130.もう一人の幼馴染
あれから数日。わたしは国中を目まぐるしく駆け回って素材集めに邁進していました。
村から街へ。街から森へ。森から山へ、海へ、再び近くの街に戻ってきてからは、珍しい魔晶石があると噂の遺跡に潜ったりと。それはそれは忙しい日々でした。
その途中、命知らずな盗賊に遭遇したり、何やら困り事を抱えていた老夫婦の手助けをしたり、スランプで悩んでいた劇作家さんのお手伝いなんかもしましたね。
劇の脚本を書くのは思った以上に楽しくて、本来の目的を忘れてしまいそうになった程です。
わたしって、もしかしたら文才があるのかもしれませんね。老後はリベアと一緒にフィクションを書いてみるのもいいかもしれません。
「それにしてもここは静かですねー」
古代の時代に造られたとされる遺跡の内部は、地下だからか、とてもひんやりしていて落ち着ける場所となっており引きこもるには最適でした。いや、別に引きこもろうとか思ってませんけど。
「古代の人って、頭が良かったんでしょうか? それとも馬鹿だったんでしょうか? どちらかでしょうね」
上を見上げますと壁や天井には何やら紋様の様な絵が描かれています。近くにいた学者さんみたいな風体の男性に話を伺うと、この奇妙な絵は古代人の文字だそうです。
「ま、僕もただの遺跡巡りが大好きな一般人だからあまり強くは言えないけど、この絵はなにか意味があると思うよ!」
キラーンと眼鏡を光らせてそんな事を言われましたが、わたしとしては意味なんてどうでもよかったりします。
だってそれが何を示しているのか、素人のわたしには分かりませんし、興味も湧かないからです。本物の偉い学者さん達からすれば貴重な物なんでしょうけども。
「そんな事よりあなた一般人だったんですか。すごい紛らわしい格好してますね」
丸眼鏡に冒険家みたいな服装。手に拡大鏡を持っていたら誰でも勘違いすると思います。
「はははっ、よく言われるよ。こうして遺跡にやってきた人達に適当な事を吹きかけて感心させるのが最近の趣味なんだ」
わぉ。くずぅー。
「クソみたいな趣味ですね。ちなみに今まで何人の人が話しかけてきましたか?」
「いや、話しかけてきたのは君が初めてだよ。どうもみんな僕のことを胡散臭く思ってるらしくてね。誰も話しかけてくれないんだ」
実際胡散臭いし、くそ面倒なので話しかけないのが正解ですね。
「その話を聞くと、あなたに声を掛けたわたしが馬鹿みたいじゃないですか」
「はははっ! 違いない」
「うふふ、そうですか。わたしは馬鹿なんですかー……」
軽快に笑う男性とは反対に、笑顔のままわたしの眉根は上がっていきました。
「おっとレディ。ちょっと冗談が過ぎたみたいだ。ここには何かを探しに来たんじゃないのかい? お詫びに何か教えるよ。古代文字には詳しくないけど、この遺跡の事ならある程度わかっているからね」
おや、分かってますねぇ。この男人。
「それなら純度の高い魔晶石が見つかる場所を教えてください」
「ああ、それなら……」
◇◇◇
遺跡の奥に行くと横穴があり、そこから採掘場へと続いています。
カン、カン、カンと岩石を削る音がよく響きました。
男性に教えられた通りの場所を掘ると、確かに純度の高い魔晶石が簡単に出てきました。
「ほいっ。一個回収です」
魔晶石の用途は沢山ありますが、一般的には主に魔道具を動かす原石として使われる事が多いですね。
今回は素材を加工する際の触媒として使う予定です。その為、出来るだけ純度の高い魔晶石を探していました。良い魔晶石が手に入ればそれだけ錬金の成功確率がグッと上がりますからね。
(今はロフロス村を出発してからだいたい二週間くらいですかね。不眠不休で活動したお陰で必要な素材は殆ど集まりましたね)
サウスコラに立ち寄った際、ソフィーに会って事情を説明すると帽子の素材である“サラマンダーの鱗”は彼女の伝手で手に入る事が分かりました。ついでに代金も彼女持ちで。
『別に、貴方の為じゃないわ。リベアちゃんの為だから』
『はいはい、分かっていますから。ありがとうございます』
『ちょっと、何よその態度! もっと感謝してもいいんじゃない?』
『してます、してます。すごく感謝してます。ソフィー様アリガトウゴザイマス〜』
『なんでそこ棒読みなのよ!!』
ソフィーを揶揄うのはやはり楽しかったですね。
もう一つの高級素材である“古代ドラゴンの牙”は、元冒険者だった老夫婦が若い頃に討ち取ったドラゴンの牙が残っているそうで、もう使い道もないからと譲っていただきました。
いい事をしたら、いい事が返ってくるって本当なんですねー。
退治した盗賊も名のある悪党だったらしく、冒険者ギルドから討伐料もたんまり貰えましたし。
「魔晶石はこれくらいでいいでしょう」
手に入れた魔晶石を【次元収納】へと仕舞い、遺跡を後にします。
これで残す素材はあと一つとなりました。
「ふぅ……あまり気は進みませんが最後の素材は一人では少しキツイ所にありますし、それなりに戦えて錬金術師としての腕も良い彼女を誘ってみますか。ソフィーと仲直りしてから、一度手紙で近況を知らせましたが結局返事は来ませんでしたし、どうせ見てもいないんでしょうけども」
錬金術師である彼女と最後に会ったのはソフィーと3人で会った三年前の夏でした。彼女はかなり自由な子なので少し散歩してくると言って、1ヶ月帰ってこなかった事もざらにあります。
今も家に居るか分かりませんが行ってみる価値はあります。
「なにせ、わたし杖の作り方しか知りませんしね」
手に入れた素材を無駄にしない為にも、彼女の協力は必要不可欠なのです。
「ソフィーみたいに怒ってないといいですけど」
会うのは本当に久しぶりです。
彼女と初めて出会ったのはソフィーの少し後、友人……この際幼馴染と言っても差し支えはないですね。
わたしとソフィーと彼女は、幼い頃よく僻地で遊んでいましたから。
「少し、楽しみですね。ソフィーも暫く会ってないと言っていましたし」
わたしのもう一人の幼馴染。
彼女の名前はケイティ・スレミアン。ソフィーと同じく貴族に席を置く天才少女です。
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