143.試験当日
翌朝。リベアを見送る為、学院の正門前に到着したわたし達はその大きさに圧倒されていました。
「ふわああああっ! 凄いですっ! もしかして私たちが住んでる村よりも大きいんじゃないですか!?」
「流石は王国最大の学び舎ですね」
「ここが王立魔法学院……私には関係ないと思って近くまで来たことはなかったけど、遠くから見るよりもずっと大きいわね」
「リベアさん凄いですね。こんな大きな学校で魔法の勉強ができるなんて……フィア感動しました!」
それぞれ思い思いの言葉を口にします。
ちなみに大賢者のわたしだけ、正体バレして騒ぎにならないよう全身を覆うローブを着ており、怪しさ全開の格好でした。
事実、ちょっとの間リベア達と離れていただけで衛兵さんに声を掛けられる始末。
最初は顔を隠すだけでいいのではないかと提案しましたが、万が一バレた時、王都が大混乱になって試験が出来なくなる恐れがあるので却下されてしまいました。
そんな大袈裟な……と思うかもしれません。実際わたしもそう思っていましたが、ソフィーから先代――師匠が王都で起こしたとされる逸話を聞いて考えが変わりました。
なんでも、王様に用があった師匠が変装もせずにひょこり訪れただけで王都中がパニックになったとかなんとか。
流石に誇張されているとは思いたいですが、師匠の事ですしね。案外本当かもしれません。だから彼女の言う通り、面倒事は出来るだけ避けたいので大人しく従う事にしたのです。
それに、それだけ『大賢者』となった者は人々から尊敬と畏怖の視線を集めているということですからね。
一応、魔法で認識阻害する事もできましたが、それだとリベアや他の知り合いにもわたしが誰だが分からなくなるので、今回のような場合には適さないと判断しました。
魔法も万能ではないんですよね。
「フィアさん。まだ合格したわけじゃないんですから感動の涙は取っておいてください。だけど落ちる気なんてさらさらないですよ!! この日のために師匠とソフィーさんと一緒に猛勉強したんですから!!」
感動しているフィアの前に、胸を張って自信満々といった様子のリベアが立ちます。
やる気十分な弟子に、わたしは師匠として試験前最後の声援を送りました。
「ええ、わたしの弟子として存分に力を発揮してきなさい」
「はいっ! 大賢者の弟子として絶対1位をとってきます!!」
「頑張るのよ。あと分かんなくても最後まで諦めないこと。約束よ?」
「頑張ってくださいね、リベアさん!!」
二人の応援にリベアは嬉しそうに、はにかみます。
「はい!! 二人とも毎日遅くまで付き合ってくれてありがとうございました。本当ならミーアちゃんにもお礼を言いたかったんだけど、いないんですよね?」
「ミーアさんはカルラさんと一緒に王都の店を回るそうです。なんでもシーヴ婆に頼まれたお使いを済まさなきゃいけないそうで」
「ならしょうがないですね! じゃあ行って来ます!!」
彼女は意気揚々と校舎に向かって歩き出します。
そして、正門前で振り返ると笑顔で手を振ってくれたので、こちらも手を振り返すことにしました。
(実技と筆記は問題ないとして、作法は免除……あとは面接官の運次第かな)
こればっかりはどうしようもありませんね。良い人に当たるよう祈るだけです。
ああでも、平民嫌いな貴族の面接官に当たった日には目も当てられませんね。絶対意地悪されます。
「……いてっ、何するんです?」
そんな事を考えていたら、隣を歩く友人にコツンと頭を叩かれました。
「ティルラ。あんたがこういう時に変な事を考えると大抵当たるんだからやめなさい」
「流石ソフィー。わたしのことよく分かってますね。頑張って考えないようにします」
「そうしなさい」
考えない。考えない……ぬぬぬ、難しい。
そんな感じで、頭を唸りながら歩いていると前方でなにやら騒がしい声が聞こえてきました。
一体なんでしょう? 何か事件でもあったんでしょうか。
「あれ? ティルラ様、お嬢様。あちらですごい人だかりが出来てますよ」
フィアに示された方を見るとたくさんの民衆がある一つの馬車の周りに集まっており、衛兵さんが下がるよう呼びかけていました。
「そうですね。一体なんの……」
「どうしたの」
馬車には王家の紋章が描かれていました。
「…………下手に関わると碌な目に遭わないので、ここは無視して行きましょう」
「それがいいわ。大賢者ティルラ・イスティルがいるってバレてしまうし」
「で、ですね。回り道して行きましょうティルラ様、お嬢様」
こうしてわたし達は騒動に巻き込まれないよう、その場からそっと離れるのでした。
◇◆◇◆◇
その日の夕暮れ。ミーアさんと合流し、再び学院前に戻ってきたわたし達はリベアが出てくるのを今か今かと待っていました。
わたし達の他にも、護衛を引き連れた貴族などの姿が正門前にはちらほらありました。
(もう来てもいい頃ですけど……)
試験は少し前に終わったみたいで、続々と受験生達が帰ってきてはいますが肝心のリベアの姿はまだ見えません。
じれったいなと思い始めた時、遠くからこちらへ歩いてくる少女が見えました。
リベアでした。しかし一人ではなく、小麦色の肌をした活発そうな女の子を連れており、二人で楽しそうに談笑しながら向かってきています。
「あっ!!」
リベアはわたし達の姿を見つけると飛んできました。手を振りながらすぐさま駆け寄ってきました。
その表情は晴れやかなもので、きっと良い結果だったのだろうと容易に想像できます。
わたし達も手を振り返すと、二人はわたし達の前までやって来ました。リベアの隣にいた女の子がぺこりと頭を下げます。
「ただいまです、師匠ー!」
「お疲れ様です。試験はどうでしたか?」
「それはもうバッチリです! 面接以外は……」
「そうですか。帰ったらゆっくり話を聞きましょう」
「はい!!」
ともあれ、こうしてわたし達の役目は終わったので後は結果を待つのみとなりました。
「じゃあ帰りましょうか」
「はい師匠! またねヴァネッサ!!」
「ああ、合格したらまた会おうぜ! 怪しい格好をしたリベアの師匠も、またな!!」
「怪しっ――はい。是非うちのリベアと仲良くしてください」
「おう!」
早速良いお友達が出来たようで師匠は安心しました。これならわたしのようにぼっち生活とはならなそうですね!
心配するとしたら平民と貴族問題でしょう。今の子は単に貴族としての意識が低く、身分の差を理解していないだけかもしれませんし、リベアが平民だという事も知らなかったのかもしれません。
口調からして、成り上がりの貴族、もしくは養子の可能性が高いですね。
貴族と平民の禍根はとても根深いものですから……。
「ま、どちらにせよ仲良くしてくれるならそれに越した事はありませんね」
そうして、その日は盛大なお疲れ様パーティーをグラトリア家で執り行うのでした。
――そして数日後、ついに運命の結果発表の日が訪れました。
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