99.見逃すとでも?
「ししょう!!」
「リベア……色々言いたい事はありますが、まずはあなたが無事で本当に良かったです。遅くなってしまいすみませんでした」
「いえ。師匠なら絶対に来てくれるって信じてましたから」
えへへっと乾いた笑い声を上げるリベア。言葉に覇気はなく、やつれてしまったように見受けます。昨日、泣き寝入りしたせいもあるのでしょうが……。
到着時リベアは泣いていました。目立った怪我こそしていないものの、身体のあちこちにすり傷が。
抵抗した時に出来たものでしょう。
「私は大丈夫です! だからそんな顔しないでください……心配かけた私が言える事じゃないですけど」
「――っ、リベア!」
とても怖かった筈なのに、師匠がいるからと無理矢理笑って気丈に振る舞おうとする弟子を強く抱きしめました。
「ふぇ? 師匠……?」
「こうすると痛いのが飛んでいくんですよー。師匠から教わりました。どうですか?」
「はい。なんだか暖かくて、それに心地良いです」
強張っていた肩の力が抜け、震えも止まり、わたしに身体を委ねたリベアが徐々にリラックスしていくのを肌で感じます。
「んっ、師匠……」
背中に回された腕の感触に応えるように、わたしは再度彼女の身体を抱きしめました。
「今、私の魔力をほんの少しだけリベアの身体に流しています。小さな傷もそれで治る筈です。嬉しいですか?」
魔力譲渡の過程でキスをする必要があるのは、相手に十分な魔力量が無い場合に限ります。魔法使い同士なら、その技量があれば抱き締めるだけで相手に自分の魔力を移す事が可能なのです。
「嬉しい……です。師匠と一つになれたみたいで、ソフィーさんもこんな気持ち、感覚だったんでしょうか?」
「それは人によりけりですね。基本的に自分以外の人の魔力を取り込む場合、相性が良ければ暖かく感じ、心が和らぐのですけれど……リベアもそんな感じですかね」
「ふぁい〜……」
気持ちよさそうに目を細めたリベアが、すりすりと顔を擦り寄せてきます。このまま甘やかしてあげてもいいのですが、先程から殺気を飛ばしてきてる輩にそろそろ対処しなければなりません。けじめは必要ですから。
ま、こうやって会話している間、彼らが手を出せなかったのは外からは対処不能の結界を張ったからです。防音ですので声も漏れません。向こうからは中も見えませんしね。
え? その間、彼らが逃げずになんで律儀に待っていたかって? まさか何もしていないわけないでしょう? この空き地一帯にわたしの許可無しでは出られなくなる小規模な結界魔法を張ったからです。どんなに泣いても喚いても声は外に聞こえず、助けを呼ぶ事さえ出来ません。だから彼らは逃げたくとも逃げれないのです。
わたしの弟子に手を出そうとしたゴミ共にはお似合いですね。
「リベアは終わるまでここで待っててくださいね」
「で、でも、元はと言えば私の不注意のせいなので私も一緒に……」
弟子を安心させる為に、わたしは声を落として彼女の耳元で囁きます。
「大丈夫だから。リベアは大人しくここで待ってる――ね? 分かった」
「はひゅっ!?」
はむっとリベアの柔らかい耳たぶを甘噛みしてあげると、弟子から聞いたことのない変な声が漏れました。
どんな息の吸い方をしたんだろ。あっ、首にしても良かったな。まあそれは今度にしとこ。
この子にはこのくらいの愛情表現をしてあげる方が安心するみたいだから。でもそれ以上はまだ――。
「あははっ、何その反応! 可愛いよリベア、本当にね」
「し、ししょう……い、いまのは、その……」
口をパクパクさせて何かを言おうとしていますが、上手く言葉が出てこないようです。顔も真っ赤になっていました。そんな彼女を見てるとやったこっちも恥ずかしくなってきます。
――これ以上は直視できないな。
密着していた彼女の身体を優しく離し、顔を背けました。「あっ……」と後ろから、名残惜しそうな声が聞こえましたが今振り返るのはまずい。たぶん首を通り越してど真ん中を狙ってしまいそうだから。
「じゃあちょっと行ってくるから。大人しくしてるんだよ」
「は、はい……!」
ん? おや? リベアの目にハートマークが浮かんでいるような……気のせいじゃなくてしてますね、あれ。戻ってきたらキスされそうです。
いやでも、それは流石に自信過剰かな。
◇◇◇
「よっこらせっと。みなさんお待たせしちゃいましたね」
結界からひょっこり顔を出すと待ってましたとばかりに彼らが近づいてきます。
「誰も待っちゃいねぇよ。妙な魔法使いやがって。さっさと俺達をここから出せ」
「やめろ。こいつはさっきのような見習いの魔法使いとは訳がちげぇ。戦っても勝ち目はねぇ」
「だったらどうするんですかい」
「それを今考えてんだよ!」
隻眼の男の方はわたしとの実力差を弁えているよですが、それを理解していた所で弟子に手を出そうとした事実は消えません。
「弟子の心の悲鳴が聞こえてここまで飛んできた訳ですが、貴方面白い事を言ってましたねー」
「あ?」
途中からでしたがわたしは聞いていました。弟子に放った言葉を。それに対し弟子が庇ってくれた事も。
「わたしが貴方達と同じだと。わたしの目はやる側の人間だと……後半は間違ってはいません。今から貴方達は半殺しにされるんですから――わたしを倒さねーと、あなた達は一生ここから出られねぇよ! いいからさっさとかかってこい!」
無論わたしの声も結界の中にいる弟子には届きません。わたしは杖を手に、マジギレモード(師匠モード)で顔を青くした男達に迫るのでした。
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