144.試験結果
――そして数日後、ついに運命の結果発表の日が訪れました。
合格者の発表が行われる学院前の広場には多くの人が集まっています。
(やはり上位貴族の姿はありませんか……)
貴族というものは体裁を気にする生き物なので、こういった平民向けのイベントに顔を出すようなことはまずしません。
基本的には屋敷で働く使用人やメイド、執事などが主人に代わり見に来ているようです。中には一人で来るような変わり者もいたり、家族で来たりしている者もいるようですがそれは少数派です。殆どの貴族は自ら足を運ぶような事はしません。
自分で行くような奴は、自信がないか、代わりに行ってくれるような信用に足る人物がいない、もしくは卑しい事だとでも思っているのでしょう。
それが古来から続く、貴族の正しい在り方だと信じて疑わないのだと思います。
だからこそ『傲慢知己』というのが、民衆から見た一般的な貴族の印象になってしまうのも無理ありません。
わたしはソフィーやケイティなどの変わり者で人が良い貴族を知っているので、そういう人ばかりではない事を知っていますが、彼等をよく知らない人からすればそんな風に思われても仕方ないと思ってしまいます。
(根本から変えないと、一生貴族と平民の溝は埋まらないでしょうね……)
ちなみになぜ合格発表が平民向けのイベントかというと、王都には魔法学院の他にも様々な学び舎があります。そこでは平民向けに作られた文字の読み書きや計算の仕方を教えたりする学院も存在するのです。
実際貴族より平民の方が数は多いので、その分平民向けの教育機関の方が多いんですよね。
そういった機関の合格発表も一律でこのような形ですると定められているので、貴族からしたら平民向けに思え、くだらないといった認識になるわけです。
でもソフィーによると平民の教育に力を注いでいるのは王国が支援をしている場所だけで、他はほとんど力を入れてはいないらしいです。
他国ではそもそも教育しないか、元々優れている人だけを選定し教育する方針をとっているとの事。まあ人を育てるのにもお金はかかりますから。王国と同じくらいの国土を持つ帝国はそんな感じで、神聖国などは教育機関の殆どが信仰に関するものばかりです。
いやー、そう考えるとわたし達は恵まれてますねー。
「――王国バンザーイ!」
思ったより声が出たせいか、隣で読書していたソフィーがビクッとして本を落としてしまいました。
「……急にどうしたのよ、愛国心なんかに目覚めちゃって気持ち悪い」
「王国って素晴らしいなーって改めて思いまして」
「そう。それは良い事ね。でも今は目の前の事に集中するべきではないかしら? もうすぐ発表の時間でしょ」
「ですね。リベア、そろそろ時間が近いのでボードが見える所に行ってきなさい」
「はい、師匠!」
「フィアもお供します!!」
二人は返事するや否や、人混みの中へと消えていきました。
「それにしても人が多いわね……いつもこんな感じなのかしら?」
「そういうわけでもないみたいですよ」
「というと?」
「これはケイティから聞いた話なんですが……」
どうやら、今年の試験はかなり難しかったらしく例年の倍近い人数が集まっているらしいです。記念で受験した人も多くいるそうだとか。
ケイティは魔法使いとしてもそこそこ優秀なので、実家に推薦状が届いたようですが一蹴したようです。あの子らしいですね。
「わたし達ももうちょっと前に移動しますか」
「そうね」
受験番号が書かれた紙を持って集まってきた受験生達の表情には、緊張の色が見え隠れしています。
そんな中でもリベアは特に落ち着いていて、まるで自分の番号がある事を確信しているかのように堂々としていました。
結果は定刻になれば、合格者の番号がボードに浮かび上がる仕組みとなっています。魔道具の一つであるそのボードは特別な素材で造られており、その製造方法はごく一部の人にしか伝えられていないそうです。不正防止ですね。
(ま、わたしくらいになりますと見ただけで構造が理解できちゃうんですが)
自分の番号が上にあればある程、順位は高くなります。つまりうちの子は下から探していくよりも上から確認した方が早いというわけですな。
「んふふっ」
「……ニヤニヤしてて気持ち悪いわよ。気持ちは分かるけど」
そしていよいよ結果が発表される時刻となりました――。
◇◇◇
結論から言うと、リベアはあっさりと合格しました。上からニ番目の成績です。
「一位は予想通りでしたねー」
「分かってはいましたけど、アリスちゃん頭いいです!」
一位がこの国のお姫様で、ロフロス村にも一度やって来たユリア様。二位が貴族達を抑えてリベア。三位が公爵家のご令嬢だそうです。
「本当によく頑張りましたね、リベア。合格おめでとうございます!!」
「ありがとうございます、師匠!!」
頭を撫でてあげると、気持ちよさそうに目を細め身体を預けてきました。可愛い。
「でも師匠さっきは本当にびっくりしましたね。まさかアリスちゃんがお忍びで来てるとは……」
「護衛の騎士や平民に扮装した兵士はしっかりいましたけどね」
「アリスちゃんも気付いてて、鬱陶しいって言ってました」
「王族ですからねー。護衛を付けないという事は陛下が許されないでしょうね」
「はい。だけど久しぶりにアリスちゃんと話せて楽しかったです」
「普通は王族と話せる機会なんてそう何回もないんですがね〜……」
向こうから話しかけてきたわけですし、ユリアではなくアリスとしてだったので問題ない筈です。
こうして、リベアの魔法学院入学試験は無事終わりを迎えたのです。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
前編は残り1話です。
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