132.ボクっ娘貴族と告げ口賢者
クリスマス更新。
「――というわけで、わたしは今大賢者なんですよ」
「へぇー。あのティルラがねぇ」
弟子を取っていた事にも驚かれましたが、何よりわたしが大賢者になっていた事に驚きが隠せない様子でした。
「あのってどういう意味ですか?」
「いや〜、自分の胸に手を当てて深く考えてごらん」
はて? どういう事でしょう?
ケイティに言われた通り、なだらかな自分の胸に手を当て考えてみますが……思い当たる節なんてありませんね。
「うーん、何も思い浮かびませんね〜」
「あーこいつは確信犯だな」
「それで、ケイティにはわたしの手伝いをしてもらいたいのです」
「あ、誤魔化した」
「手伝いをしてもらいたいのですが?」
尚も詰め寄るわたしに、観念したとばかりにケイティは両手を挙げます。
「はいはい分かったよ。だからそんな怖い顔しないで。でも少し不思議。ティルラなんでも出来るじゃん。それなのに最後の素材を手に入れるのは厳しいんだ?」
「はい。今までと違ってわたし一人で行くのは無理があって。それに目的の物も高級素材なので信頼できる相手とじゃなきゃペアなんて組めませんよ。仮に欲に目が眩んで後ろから襲われでもしたら大変ですから」
その点ケイティなら信用できますし、私が困った時に助けてくれる人だと知っています。
仮にわたしに何かあっても、ケイティなら自分で考えて行動できるので足手纏いにもなりません。
貴族である事を抜かせば、今回の素材採集に一番適した人物です。
「なるほど、嬉しいね。それでボクの所に」
「そういう事です。お願いできませんか?」
話を全て聞き終えたケイティは、腰に手を当て、その長い蒼髪をゆらゆらと揺らしながらわたしを見上げるようにして満面の笑みを浮かべています。
「んー、どうしよっかなぁ。私ってば今自宅軟禁中だしー? 勝手に家を抜け出すわけにはいかないよね。でもそうだなー報酬とかがあればなー?」
ちっちゃいくせに小生意気な所は昔から変わってないようです。顔が整っている事もあって、その煽りはかなりイラっと来ます。
でもわたしは大賢者。とても心が広いのです。
「ケイティの錬金術が必要なんです!」
「んー」
「お願いしますケイティさん! 道中の素材は全部あげますから!!」
「んんんんん~」
「ケイティ様!!」
「…………もぅ分かったよぉ。そんな顔されたら断れないじゃん。ボクが一肌脱いであげるよ!」
うっざ!
「やった!! ありがとうございます!!」
「わひゃ!?」
もう演技しなくていいのに思わずケイティの手を握ってしまいました。
「あ、すみません。嬉しくてつい。でも本当にありがとうございます」
だって本当に助かったんですから。断られてたら冒険者ギルドに行って依頼を出すしかありませんでした。冒険者って魔法統率協会とは別の意味で野蛮な人が多いから嫌なんですよね。
それに会ってすぐの人と強固な信頼関係が結べるとは思えませんし、元より受けてくれる人がいないような気がします。
「ちょ、ちょっと、ティルラ近いって」
あらら。ケイティが顔を真っ赤にして俯いてしましました。
まぁ確かにいきなり手を握られたらびっくりするかもしれませんね。わたしも気をつけないといけません。
あれ、そういえば初対面で胸を揉んでしまったリベアはそんなに嫌がってませんでしたね。
港町でもシーヴ婆と会話した時にもわたしの顔がいいって言ってましたし、もしかしなくてもリベアはわたしに一目惚れしたんでしょうか?
だとしたら嬉しいですねー。帰ったらいっぱいぎゅってしてあげましょう。それが健全な師弟関係と聞かれたらどうかと思いますけど。
「ティルラ……離して」
「おっと、すみません」
いつの間にかリベアの事を想いながら、ケイティを抱きしめていました。
彼女が消え入りそうな声で「離して」って言ってくれなかったら大変な事になってましたね。わたしがリベアに殺されていました。
危ない、危ない――はっ! なんか殺気が……。
「いいよボクたち友達だし。あれティルラどうして震えてるの?」
「なんか悪寒がして……」
「そう? 暖房つける?」
「お構いなく。それより抱きしめてしまいすみませんでした。ケイティはわたしとソフィーの一個下ですし、昔と変わらずちっちゃくて可愛らしかったのでつい」
「おい! ちっちゃいは余計だ! これでも身長伸びたんだからな!! 聞いてるのか!!」
「可愛いって言うのは許されるんですね」
「っ、うるさい!!」
つま先立ちでぴょんぴょんと跳ねるケイティは、それはそれは可愛らしいものでした。
「あははごめんなさい」
「全くもう。でもそうだな、ティルラが言う通りボクは一個下。という事は今年で15歳だ」
「え?」
「だから! 15歳になったんだよ! 背が伸びて大人っぽくなっただろ?」
「……」
「なんで黙るんだ!!」
だって、ねぇ。こんなに可愛い子がフィアと同い年って言われてもねぇ。色々説得力がないですよ。わたしより胸ないですし。
言ってしまえば、フィアを筆頭にリベアやソフィーという周りが化け物揃いなだけで、わたしは平均よりもすこーし、すこーーし控えめなだけですしね!
「おい胸を見るな、胸を!」
「ハイ、ソウデスネ。大きくなりました。貴族として結婚を考える歳くらいには」
「うぐっ」
おや、これはクリティカルヒット。
「お見合いの方はいいんですか?」
「ほんとはダメなんだけど……退屈だったし、ティルラの頼みだからいいの。男より女友達の方が大事だしね……ん? なんでボクがお見合いしてるって知ってるの?」
「あ」
しまった。口が滑った。ここは知らない体でいくべきでした。
「まさかボクの居場所を両親に教えたのって……」
「知りません知りません。なんの事を言っているのかまったくわかりまーせん」
逃げるが勝ちです。わたしは窓を開けて、サッと外に飛び出します。
「あ、こら! 待てーティルラー!!」
当然のように窓を乗り越えて、部屋着のまま追ってきたケイティの戦意を削ぐべく、わたしは彼女に地獄の行き先を教えるのでした。
「わたしたちが向かうのは【奈落の平原】です。準備は怠らないでくださいねー。また明日の朝来ます」
「へ?」
それを聞いた途端この世の終わりのような顔をして足を止め、その場に座り込んでしまうのでした。
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