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139.【正統後継者】受け継がれる意思

「師匠とお揃いのローブに帽子……ありがとうございます師匠! 一生大切にしますっ!!」


 きらきらと目を輝かせて、新調したローブに袖を通し、帽子を被るリベアはとても嬉しそうでした。


「喜んでくれたようで良かったです」


 あれからしばらくリベアを愛でた後、わたし達は夕食を取り、今は師匠(わたし)からのプレゼントに弟子(リベア)は大興奮していました。


「あの人の若い頃に流行していた、今となっては古臭いデザインを好むとはリベアも中々変わっていますね。いくらわたしと同じといっても、今時似たようなデザインで若者が好きそうな物は他に幾らでもあるでしょうに」


「いいえ、これがいいんです! だって師匠と同じ物なんですから!! それに師匠が外套の下に短いスカートを履いているように、私もおしゃれ出来る所で改造すればいいんです!!」


「リベアが気に入っているならいいんですけど……」

「はい!!」


 本音を言えば、この天使のような弟子にもっと可愛いデザインの外套を着せたかったのですが……本人が喜んでいるならまぁいっかと納得するのでありました。


(しかし、リベアがこんなにも喜ぶなんて。やっぱり女の子なんですね)


 自分の時はどうだったかなと思い出そうとしましたが、思い出せませんでした。


 というより、よくよく考えればわたしの思春期なんて殆ど修行で終わっています。


 服なんて支給されていた物をただ着てればいいと思っていましたし、今のリベアみたいにお洒落に気を使った記憶もありません。


 年頃の少女としてはあるまじき行為です。

 今更ながら、当時の自分を殴りたくなりました。


 まぁ、それもこれも魔王軍が攻めきてたからなんですけど。命の危機が迫っているのにおしゃれなんて出来ませんし、そんなクソ魔王を倒してくれた勇者様には万歳ですけど、わたしと師匠の研究をパーにして追放してくれた事に関してはバーロと言ってやりたいです。


(研究の成果に関しては、陛下の許可を得て結界魔道具という形で一応はお披露目できましたし、それでよしとしましょう)


 大賢者の実績作りに利用された感は否めませんが、結果的には良かったと思います。


 実際、生き残りの魔族や自然発生する魔物による被害件数は魔道具のお陰で激減していますし、何より国民からの受けが良いとソフィーが言っていました。

 

 それというのも、魔族の侵攻によって破壊された街の復興作業の際、結界魔道具があれば安全だと陛下やグラトリア家が宣伝した結果なのですが。


 遠くない未来には国中に結界魔道具が設置されて、人々が安心して生活できるようになるかもしれませんね。


「ところで師匠。これ全部で幾らくらいかかったんですか?」


 そんな事を考えているとリベアが尋ねてきました。


 その顔からは申し訳なさを感じます。きっとお金の心配をしているのでしょう。


 確かに今回の費用はかなりの金額になりました。

しかしそれは必要経費として割り切っています。


 大事な愛弟子の為ですからね。


「気にしなくていいですよ。これはわたしからの贈り物ですので。――それともう一つリベアに渡したいものがあります」

「もう一つ……? あ! もしかして私の」


 彼女も察したのか、期待に満ちた目でこちらを見てきます。

 

 そんな目で見られるとすぐに渡してあげたいのですが、まだ渡すわけにはいきません。


 大賢者として、わたしは彼女に話さなければいけない事があるのです。


「はい、リベア専用の杖です。わたしが一から作りました。ですがそれを渡す前に一つ。今から言うことをよく聞いてください」


「……はい!」


 真剣な表情で見つめるわたしに、リベアも緊張しているようです。ごくりと唾を飲み込みました。


「これは師匠……シャルティアの言葉ですが、もしわたしが正式な弟子を作ったらその子に『大賢者」とは何かを伝えるようにと言われました。ちょっとした儀式みたいなものです。わたしも師匠から杖を受け取る時に教わりましたから。――そして今から話すのはシャルティアの言葉であり、歴代の大賢者達が受け継いできた教えというやつです。いわゆる大賢者の教訓ですね」


「はい……大賢者様達の教えを私に……お願いします」


 緊張しながらも、しっかりと聞く姿勢を取るリベア。


「ではリベア。よく聞いてください。魔法は人を傷つけるために存在するのではありません。誰かを守る、助けるために存在するのです。決して人を貶めるために使ってはならないと初代の大賢者は言い残しました。だからリベア、約束してください。魔法を悪用しないと。人を幸せにするためだけに使うと。それが守れるならこの杖を渡しましょう」


「…………はい、私の名に誓って約束します! 私は大賢者ティルラ・イスティルの弟子であるリベア・アルシュンの名に懸けて、この力を人々のために使います!!」


「良い返事です。ならばこれを受け取りなさい。これがリベアだけの力になるでしょう」


 そう言って、収納魔法で取り出した杖を手渡す。


「これが私の杖……」


 受け取ったリベアはそれをぎゅっと握りしめると、決意を込めた眼差しでこちらを見ました。


「はい。そして同時にあなたが見習い弟子から大賢者の正統後継者になった事を意味します。ちょうどわたしも国や民に新生大賢者として認められた事ですしね。だからこれから魔法統率協会のアホ共に絡まれたらこう名乗りなさい。私は大賢者ティルラ・イスティルの弟子であり、()()()()()であるリベア・アルシュンと」


「――っ、はい!! 私は大賢者の正統後継者であるリベア・アルシュンです!」


「ふふっ、可愛らしい後継者が出来たものです。それじゃあ明日からまた頑張りましょう」

「はいっ!!」


 と言うわけで、明日から座学にわたしも加わりソフィーと二人体制でリベアをビシバシ鍛え、受験に向けて知識を詰め込ませていきたいと思います。


 大賢者に就任……称号を得たばかりなのに、もう次の後継者がいる事が知られれば、わたしたちの事をよく知らない貴族に変に勘繰られそうなので当分愛弟子(リベア)の存在を世間に公表する気はありません。


 それがリベアの為でもありますから。


(もしかしたら、師匠が死の直前まで後継者(わたし)の存在を隠していたのも、案外今のわたしと同じ理由だったのかもしれませんね。わたしの場合、歴代の中でも最も天才とされた大賢者の弟子として世間から否応でも注目される事になっていたでしょうから。心身的負担がヤバかったと思います)


 まあ、なんにせよ。こうしてわたしたちは新たな一歩を踏み出すことになり、受験合格に向けた最後の追い込みが始まるのでした。

ここまで読んで頂きありがとうございます!


あと6話ほどで前編は終了です。


「面白い」

「続きが気になる」

「リベア可愛い!」


と思ったら、広告下↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると嬉しいです。


感想も待ってます!

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