124. 【受験まで残り2ヶ月】素材集め 2
意気揚々と家を出発したわたしは、街道をのんびり歩きながら採集する素材について考えていました。
「やはり杖の素材から集めるのが適当ですよねー。帽子や外套の素材なんかは、魔獣を狩らなければいけないので……よし、決めました! そっちは後回しにしましょう!!」
めんどくさい事は後回し……じゃなかった、必然的に魔獣との戦闘が多くなると予想される帽子や外套を避け、まずは魔法使いの必需品といえる杖の素材を集めることに。
手のかかる魔獣討伐の方を先に済ますっていうのも考えたんですが、サラマンダーやドラゴンなどの上位魔獣を相手に、わたしだけで挑むってのは流石に……いや、でも師匠は一人で行ってましたね?
ならわたしも……いやいや無理でしょ。師匠ほど鍛えてないから体力が持たないし、あまり自分の力を過信するのもよくありませんから。
国王様にでもお願いして腕利きの兵士を……ってそれも無理な話か。
聞くところによると、今王宮はわたしが全属性の魔法を使えることを正式に国から公表した事で、各国各所から問い合わせが殺到してるらしく、その対応に追われているらしいです。
本気で頼んだらあの人達は手助けしてくれそうですが、王族相手に借りを作るのも怖すぎますからね。行ける所までは自分の力でなんとかしましょう。
「幸い、杖の素材は“大樹の枝”以外は簡単に手に入りそうなので良かったです。ま、その大樹の枝が大変なんですけども」
【次元収納】から師匠のメモを取り出し、目的の場所を確認。
汚い字ですね。わたし以外の人がみたら古代文字ですよ。
「んー全力で走って三日、くらい……?」
かなり大雑把に、地形の特徴や入り口などの説明が書かれており、地図と照らし合わせてみると、大体ここら辺といった感じで、赤い丸で囲まれた印がされていました。
「屋敷を出る時、師匠の殴り書きのメモ束も持ってきて正解でしたね。これに限らず様々な研究資料や見本の魔道具を持ってこれたお陰で、リベアにも色々教えれましたし。オルドスさんの目もありましたから持ち出せる物には限りがありましたけど、見える所以外の物は全部持ってこれましたからね」
数年間屋敷に住んでいたわたしでも把握しきれないほど、師匠の屋敷には様々な仕掛けや隠し通路が施されていました。わたしが師匠に教えてもらった仕掛けや通路もそのごく一部でしょう。
「あの人、自分で仕掛けた罠を忘れて死にかけてましたしね……」
あまりにもヤバすぎる罠は、わたしが改良してかなり痛いけど、絶対死なないタイプの罠に変更しておきました。わたしだって間違って死にたくないですもん。
そういう生死に関わる問題は、半年くらいして罠作動の刻印に、師匠が非対象者を追加登録した事によって解消しました。師匠が死にかけた次の日ですね。
え、なんでそんな簡単な事を半年間もしてこなかったかって? そりゃ師匠もわたしも「たぶん死なないし、めんどくさいからいっか」ってな感じになってたからですよ。本当に死にかけるまでは。
「置き土産に屋敷全体の罠作動を担う刻印に、かなりの魔力を注いで起動しておきましたから、調査はさぞ難航しているでしょうねー。ざまーみろです。仮に調査を終えても、いい物が数点あるだけで目当ての物はなーんにも手に入らないですよーだ!」
どうせわたしが居なくなった後で、魔法統率協会の人が調査と称して、師匠の遺産を漁りに来る事は分かっていましたから、屋敷にはガラクタしか残していません。
調査の過程で、屋敷の罠により怪我人、最悪死傷者が出るかも知れませんが、それはわたしの預かり知らぬ話。
それに、彼らはエリートなのでわたし如きの罠では死なないでしょう。
「とにもかくにも、材料集めといきましょうか。身体強化発動!!」
◇◇◇
家を出てから数時間程走った所で、第一の目的である【ルスト樹海】の入り口に到着しました。ここからさらに奥深く進みます。
「師匠はわたしがここに来るまでの時間で、目的地に着いてたっていうからとんだ化け物ですよ。人間やめてますね」
地図を見ながら慎重に進んでいるという事もあるんでしょうが、それでも凄まじい速さですね。わたしには真似できませんよ。
“大樹の枝”。それは樹齢二千年を超える大木。
そこに住まうは人間と魔族の中間種族であり、人類に友好的な異種族――エルフ。
自然豊かな土地に住み、妖精の加護を授かるとされる一族である。
「上手く交渉がまとまればいいんですけどねぇ……彼らの中で大樹は神聖なものですから、そう安易にはいかないでしょう」
“大樹の枝”特に魔法との親和性が高く、魔樹とも呼ばれるその木は、妖精の恩恵を受けたエルフ族の里にしか生息しない木で、非常に硬く、加工が難しいのが特徴です。
それも年代が重なるにつれ、加工の難易度は跳ね上がります。
ただ、杖の素材としては最上の部類に入るので、成功すれば一攫千金を狙えるほど物凄く良い物ができるわけですが。
(あとエルフ族って、全員美男美女なんでしたっけ。会うのは初めてなので少し緊張しますね)
そんな訳で、彼、彼女らが住むエルフの里を目指して、わたしは再び走り出すのでした。
身体強化をフル活用しての全速力です。
「うぉーーりゃぁぁぁぁぁぁぁー!」
風を切る音と、木々が薙ぎ倒される音が辺り一帯に響き渡ります。あ、環境には配慮していますよ。実際にはそういう音が聞こえるだけで、しっかり木々の間をぬって移動していますから。
ちなみに、森に出てくる魔獣は何故かわたしが全力疾走すると逃げるので、襲われる心配はありません。
あと派手に移動したのは、たぶんストレスが溜まっていたんだと思います。ここの所、興味のない仕事や学院入学のための手続きばかりしてましたから。
リベアに勉強を教えるのが、日々の救いだったくらいです。
と、まあそんな事を考えながら、わたしは走り続けるのでした。
◇◆◇◆◇
それから三日後。
「はぁ……はぁ……あいててて。腰がバキバキ言ってます。ですがようやく着きました。ここがエルフの里……樹齢二千年を超える大樹が存在する唯一の地、ですか」
険しい山道を越え、鬱蒼と生い茂る密林地帯を抜け、身体強化を乱用した影響で全身筋肉痛になりながらも、なんとか無事に目的地へ着いたのでした。
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