158.師と弟子
今日は比較的短めです。
「わたしもですよ。リベア」
「えへへ〜」
この表情を見れるのはこの世で私だけだと思うと嬉しくなって、私はまた師匠に飛びついてしまいます。
「リベアは甘えん坊ですねー」
「そんなことないです!!」
「そうですか?」
「そうです!」
師匠はくすりと笑って、私をぎゅっと抱きしめてくれます。ああ、師匠の温もりと香りに包まれると安心して力が抜けちゃいます。師匠成分が私の身体を満たして、幸せにしてくれるのです。
「師匠……師匠……!」
「はいはい。リベアは本当に可愛らしいですね」
「むぅ、子ども扱いしないでくださいー」
「そう言うところがまだまだ子供なんですよ」
「むー」
師匠は時々いじわるです。でもそんなところも含めて全部好きなんですけどね。
「ところで、師匠はこれからどこかに行く予定だったんですか?」
私が聞くと、師匠は少しバツの悪そうな顔をしました。珍しいことです。こういう時は大抵なにかあります。
「なんか隠してます?」
「……うーん、実はですね――」
弟子の前だからか、師匠は自分の悪行をつらつらと語り始めました。
簡単に纏めると王都に着いてからは、お城の一室で缶詰状態にされていたようで、そこで細かな打ち合わせと一部の生徒の名前と特徴、性格なんかを覚えさせられていたみたいです。
その結果頭がすごく疲れて休もうとした所、秘書の方が追加の書類を持ってきたのを見て、嫌になって逃げ出してきたとの事。
「ふむふむ、なるほど。それはとんでもねー奴ですね」
「はい。だから特に決めてなかったんですよね。適当にふらついてたら誰か知っている人に会って連れ戻されるかなって。まあ連れ戻されたくなかったから魔法を使ってたんですが、リベアにはバレてしまいました。けれど弟子に見破られるなら本望ですね。わたしも久々に会えて嬉しかったですし」
「ふむ……じゃあこのままデートですね」
私の一言に師匠は驚いたような顔をします。
「あれ? わたしの事を捕まえないんですか? いつもならそれはダメです! 今すぐ戻りましょうと言うべき所でしょう?」
なんですかそれ。私の真似をしてるつもりですか? それなら全然似てませんね。私が言ったらこう、気持ちの入れ具合が違います!
「今日はいいんですっ! それに悪いのは全面的に師匠の方なので何かあったら全部師匠のせいにします!!」
「わぁー、流石はわたしの弟子。実に最低な考えですねー」
師匠は呆れたように言いますが、その顔はとても楽しげでした。
「師匠の教育の賜物ですね! じゃあ行きましょうか。ニーナちゃんに会いに行く前に寄り道して観に行きたい所があったんです」
「あ、ほんとに行くんですね。まぁいいですけど」
王都に来たばかりの師匠は知らないようですが、最近街で話題になっている大道芸の一座がいるのです。なんでもその人達の芸はとても素晴らしいもので、皆を笑顔にする力があるとかなんとか。私もまだ見た事はありませんが、話を聞く限り師匠もきっと気に入るはずです。
「それではしゅっぱーつ! 師匠、手を!!」
「はいはい」
これはデートなので、手を繋ぐのを忘れずに私達は歩き始めました。
「デート! デートッ! 師匠とデートッ!!」
今はただ師匠と一緒にいられるこの時間を楽しみましょう!!
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