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163.ファンクラブと王国新聞

 陛下の命令でフィルレスム魔法学院に特別講師として赴き、正式に教鞭を取る事になって二ヶ月余りが過ぎました。


「今日も朝からいっぱい働きましたね〜。いやーリベア無しでよく毎朝起きれてますね私。偉い!」


 初めはバタバタしていて大変でしたが、ようやく学院生活にも慣れ、こうして休み時間に一人で落ち着ける場所も見つけました。


 この調子なら、この先もうまくやっていけそうです。


「次の講義まで暫く時間ありますし、少しだけお昼寝でもしますか」


 講師は基本的に学院に住み込みです。

 それも当然の事で、魔法の研究などをするためには自宅より学院の方が都合がよいからです。


 その点、大賢者であるわたしの待遇は特別で、学院の敷地内ではありますが生徒や教師が住んでいる寮や部屋とは離れた場所に私用の部屋を用意してもらっています。


 ついでに侵入者対策もバッチリしていて、わたしの気配遮断も合わせれば、乙女の跡を追ってくるような不届者もいなくなるというわけです。


 陛下の配慮に感謝ですね。


 これのお陰で放課後は生徒達に囲まれる事がないわけです。

 まぁ時々は相手しますよ。真面目な子やわたしに過度な幻想を抱いていない子限定ですが。


 大賢者だからってなんでも出来たり、してあげたりするわけじゃないんですからね!


「ここは風が心地よいですねー」


 木々が生い茂る学院の中庭は、程よい風通しの良さで昼寝にうってつけです。大賢者であるこのわたしが、こうして外で昼寝をしているなんて他の生徒達には言えない秘密なのです。


「どう伝えるのが一番分かりやすいんでしょうかね〜」


 ポカポカの地面に寝転びながら今日の講義の事について思い返します。


 本日の講義内容は魔法式について。


 魔法式とは魔法の効果を発現させる為の設計図です。つまり使用者がどんな魔法を行使するか決めるものなのです。

 ただ難しい所もあります。それは魔力消費量と効果のバランス。つまり使用者の魔力残量にどれだけ余裕を持たせるかです。


 更には使用者がその魔法式の発動に必要な魔力操作が出来ない場合、又使用する魔法の属性と相性が悪い場合はそもそも魔法式として成立せず魔法が発動しないという問題もあります。


「わたしみたいな全属性使いは例外ですし、今まで魔法式について深く考えた事もありませんでしたから。リベアにも基本、感覚で使って覚えろって教えてきましたし」


 なので教え方が雑だった自覚はあります。いやほら、わたしは魔法式なんてなくてもほぼ無尽蔵の魔力を持っているので、魔力残量とかそんなの気にする必要がないんですよ。本当に困らないんです。


 しかし生徒達は今のままで満足しているでしょうか?


「そんなはずないですよねー」


 ここにいる生徒達は王国の未来を担う優秀な子達です。きっと大雑把な教え方じゃ嫌になっちゃいますよね。


 だからこそ生徒にはどうすればいいか? あーすればいい。こーすればいいんじゃないかと色々考えていたら次第に瞼が重くなってきました。


「ぐぅ……」


 眠りの妖精さんがわたしを呼んでいるからです。抗えません。

 わたしは妖精さんの誘いに乗ることにしました。


(ちょっとだけ、おやすみなさい……)


◇◇◇


「ティルラ様! ティルラ様起きてください!!」


「んぇ? なんですかこれ?」


 目が覚めたら周りには生徒達が集まっており、なにやら大騒ぎになっていました。


(え……? これってわたしが中庭で寝ていたから? もしかして倒れていたと思われた? というかそうでなくても、教員としても大賢者としてもお昼寝してた所を見られたのは生徒の模範として不味いのでは!?)


 これでクビになんてなったら、陛下に合わせる顔が……。


「えっと。み、皆さん。まずは落ち着いてください。わたしは決してお昼寝などしては――」


 胸に大賢者をモチーフにしたと思われる魔女のブローチを付けた一人の女生徒が、ここにいる者達の代表として前に出てきました。


「お昼寝はいいんです! ティルラ様が最近ここでよく寝ているのはみんな知っていましたし、ティルラ様の寝顔はとても可愛らしいので【大賢者様を見守る会】の皆で、ティルラ様がゆっくり過ごせる様、ここに人を寄せ付けないようにしていたんですから!!」


 このブローチはその会員の証です。とわたしに説明をしてくれました。

 当然わたしはパニックです。


「え、待って待て。めっちゃ情報量多いんですけど。そんなファンクラブあるのわたし知りませんよ? 人通りが少ないとは思っていましたが、もしかして毎日見られてたんですか? そんなの恥ずかしい」


 もう田舎に戻って引きこもりたい。


 ごめんなさいリベア。師匠には王都はまだ早かったみたいです。


「ううぅ、大賢者としての威厳が……」


「もうティルラ様! とにかくこれを読んでください!!」


 しょげるわたしに女生徒がずいっと渡してきたのは、この国の情報を一手に引き受け、その伝達を担う王国新聞でした。


『世紀の発見!! 大賢者ティルラ・イスティル。失われた神級魔法を復活か!? 王国魔法研究所、所長のリンズ・デルフォン氏に独自取材!?』


「はい?」


 そこにはなんともまぁ、頭の痛くなるようなタイトルがデカデカと付けられていました。


ここまで読んで頂きありがとうございます!


次回は偉い人に会いに行きます。


ブックマーク、評価、感想、レビュー、紹介、リンクなど、もろもろ全て歓迎致します! 


 皆様の一手間が更新の励みになります、どうぞこれからも宜しくお願いします!!


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