122.喧嘩の代償
サブタイトルの“代償”とか、結構重めの言葉ですが実際は激甘だったりします。
王立魔法学院への入学。
王都最難関の学院に、村娘のリベアが王様特権で楽に入れる筈もなく、ちゃんとした試験を受けなくてはいけません。
この学院は完全実力主義なので、家柄問わず、たとえ受験者が王族だとしても試験の結果が悪ければ落とされます。そのくらい厳しい所でありますので、貴族の受験生はみな家名を背負っていることもあり、必死になって受験勉強に取り組みます。
試験内容は筆記、実技、作法、面接の4つになります。
リベアの受ける特別枠はその一つである作法の試験が免除されます。これは朗報ですね。流石に貴族の嗜みを村娘に要求されると厳しいですから。
しかしここである問題が発生したんですよね。
「嫌です。私は師匠の弟子です。だから自分の力で入って見せます。今回は王様の特権で試験を受けれるんですよね? でも、本当は色々とすっ飛ばしてるだけで、試験を受けるまでにもっと複雑な道順がありますよね!?」
「まあそうなんですが……ですがリベア。そうしたら規定で最低半年間は別の人の所で修行する事になりますけどいいんですか? わたし、国の魔法使いに正式登録されたのこの間ですし」
どこかの魔法統率協会の人のせいで。
「うっ、師匠と離れるのはもっと嫌です。でも……ズルをするのはよくないってお母さんが……」
「うーん、上手くは言えないんですがズルではないと思いますよ。むしろ当然の権利です。そもそもリベアがわたしを説得して、大賢者の弟子にならなければこなかった未来ですから」
「ししょう……」
「試験でズルするわけでもないんですし。それに入ってからは完全な実力主義なのでそこから頑張ればいいと思いますよ。ま、わたしの弟子なんですから他の人なんて相手にならないと思いますけど」
「ししょおぉ! 大好きですー!」
「はいはい、わたしも大好きですよ。あ、でも、私と師弟関係にある事は内緒ですからね」
「どうしてですか?」
「そりゃ、今をときめく大賢者の愛弟子だって事がバレたら、周りから質問攻めにあって平穏無事な学生生活を送れなくなりますから」
主にリベアを利用して、わたしに近づこうとする輩とか。
貴族って、そういう汚い考えを持った人達も多いですから。
「……時々師匠って自信過剰な所がありますよね。あと私は別に送れなくていいので、四六時中師匠と一緒にいたいです。というか私には師匠が、師匠だけいればいいんです!!」
わぁ強い。それはものすごく嬉しいんですが、一緒に学院に通う為にも、ここは一つ説得しなければいけません。
「リベア。同じ敷地内にいますし、話しかけるなとは言ってませんから。過度な接触禁止するだけで。あくまで先生と生徒の距離で行きたいと言っているんです」
「それが一番きついんですけど……」
「えぇ、どうしましょう……」
「…………」
静かに杖を取り出すリベア。やる気ですか? やる気なんですね?
よっしゃ、かかってこいやー! 師匠の強さを見せてやるぞー!!
そこから小1時間ほど、わたし達は揉めました。
妥協案が出たのは、リベアがすっかり魔力を使い果たした頃でした。
「……わかりました。じゃあこうしましょう。師匠のローブと同じものを私に作って下さい!!」
「へ? どういうことですか?」
「だから師匠が普段着ているそのローブをお揃いにしてください。そうすれば師匠がいない時でも、少しは師匠を近くに感じられます。たしか魔法科の生徒は学院の制服の上に、自分のローブを羽織ってもいいと書いてありましたよね?」
このローブ。師匠が着ていた物のお下がりだから、かなり流行遅れになるんですけど、年頃の女の子としてそれはいいんでしょうか?
リベアには今の時代にあったもっと良いものを用意しようと思っていたんですか……すごいキラキラとした目を向けてきます。
「お揃い……ギリギリセーフでしょうか、いやアウトですね。でもまあ細かいことはいいですか。愛弟子が変な奴に目をつけられるのは嫌ですし」
という事で、お揃いのローブを作ってあげる事が決定しました。
「やったー! ありがとうございます師匠! これで師匠とお揃いですー♪」
まったくわたしも自分の弟子には甘いですね。だけど一件落着です。
◇◆◇◆◇
という感じの出来事があったばかりでした。
「あーその、今のはわざとではありません」
慌てて弁明するわたしに、リベアが微笑みます。
どうやら許してくれたようです
「分かってます。元々試験のことを聞いたのは私ですし」
よかった、うちの弟子が物分かりの良い子で……ひっ!
リベアは確かににっこりと笑っていましたが……目が笑っていません。
この話題をまた口にすると、再び喧嘩になりそうなので止めておく事にします。
「ええっと、リベアは合格した場合、わたしより二週間早く寮に行くことになりますがそれは大丈夫ですか? ちなみにわたしは大丈夫じゃないです。生活苦に陥ります」
「フィアさんが、私の分までやってくれるみたいですから安心してください。あと私にしているように迷惑かけちゃダメですからね! 朝はちゃんと自分で起きてください!!」
「が、頑張ります」
「あ、迷惑かけてる自覚はあったんですね。ならいいです。師匠からは他に、試験以外で何か注意事項とかありますか?」
「えーと、ユリア様も同じ年に入学しますが、学院内でも試験会場でも自分からは決して声を掛けないようにして下さい。分かりましたね?」
「そう、ですよね……アリスちゃんはお姫様で私は大賢者の弟子であるだけの元村娘。はい、分かりました。絶対に話しかけません」
意外に素直です。
これ、逆に姫様が聞いたら寂しがるパターン。
それからわたし達が学院生活で家を空ける間、ソフィーとフィアがロフロス村にあるわたし達の家の管理をしてくれる事になっていることを伝えます。
「それくらいですかね。伝達事項は。さっ休憩は終わりです。勉強に戻りましょう」
「うえぇー全然休憩になってませんよー! 師匠〜!」
そんなこんなで、グラトリア家で過ごすわたし達の日常は続いていきます。
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