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「パーティーを追放されて直ぐにする仕事ではありませんが、やはりアレしかありませんか……」


 すぐにお金を得られる仕事には心当たりがある。

 ゼノンさんのパーティーに所属したてのとき、臨時で人手が欲しい際に利用した冒険者ギルド所属のフリーター。いわゆる、フリーの冒険者になればいいのだ。


 好んで一人でいる方、パーティーに所属が出来ずに自己アピールも兼ねて足掛けでやっている方など、目的は様々。 


 彼らは主にパーティーの助っ人(サポーター)や一人でこなせるお手伝いのような仕事をしていた。


 この仕事の良い所は大抵は前金で生活に必要な最低限のお金が頂けること。

 そして仕事が無事に終われば、次の仕事までの繋ぎの給金を得ることができる。


(人見知りなのでできれば避けたい仕事ですが贅沢は言えませんね)


 私などの力でも多少のお手伝いくらいは出来るはず。ゼノンさんのパーティーでの経験も何かしらの役には立つと思うのだ。 


 ちょうどパーティーで遠征に出ていてここはジルベスタ王国の中でも田舎のほうに位置する。冒険者ギルドもそれほど大規模なものでない。


 だからギルドに登録してすぐに仕事を得ることは出来ないとは思うけど……それでも真っ当にお金を稼ぐ最短ルートなのは間違いないと思う。


(とはいえ、緊張します。門前払いとかされませんよね――)


「ソアラ・イースフィルですって!? ソアラ様って、あの……勇者ゼノン様のパーティーに所属している聖女様ですよね?」

「あ、はい」


 ジルベルタ王国の辺境。北側に位置する冒険者ギルドの受付で登録しようと名を名乗ると、受付の男性は椅子からひっくり返りそうになるくらい驚かれた。

 どうやら私のことをご存じのようだ……。


 一応、うなじの部分に聖女としての神託を受けた証拠の紋章があり……偽物の聖女だと疑われるのも嫌だったので、それを見てもらうことにする。


「ご、ゴクリ……。た、確かに……、って、見せなくても大丈夫ですよ! 当ギルドは鑑定士によるステータス鑑定を全員に行っていますので。虚偽申告はすぐにバレますから。それにその長い金髪と美しい容姿。間違いなくソアラ様だと確信しております!」

「は、はぁ……、あ、ありがとうございます」


 迂闊だった。肩を見せる必要は無かったみたいだ……。


(どうしましょう。すっごく恥ずかしいんですけど)


 勇者であるゼノンが有名人なので、私の名前や外見の特徴もそれなりに広まっているみたいだ。


(有名なら有名で恥ずかしいかもしれません。世間知らずなのバレてしまいましたし)


 私は顔から火が出そうなのを誤魔化しながら、必死で真面目な顔を作る。


「しかし、ゼノン様のパーティーに何か不測の事態でも? ソアラ様ほどの方がフリーターになるなんて、考えられませんよ」

「いえ、勇者様たちは健在ですが……誠にお恥ずかしながら私は戦力外通告を受けまして」

「ええーーーっ!? 武芸百般、才色兼備、質実剛健、快刀乱麻、と言われているソアラ様が戦力外!? ご病気になられたとかでしょうか?」

 

 戦力外通告を受けた話をすると、受付の方は身を乗り出して大きな声を出した。


(わ、私ってそんな風に言われているのですか? あまり可愛らしいイメージではないのですね……)


 なんかすっごく過大評価されているような気がして、緊張してしまう。

 だが、世間的には勇者ゼノンのパーティーの一員ってことでかなり私の評価は高いらしい。これは嬉しい誤算かもしれない……。


「えっと、体調は至って健康です。それで仕事を頂くことは出来るのでしょうか? なるべく早く仕事が欲しいのですが……」

「早く仕事がしたい、ですって!? とんでもない! それは無理ですよ!」


 やはり無理か……。

 勇者のパーティー所属だったという面がプラスに働きそうで少々期待したのですが、そんなに甘い話はないみたいだ。 


(残念ですね。他にお金を作る方法を考えないと――)


「ソアラ様がフリーターになったなんて発表したら、助っ人希望のパーティーが殺到してしまうのは目に見えています! そうなると抽選を行ない、さらにスケジュールの管理なども徹底しないとなりませんから! 少なくともお仕事を開始するまでに三日はかかるかと!」

「ふぇっ……!?」

「そうだ! マネージャーを付けましょう! ソアラ様の身の回りのお世話をする人員が必要ですよね!? 誰にしますか……、やはりソアラ様は女性ですから、女性のマネージャーがよろしいでしょうな!」


 なにやら、抽選とかマネージャーとか予想外のワードが飛び出して完全に置いて行かれてしまっている。

 それに、お仕事を開始できるまで三日とは……。無一文なのですぐにでも稼ぎたいのだが……。


「では、当ギルドとの契約金なのですが、申し訳ありません。規約でフリーターの契約金の上限が100万エルドに決まっておりまして。ソアラ様との契約金は1000万でも足りないと思うのですが、特別報奨金などで底上げさせてもらいますので、どうか今回は100万エルドで契約の方をよろしくお願いします」

「そ、そんなに……ですか?」

「やはり、少ないですよね? 勇者ゼノン様のパーティーは年間で10億エルド以上稼いでいるのは存じています。いやはや、お恥ずかしいです」


 カウンターの上に無造作に置かれた100万エルドの札束。

 け、契約金なんて頂けるとは知らなった。それもこんなに沢山。


(ゼノンのパーティーはそんなに稼いでいたのですか? あまりお金に興味が無かったので知りませんでした)


 衣食住については彼に任せきりだった。そんな中で僅かにお小遣いを頂いていただいてやりくりしていたのである……。


「ぜひ、契約させてください!」

「ありがとうございます! 聖女ソアラ様が我がギルドに! このギルド始まって以来の大ニュースです!」


 こうして私は冒険者ギルドの受付さんと、所属フリーターとして契約を結ぶことになった。

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