169.事件収束
あらかた魔物を消し飛ばし終えると、学院内をこそこそと移動する影がありました。どうやら今回の事件の犯人がどさくさに紛れて逃げようとしているようです。
(逃すとでも?)
わたしがいるのに、逃げきれると本気で思っているんでしょうか?
「そこ、動いたら四肢を爆散させますよ」
魔法で誘導し、彼らを一箇所に集めます。周りを騎士で囲み、脅しをかけるとすぐに大人しくなりました。
大人しくというのは少し違うかもしれませんね。隙を見て逃げ出す気満々です。そんな真似させないけど。
「外套を脱ぎなさい。さもなければ本当にぶっ飛ばしますよ? キメラにやったように」
人前でそんな事したら、大賢者のイメージがダウンしてしまうので絶対しませんけど。師匠も人前ではやるなと言っていましたし。
「ひいっ、嫌だ。俺は死にたくない」
さて、これで言うこと聞いてくれなかったらどうしようと思っていたら、脅しはしっかり効果があったようで何人かが怯え、その中の一人が外套を脱ぎました。
「……なるほど」
「ちっ! ふざけやがって!! 作戦は途中まで上手くいっていたのにこんなに早く大賢者が戻ってくるとは」
それを見たリーダ格の男がぶっきらぼうな口調で言います。彼もまた自らの外套を脱ぎ、その素顔を明かしました。
「やはり貴方達でしたか」
魔力反応から知っている気配だとは思っていました。
「覚えていたのか」
「勿論です。友人の使用人を傷付けた危険人物を忘れる筈がありません」
彼らは過去、ソフィーの家出問題解決のために立ち寄った師匠の屋敷で、従者のトミーさんに危害を加えようとした魔法統率協会の職員さんでした。
それが彼を含めて四人。どうやって魔物を王都に運び込んだのかは分かりませんが、障壁に残っていた魔力反応からして今回の主犯は彼らで間違いないでしょう。
「さて。キメラもまだ少しいますし、どうするべきか」
生徒の手前、手荒な真似はあまりしたくありません。
「待て、我々は嵌められたのだ。これには深いわけが――」
「黙りなさい」
「あぇ?」
リーダ格の男が弁解をしようとしますがその横を魔弾が通過し、地面を抉ります。オルドスと違って何が起こったのかも分かっていないようですね。
“王族も通う魔法学院の襲撃”
「わたしが優しく慈悲深い大賢者でよかったですね。貴方達を裁くのが騎士だったらもう殺されていますよ」
生徒が近くにいるからこそ、彼らも黙って成り行きを見ているんですから。
自分たちが起こした行動の愚かさを理解する頃には首が飛んでいるかもしれませんね。
「どうせ魔物騒ぎを起こして、今一度自分たちの有力性を示したいとかじゃないんですか? わたしのせいで協会の評価は駄々下がり中ですもんね?」
「ぐっ! ち、違うっ!! 断じてそんなことは……」
「あー図星ですか。もういいよ喋らなくて。あとでじっくり話しましょうね、犯罪者さん? わたしの生徒や弟子に手を出した事、牢の中で一生後悔させてあげるから!」
「ひっ!!」
あらあら、ちょっと魔力を込めて威圧しただけで腰を抜かしちゃいました。最近の魔法使いは弱腰ですねー。本当にエリートな方達なんでしょうか? 甚だ疑問です。
(まぁでも、この人達は誰かに唆されただけでしょうね)
魔法統率協会が自分たちの権威を落とすような事を率先して行う筈がありません。事件は十中八九この人達の独断。
ましてやわたしに喧嘩を売るような真似をあの人が許す筈がありません。あの人も理解していましたから。わたしの友人や弟子に手を出したら破滅させられると。
あれだけ脅されて、やる方がバカです。
「面倒な事を起こしてくれたものです。あとでオルドスさんには公式の文書で文句を言ってやりましょう」
部下の教育もまともに出来ないアホヤローと。可愛い女の子に乳臭いガキとかいうやつは引退しろー! 万年三位ー! と。
わなわなと怒りで震えるオルドスさんが目に浮かびます。
(でも、何も文句は言えないよね?)
今のあの人はわたしとの決闘で負け、大賢者には逆らえない。それにこれは協会側の不始末なんだから。
「では、行きますか」
元職員達を衛兵に引き渡し、彼らは一足先に牢へと連れて行かれます。すぐに取り調べを行いたいのは山々ですが、こっちはこっちでやる事があるのです。
「各所に散らばっている残りのキメラを殲滅します。まだ逃げ遅れている人もいる筈です。動ける者は隊列を組み、全員わたしについてきてください」
「「「はっ!!」」」
弟子に手を出そうとした魔物は一匹残らず葬り去ってあげましょう!!
ここまで読んで頂きありがとうございます!
これにて5章終了です。次回からは幕間で事件のその後について触れていきます。
2話ほど幕間が続くので挿絵の回は12月中旬に持ち越し予定。
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