭。できるといいですね?」
「それって……どういう――」
その時でした。
王族用の来賓席――師匠のいた場所で、突如として魔法の交戦が起こります。
師匠が、アリスちゃんを庇う姿が見えました。
一瞬で動きは止まりましたが……見えてしまったのです。
アリスちゃんの姉である、ビエンカ第一王女殿下が、学長に身体を拘束され、脳天に杖を突きつけられている姿が。
「まさか――人質!? どうして学長が……」
「今に……分かります。ほら……聞こえてきました。あの音が」
次の瞬間、会場各地で護衛していた者達の悲鳴が上がります。
やがて、ソレは観客席にまで現れました。
獣じみた唸り声。
蛇の尾、蜥蜴の頭、獅子のたてがみを持つ怪物。
――かつて、一度学園を襲った存在。
「キメラ……!?」
事態は、まだ終わっていませんでした。
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