156.生徒の日常
鏡の前でクルッと一回転して自分の姿を眺めます。
うん、なかなか似合ってます!
「よし! 準備完了っと」
部屋を出て玄関に向かうと、丁度ヴァネッサが帰ってきていました。
「おうリベア。今から出かけんのか?」
「その予定です。ヴァネッサはどこ行ってたんですか?」
「日課のランニングと野暮用をちょっとな。あたしはこれから食堂で昼を食べるがお前も来るか?」
「うーんそうしたいのは山々ですが、実はさっき食べたばっかりで……」
「あーお前起きるの遅いもんな。それならしゃーねぇか」
うぐっ、反論できません。
「はい。また夕食の時に会いましょう」
彼女と別れ、私は街へと繰り出します。
◇◆◇◆◇
中央通りを歩いていくと、そこかしこに露店が並んでいました。
普段はお城を中心に放射状に広がっているのですが、この時間帯だけは少し様子が変わります。
「おぉ、久しぶりに来ましたがすごい人だかり……流石はお昼どきです」
ここは王都の中でも特に交流が盛んな区域で、上流階級から下流階級まで様々な人々が行き交っている場所なのです。
露店には新鮮な野菜や果物といった食料品はもちろんのこと、衣服やアクセサリー類など幅広く品揃えされていました。
フィルレスム魔法学院以外にも多くの学院が中心部に集まっています。なので制服姿の学生も見られました。
美味しそうな匂いに誘われて足を止める人もいれば、値引き交渉をしている人もいるようです。
私達のような平民の学生はお小遣いにも限りがあるので、こういったところで節約しているのでしょうね。
しかし、今の私はお金に関しては心配ありません! なんたってグラトリア家(特にリーナさん)からたくさんお小遣いを頂いていますし、寮に帰れば毎日三食付きですから!!
「ねぇ、そっちの少し食べさせて」
「いいよ。はい、あーん」
「ん」
「あ、ずるいぞ! 俺にもくれよ」
「あんたはダメよ。一人で食ってなさい」
「なんだよ。ケチだなぁ」
「ふふふ、お姉ちゃんったら」
賑やかな声が聞こえてきます。
しかし、こういう時一人だと少し寂しいですね。友達と王都の屋台を回るのは村育ちの私にとっては憧れで、もう何度かヴァネッサ達とも来ましたがまだまだ足りません。
欲を言えば師匠と……。はっ! また師匠の事を考えて。
「煩悩を払うにはやはりあれしかありません! いつもの通りに向かいましょう!!」
大通りを避け、脇道に入っていきます。
狭い道は港町での出来事を想起させますが、あの時の自分とは違うと言い聞かせます。
今の私は大賢者の正統後継者なんですから!
それに王都の中心街で怖い目に遭う事なんてそうそうありません。ここら辺は警備がしっかりしてますから。
「…………」
歩きながら考えます。
ニーナちゃんの用事の事です。
表向きは用事という事になっていますが、実態は出稼ぎに出ています。
(確か週末はいつもお店で働いてるっていってたよね? 貴族令嬢だけど今は学生の身分だから雇ってくれるって店が見つかって)
貴族という肩書きは何かと面倒です。揉め事が起きたら尚のこと。それでも了承してくれた店というのはとても良心的なのでしょう。
最近はそこで働いているとの事で、自分が貴族であるという事は店長さんにだけ話していると言っていました。
そもそも貴族令嬢が平民の店で働くなんて聞いたことがありません。他の貴族に見つかれば軽蔑の対象になってしまうでしょう。
(私やヴァネッサは家からの資金援助が多いからお金には困っていない。でも無理して入った男爵家や子爵家はその限りじゃない)
ニーナちゃんはいわゆる成り上がりの貴族で、家同士の横のつながりも薄く、他の貴族達から敬遠されていました。ヴァネッサは養子として引き取られたばかりで貴族としての自覚がありません。そして私は特別枠で入った平民。
根っからの貴族達が多く通うこの学院の中で、私たち三人は学院のはみだしものでした。
学院に在学するのも安くはありません。入学金だって必要です。
国が魔法使いを奨励しているので、お金に困っている家には貴族でもある程度の援助はありますが、それは平民のものに比べたら微々たるもの。
お金を持っている貴族から多く徴収するのは当然のことで、見栄を張るのが大好きな貴族達はこぞって寄付しますから。
そしてしばらく歩くと、目的地が見えてきました。
近くに来るや否や、早速恰幅のよいおばさんに声を掛けられます。
「リベアちゃん久しぶりだねぇ。この間はありがとうねー。ほんと助かったわ」
「あ、レリアナおばさん。そんな事ないですよ。魔法使いとして当然のことをしたまでです。他にも何か困った事があったらなんでも言ってくださいね。私に出来る事ならなんでもやりますから」
「ありがとうねぇー。ほんとうちの旦那より頼りになるわぁ」
ここで私は魔法使いとして、大賢者の弟子として善意のお手伝いをしていました。
レリアナおばさんと話していると他の奥様方もやって来ました。
「やあリベアちゃん。この間リベアちゃんが持ってきた薬がよく効いて息子の酷い腹痛が治ったよ。ありゃ一体どこで手に入るんだい?」
「それは良かったです。あれは私が調合したものでまだストックに余裕があるのであげますよ」
「ほんとかい!? そりゃ助かるよ。息子は病気がちでね。こればっかりはどうしようもないんだけどね……医者に見せようにも平民じゃお金がね……お礼は必ずするからね!」
「いえ、いいんですよ。困った時はお互い様ですから」
「うぅ……リベアちゃんは本当に良い子だね……こんな子がお嫁に来てくれたらあたしはもう何もいらないよ……」
残念!! 私の心はもう師匠のものです。
「ふふ、私は師匠と以外の結婚は考えられませんよ」
「ははっ、振られちまったね。こんな良い子に好かれる師匠さんはきっと世界一の幸せ者だろうね。ついでにこれも持っていきな。うちで採れた新鮮な作物だよ」
「わぁ! ありがとうございます!! 寮のみんなで頂きますね!」
「リベアちゃんこれも持っていきなー」
「あ、ありがとうございます! いいんでしょうか、こんなに頂いてしまって」
「いいんだよ。リベアちゃんはここにいるみんなの恩人であり孫みたいなもんなんだから遠慮しないで受け取ってちょうだい」
「はい! では、お言葉に甘えて頂戴いたします!!」
次々渡される野菜を魔法袋の中に入れていきます。
「また来ますねー」
その日はお礼に貰った果物や野菜やら持って寮に帰り、食堂の調理人さん達に渡して夕食の一品にしてもらいました。
すごく美味しくて今日は本当に幸せな一日でした。
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