おい、そこの彼女できないお前。これが彼女の作り方だ。
最後まで読んでくれたら嬉しいです。
「明日地球が滅ぶってさ」
退屈な授業中、俺は隣の席の水城さんに適当な嘘をついた。小学生でも信じないような嘘だ。
うん。そうだよ。信じねぇよ。信じるわけない。こんなんで信じたらアホだよ。アホ。
それに相手はあの水城さんだよ?
水城さんって超成績優秀、スポーツ万能、黒髪ロングに整った顔立ち。スラリと伸びた身長に思わず目をむけてしまう胸の出っ張り。おまけに学級委委員長。
まぁ、こんなハイスペックな彼女が信じるわけ......
そう思い俺は隣に座る水城の様子を見る。
「…………」
ただただ無言だった。
そんな考えるようなことだろうか?考えるよりも先に疑いが来ると思うんだけど。
そして、次の瞬間。
「ええええぇぇぇぇぇぇえええ!?嘘でしょ!?」
水城さんの絶叫が教室中に響き渡った。
「どうしよう、私まだやりたいことたくさんあるのに......!?」
「え、ちょ、水城さん......?」
頭を抱えて絶叫している水城さんをよそに周りからは困惑の声が聞こえてくる。当然である。
いつもクールで知的な水城さんが突然授業中に叫びだしたのだから。
「お、おい、水城、今は授業中なんだが......?」
「うっさい!あんたは黙ってろ!クソメガネ!」
「ごふっ」
水城さんの容赦ない物言いに胸を両手で抑える数学教師。先生をクソメガネ呼ばわりするこの優等生。怖スギィ!
「じゃあ、今日がラストチャンスなのね......」
急に謎の言葉を呟く学級委員長。
まじでどうするんだよ......。どうやって誤解を解いたらいいんだ?俺だってこんなふうになるなんて思ってなかったよ!?予測不可能だよ!
俺はただ水城さんのジト目プラス罵りという奇跡の組み合わせを脳内アルバムに永久保存したかっただけなのに!
「小野田昇平!」
「はい!」
急にフルネームで呼ばれて立ち上がる。
くっ、やっぱ怒るよな......。
まぁ、そりゃあ誰だって嘘つかれたら怒るよね。
「わ、私は、昇平!君のことを......」
許さない、だろうな。さぁ、気がすむまで怒ってくれ。土下座する覚悟ならとっくにできているさ。
「世界で一番......愛している!」
教室から音というものがなくなりました。
「はい?」
思わず聞き返してしまいました。
「えええええぇぇぇぇえぇぇぇぇええ」
教室が揺れました。
「明日地球が滅ぶというのなら、もう今日しかないだろう!私は君が好きだ!」
「いや、ちょ、まって」
「実は成績が良いところが好きだ。普段はだるそうにしてるくせに、困った人を見つけると直ぐに助けに行くところが好きだ、ご飯をいっぱい食べるところが好きだ」
「ちょ、ちょ、今授業中だから!落ち着いて!」
水城さんの止まらない告白を必死に静止させる。正直俺の頭も今の出来事のついていけていない。
それに、これは恥ずかしすぎるでしょう!?
周りを見渡しても皆んなうわぁ......とか言って恥ずかしそうに俯いたり、顔を手で覆ったりしてるよ!男子どもはコンパスやらハサミやらカッターを握りながらなんかぶつぶつ呟いてるし。
俺が明日には滅んじゃうよ!
「いや、えーっと、その......」
予想にもしていなかった告白に俺はたじろぐ。
俺は、どうすれば......?
「おいおい、ダンマリかよ!」
「そーだぞー!水城さんがかわいそうだろー!」
「とっとと答えろよ!」
野次馬たちが答えを急かしてくる。
畜生!お前らがちょっとにやけてんのが気になるなぁ!?
他人事だと思って、楽しみやがって!
「そーだよー!あんな情熱的な告白を無視すんのか?」
「そーだ!そーだ!普段だるそうなのに困っている人がいると助けに行っちゃう昇平さんよ!」
やめてあげて!水城さんが死んじゃう!
今にも泣きそうだよ!恥ずか死しちゃうよ!
だが、まぁ、野次馬たちのいうことは正しい。
相手が誠意を持って告白してきた以上、俺も全力で答えないといけない。
俺は意を決し水城さんの前に立つ。
教室のざわめきは一瞬にしてなくなり、俺に視線が集まる。
「水城さん」
「っ、はい」
彼女と目が合う。
俺を貫くような真っ直ぐな視線はすでに覚悟を決めてるように見えた。
答えはすでに決まっている。
あとはもうその答えを口に出すだけだ。
海底深くまで沈んでしまいそうなくらい重い雰囲気がクラスを支配する。
俺は呼吸を整えその答えを告げる。
「ごめん。付き合えない」
「え?」
「あ、あと明日地球が滅びるってことも嘘だから。安心して明日を迎えてね」
教室を沈黙が支配する。
そして、誰かが声をあげるのよりも早く、
「ふぇぇぇぇぇ―――ん!!!」
水城さんは叫びながら教室を走ってでてく。
廊下からは、私はただの馬鹿だぁー!という叫び声が聞こえる。
そして、クラスが呆気にとられる中、1人の男子生徒に質問される。
「なんであの水城さんをふったんだ?」
確かに気になるだろう。俺は答えを告げる。
「だって、いきなりでビビったし......。それに、水城さんを本気で、好き.....だから、俺の方から告りたいなー......的な?」
またしても、長い長い沈黙。
「だって、あんなの可愛いすぎるでしょ!?いつもはクールなくせに、ふぇぇぇーんとか言っちゃうし!嘘とか信じなそうなのに、結構あっさり信じちゃうし!」
クッソ、メッチャ恥ずかしい!
けどここまできたら言ってやるよ!
お前ら全員悶え苦しみな!
先生がいようと、授業中であろうと、ここまできたらもう知らん!この後のことなんて知ったもんか!
「ああ、そうだよ!認めるよ!俺は誰よりも、世界で一番!水城のことが!好きだぁーー!!」
その直後、ドアに何かがぶつかったような音がした。
俺は恐る恐るそのドアを開ける。
するとそこには、おでこを抑え、頬が紅潮している水城の姿があった。
「バカっ。好きなら素直にそう言いなさいよ。恥ずかしくて死んじゃうところだったじゃない」
水城さんは上目遣いで俺の胸ぐらを掴んでくる。しかしその力は余りにも弱く、水城さんは今にでも泣きだしそうだった。
「そんなの知るかよ。俺が素直に成れないほど可愛すぎるお前が悪い」
水城さんは俺から手を離す。それはきっと俺が水城さんの両肩を優しく握っているからだろう。
「なにそれ。アホみたい」
今すぐにも爆発してしまいそうなくらい真っ赤に顔を染めているのにも関わらず、口調はとげが抜けていない。
「アホでもいい。水城と一緒にいれるならそれでいい」
俺は水城を抱き寄せる。水城の鼓動が直接胸に伝わってくる。その鼓動が速いことに俺は喜びを覚える。
「昇平......」
水城が俺の名前を呼ぶと顔を俺の方にゆっくりと近づけてくる。
「沙耶......」
俺が水城の名前を呼ぶと顔を水城の方にゆっくりと近づける。
お互いに名前を呼び合い、どんどんとその距離を詰めてゆく。
そして、3回名前を呼び合った後、
ーーー俺たちは、熱い口ずけを交わした。
そして、俺たちのやり取りを見たクラスメイトたちは、
「リア充、爆発しろぉぉぉぉ!!!」
みな息ぴったりに大声で叫んだのであった。
そして30年後、
「ただいま!」
「おかえり!パパ」
「お帰りなさい。あなた」
辛い仕事を終え、家に帰ると最愛の妻と娘が出迎えてくれた。
「ご飯できてるから先に座ってるわよ」
「ああ、いつも悪いな。沙耶」
「ふふ、懐かしいわね。その呼び方」
「そうだな」
「ねぇねぇ!聞きたいことがあるの!パパ!早くきてこっちきてよ!」
「ほら、可愛い娘が呼んでるよ」
「ああ!今行くよ」
娘に返事し、急いで支度を済ませ席につく。
「ねぇ、パパは、私が通ってる高校に通ってたんでしょ?」
「ああ、そうだよ。ママとも高校で出会ったんだ」
懐かしさを感じながらも説明する。
前に座る紗耶は落ち着きがない様子だった。
「じゃあ知ってるかな〜?うちの学校にはちょっとした伝説があってね?」
そう言われて、少し背中が冷たくなるのを感じた。なんとなく予想予想できてしまう。
「う、うん」
不自然にならないようなんとか返事をする。
まさか......俺たちのことじゃないよね?
「どんな伝説なんだい?」
娘にそう問いかけると目を輝かせながら、
「授業中に告白して、成功するとその2人はずっと幸せになれるって伝説!すごく面白くない!」
娘は興奮気味に身を前に乗り出し説明してくる。
やっぱりね!恥ずかしいなぁー。若いってすげえわ。
どうやら、俺たちのあの行動は卒業後も語り継がれることとなったそうだ。
恥ずかしさを誤魔化すために、沙耶に目配せする。
すると沙耶は、30年前と全く同じ照れの混じった笑顔で俺に微笑んでくる。
そして俺は心から思うのだった。
ーーーーこれからもずっとこの幸せが続いてゆけばいいな、と。
最後までお読みいただきありがとうございました。
感想等貰えると嬉しすぎてバク転しちゃいます。




