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魔王軍の幹部である氷の女王を倒し――。私たちは次なる戦いの為にエデルジア王国を目指している。

 馬車を使って二週間はかかる距離だ。

 私はリーダーとして地図とにらめっこしながら、最善のルートを模索していた。

「しばらくはこのまま、まっすぐで大丈夫です」

「ふふ、お疲れ様ですの。エデルジア王国もきっと大聖女であるソアラ先輩を待っていますわ。……こちらのタオルお使いくださいまし」

 エリスさんからねぎらいの言葉をかけられ、タオルを手渡される。

 彼女はわたくしと同じく聖女としての神託を受け、Sランクスキルにも覚醒している天才。おまけに王族の血を引くやんごとなき身分のお嬢様だ。

「エリスさん、ありがとうございます。しかし、改めて考えると私などが大聖女という過分な称号を頂戴してもよろしかったのでしょうか?」

 私は陛下より大聖女という称号を賜った際に感じた疑問を口にする。

 もちろん、それに見合った活躍をしようという意気込みはあるが、未だに実感できない。

「ソアラ先輩! それは謙遜が過ぎますわ。先輩は見事にあの氷の女王を相手にしてパーティーを勝利へと導いたのですから、それくらいの評価はしていただいて然るべきですの」

 額がくっつきそうになるくらい、エリスさんは顔を突き出して、私の自己評価が低いと叱咤する。

 それはそうかもしれないが、その前に――。

「あ、あの、エリスさん。か、顔が近いです」

「あ、申し訳ありません……つい興奮してしまいまして……」

 エリスさんは顔を赤くしながら謝ってくる。

 確かに氷の女王は、勝てたのが不思議なくらいの強者だった。

 魔王軍の幹部の肩書きは伊達ではないということだろう。

(でも、私一人で勝ったわけではないですし、皆さんがいてこそだと思うのですが……)

「姐さんは優しいから自分一人の手柄じゃないって思っているんですよね。だけどここは誇ってくださいよ。あたしら、みんな嬉しいんですから。姐さんが大聖女になったという事実が」

「エレインにしては珍しく良いことを言うじゃないか。そうだぞ、ソアラ。あなたは自分の実力をもっと信じろ」

「エレインさん、ローラさん……」

 エリスさんに同調するようにうなずく二人を見て、なんだか心が温かくなってきた。

 まるで心地良い春風を全身に浴びたみたいに……。

 ハーフエルフで高度な魔術を使う魔術師エレインさんとダルメシアン一刀流の師範代である剣士ローラさん。二人とも頼りになる仲間だ。

「ソアラ様は私たちにとって大切なリーダーなんですから~。胸を張ってください~」

 そしてパーティーの補助として、なくてはならない存在であるルミアさんもニコニコと笑顔をこちらに向けた。

 彼女は獣人族(アニムス)という種族で猫耳としっぽがとても可愛らしいムードメーカーである。

「ルミアさんも……。そうですよね。分かりました。皆さん、ありがとうございます」

 勇者のパーティーを追放されたときは、もう二度とパーティーを組むことは叶わないと思っていた。

 けれど、私はこうして素晴らしい仲間たちに出会えた。

 さらには今は大聖女の肩書までいただけることになったのだ。

(これは夢ではありませんよね?)

 私は自分の頬っぺたを思いっきりつねってみる。

「……痛いです……ということは、やっぱり現実なのですね……」

「はは、おいおいソアラしっかりしてくれ。夢なはずがないだろう?」

「あたしもこうして姐さんと旅していると夢みてぇだと何度も思いますけどね……」

「すいません。お恥ずかしいところをお見せしてしまいました」

 私は少し照れくさくなりながら頭を下げる。

「ソアラ様~、このルミアは夢でも現実でもずっとソアラ様のお側におりますね~」

 すると、隣に座っていたルミアさんがそっと私の手を握ってきた。

 温かい。フワッとした彼女の手から優しさが伝わってくる。

「ルミアさん、そして皆さんも。この先、もっと厳しい戦いになるかもしれませんが、頼りにさせていただきますのでよろしくお願いします」

 私は感謝を込めて皆さんに声をかけた。

 改まって言うことではないのかもしれないが、仲間を頼りにすることがこれから大切になる気がしたのだ。

「うむ! 任せてくれ!」

「はいです~!」

「姐さんの右腕として、あたしらは全力でサポートします!」

「ソアラ先輩! どこまでもご一緒いたしますわ!」

 私は本当にいい仲間を持ったと思う。

 だからこそ、絶対に負けられない。

 私の大切な居場所はここなのだから――。

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