173.夢はいつか現実に 【挿絵あり】
本日は挿絵付き。
イラストはソーダ水先生
「それじゃあそろそろ寝ましょうか」
「はい。今日は色々あって疲れました」
「ふふ、確かにそうですね」
「師匠」
先にベッドに潜り込んだリベアが手招きしています。これは一緒に寝ようというお誘いでしょう。弟子である彼女と結婚してから数年。この生活にも慣れてきました。
「失礼しますね」
「はい。おいでませです〜」
少し照れながら、彼女と同じ布団に入り込むとリベアがむぎゅっと抱きついてきました。
「師匠あったかい……」
「リベアもあったかいですよ」
「えへへ」
甘えるような声を出し、すり寄ってくる彼女を優しく抱きしめる。すると彼女は安心したかのように穏やかな表情で眠りに落ちていきました。
「おやすみなさいリベア」
彼女の額に口づけをして、わたしもゆっくりと瞼を閉じます。
◇◇◇
「ん……」
わたしは朝起きるとまず最初にリベアの頬に軽く口付けをしてあげます。これも毎日の習慣みたいなものです。というかやらないと機嫌が悪くなります。
すると眠っていた彼女もゆっくりと目を覚まし、わたしの顔を見て、「おはようございます」と笑顔を見せてくれるのです。
「はいおはようございますリベア。今日もいい天気ですよ」
「ティルラ様……はい、良い一日になると、おもいます……」
まだ半分寝ぼけているのか、いつもより幼い口調のリベアは、わたしの手を握って離そうとしませんでした。こういう時は、わたしも無理に振りほどいたりはしません。むしろ彼女の方から求めてきたのなら応えるだけです。
「んっ」
わたしは少し身体を起こし、今度はリベアの方へ顔を近づけます。すると彼女は察したかのように瞳を閉じ、それを確認した後、わたしはそっと唇に触れ……
ん?
いや待ってそれはおかしい……たとえ寝ぼけていたとしてもリベアはわたしの事を名前では呼びません。
何よりわたしが朝、リベアより早く起きれる筈がないのです。
とどのつまり――。
「はっ……!!」
ガバッと起き上がる。そこには見慣れた天井があり、東西から集めた私物が並ぶわたしの私室でした。
「ゆめ……ですか。なんともまあ」
ふと、ベッドの頭の方に顔を向けると一冊の本が目に止まります。リベアに友達が読んでいて面白かったから師匠にも読んで欲しいと半ば強引に渡された恋愛小説です。
執筆者は不明ですがなんでも高貴な人が書いたらしく、内容は身分違いの恋という王道ものから、血縁者による禁断の愛などなど。それら全て女性同士のもので、庶民から一部貴族の間で広く支持されているそうです。
「……微かにですが、この本からリベアの魔力を感じます。あの夢をみたのはこれのせいでしょう」
対象に任意の夢を見させる……といった類の魔法が使われています。
渡された時には気付きませんでした。我が弟子も腕を上げましたね。パパッと魔法を解除し、現在の時刻を確認します。
「そろそろ支度をして学院に向かいませんと」
学院は魔物による突然の襲撃により一時休校となり、そのまま休暇を挟みました。
再開したのは事件から半月後。そして今日は休校明け最初の授業です。
◇◆◇◆◇
学院に行くと授業の再開を祝う声や休み明けの挨拶など、様々な生徒達に囲まれます。事件前に比べてさらに囲う人が増えたのは気のせいでしょうか?
「ティルラ様ー! お久しぶりです、本日からよろしくお願いします」
「ティルラ先生、授業の事で聞きたいことが」
「ティルラ様。実は今日趣味のお弁当作りでお弁当を作りすぎてしまったのですが、よろしければどうぞお召し上がりになって下さい!!」
「大賢者様。本日の放課後は空いてますでしょうか? 良ければ茶会クラブにいらしてくださいまし。温かい紅茶をご用意しております」
「あーいや、空いてるには空いてるんですが……」
事件の前と後で大きく変わった事と言えばもう一つあります。それはリベアが一部の貴族からモテモテになった事です。ただし男子は厳禁という事で他の女子が睨みを利かしていました。
「リベアさーん」
「リベアお姉様ー」
「リベア様!」
ええ、とにかくモテモテでした。特にリベアが助けて回った子達からは。
「リベア・アルシュンさん。良かったら私たちのクラブに入りませんこと?」
わたしの弟子だと分かったのもあるのでしょう。彼女と関わりを持とうとそれまでは接点のなかった上級生まで教室にやってくる始末。
普段リベアと一緒にいるお二人はというと、喧騒に巻き込まれないよう少し離れた所にいるようでした。
――一旦外に。
教室が混んできたのでわたし達は一旦中庭に移動。しかしそこでも沢山の人に囲まれてしまいます。むしろ外に出て広くなった事でその数は先程よりも多くなり、その中には彼女も含まれていました。
「ふふふ。ティルラ様の右腕はもらったわ」
この国の第二王女であるユリア様です。
「あ!」
リベアが悲鳴のような声を出します。わたしの右腕にはユリア様が絡みついており、更には恋人繋ぎをしようとしています。
その光景を目の当たりにして、わなわな震えるリベアにウインクをして応えるユリア様。悪い笑顔でニマニマしていました。
「だめー! 師匠は私のものです!! 誰にも渡しません!!」
「あ、リベアさん」
周りを囲う人達をかき分けて、リベアはわたし達の元へと駆け寄ってきました。
元々これが狙いだったんでしょう。リベアがわたしの手を取る前に姫様はわたしからサッと離れます。
(あとはよろしくやってくださいティルラさん。私に代わり、国民を守って頂いたささやかなお礼です)
リベアはわたしの手を掴み、胸の前でしっかりと握ります。そしてうっとりとした表情を浮かべるのでした。
「師匠。わたしは師匠の事を愛しています。この世界の誰よりも師匠の事を。だから他の人になんて絶対に渡しません!」
嬉しい反面、恥ずかしさから思わずたじろぎそうになります。ですが周りに人がいる事を思い出し踏み止まります。
「リベア……」
ここで引き下がれば大賢者の名折れ、だから負けじとわたしも言ってやりました。
「そんな事しなくたって、わたしはあなたのものですよ? それにリベアだってわたしのものですよね?」
ボッと火が点いたようにリベアは顔を赤くします。
その発言に周囲からキャーキャーという黄色い声があがりました。
そのどさくさに紛れて、わたしは今朝の夢の犯人であるリベアに小声で告げるのです。
「話は変わりますが枕に細工をしたのは貴方ですね?」
「ふへっ? な、なんで」
本はブラフ。本命は枕です。
仕掛けは二重構造となっており、本に掛けられた魔法を解除すると自動的に枕の方の仕掛けが作動し、わたしは明日も夢を見ることになってしまうのです。
「弟子のイタズラを暴くのも師匠の役目ですよ」
「すみません。ほんの出来心で……」
気付けたから良かったものの、あやうく夢の続きを見ることになっていた所でした。
「元の枕に戻すまで、今夜は寝かせないよ?」
熱っぽい瞳でわたしを見つめる弟子の耳元へ、くすぐるように囁きます。
すると彼女はたちまち顔を更に真っ赤にさせてこくこくと頷きました。ちょっとした意趣返しつもりでしたが効果は覿面のよう。
「はわ、はわわ」
「ふふ、可愛いですね」
あの夢が現実になる日も近いのかもしれませんね。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
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どうでしょうかこの素晴らしいイラストは……私はとてつもなく満足しています。皆様も「尊い」という気持ちになっていれば幸いです。
話の内容はもちろん、イラストに対しての感想も待ってます!!




