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「聖女ソアラとその仲間たちよ! よくやった! 本当によくやったぞ! やはり私の見込みは間違いなかったな! まさか、氷の魔城を偵察では飽き足らず、攻略してしまうとは!」

 ジルベルタ王国の国王陛下は笑顔で私たちを迎えてくれた。

 私たちのパーティーが氷の女王ケルフィテレサの討伐に成功したことをとても喜んでいるようだ。

(そういえば偵察か本来の依頼でしたね)

 ゼノンさんのことなど、傷を癒やしているうちに色々とあったのですっかりと忘れてしまっていた。

「ソアラ殿、約束じゃ、お主に大聖女の称号を与える。拒否権はないぞよ――」

「慎んで頂戴致します」

 私は頭を下げて国王陛下から“大聖女”の称号をいただく。  

 本音を言えばこのような大仰な称号は荷が重いと思った。

 しかし、成果を残せたことは事実。そこで変に謙遜するのも礼節に欠くと思ったのだ。

「これからも我が王国の名を背負い、そなたらの活躍を期待する!!」

 この日から私は“大聖女”と呼ばれることとなる。

 魔王軍と人類の戦いは激戦の一途を辿っているが、私たちもその中心に飛び込むことを余儀なくされたのである。

「それでは、次の依頼はまたすぐに伝えさせることとする。さがってよいぞ」

「失礼します……!」

 私たちは国王陛下に一礼をして、謁見の間から退出する。

 やはり二度目も二度目でものすごく緊張した。

(これはいつまで経っても慣れそうにありませんね……)

「ソアラ姐さん、今度はどんな仕事を受けましょうかね」

「それはやはり我々に相応しい、美しき剣技が光るミッションじゃないか?」

「ローラ、てめぇの意見はきいてねーよ」

「ソアラ先輩、わたくし……先輩が大聖女になってくれて誇らしいですわ!」

「これからまた忙しくなりますね~」

 ケルフィテレサにゼノンさんとあれだけ連日……命懸けの戦いが続いたあとにも関わらず、皆さんのやる気は十分みたいです。

(こうして共に同じ方向を向いて歩くことがこんなにも楽しいなんて知りませんでした)

 私ももっと皆さんと冒険がしたい。

 気が付けば私は明日という未来にワクワクしていた。


「ソアラ殿、丁度良いところに来られた。あなた方に新たな依頼です」

 ジルベルタ王宮に用意された私たちのパーティー専用の一室。

 ここは作戦会議などで使ってよいとされているのだが、私が謁見を終えてそこに戻ると衛兵隊長さんが新たな依頼を貰ったと書状を持ってきた。

「新たな依頼ですか。見せてもらっても?」

 私は彼から依頼書を受け取る。

 なるほど、今度の依頼はある意味では氷の魔城を攻略するよりも難題かもしれない。

『魔王軍の主戦力と総力戦を行う。各国の主戦力チームはエデルジア王国にある大聖堂へ集合。幹部クラスとの戦闘に備えよ』

 下手をすると魔王軍の幹部クラスと連戦もあり得る危険な依頼。

 大聖女のパーティーとして認知される私たちが欠席することは許されないだろう。

「ソアラ殿、いかがいたしますか? もちろん十分な準備期間を設けてからの出発という形になるでしょうが……」

「…………」

 私は少し考えた。そして、仲間たちの顔を見る。

 みなさんは無言で頷いてくれたので、答えはすぐに出た。

「いいえ、すぐに向かいましょう」

「ふむ……それはどうしてですかな?」

「魔王軍が本格的に動き出したのですから、その主力とぶつかる前に少しでも敵の情報を集めなければなりませんし……なにより戦力が不足しているのなら犠牲が出る前に少しでもお役に立ちたいと思っておりますから」

「なるほど……さすがはソアラ殿。実に立派な考えだと思います。いやはや、本当に素晴らしい!」

 私は自分の考えを伝えると衛兵隊長は感心したように何度もうなずいた。

(いよいよ決戦の時が近づいているのかもしれません……)

 そんな衛兵隊長さんを見ながら私はこれからの戦いが激化することを予感していた。

「みなさん、今日まで至らぬリーダーである私についてくださってありがとうございました。私は最高の仲間に巡り会えて本当に幸せです。どうか、これからも一緒に歩んでください」

「なに言ってんですか! あたしらの方こそ、今までついて来て下さって本当に感謝してるんですよ! これくらいのこと、言わないで下さいよ! それにまだ終わってもないのにもう別れの言葉みたいなこと口にしないでくださいよ……ソアラ姐さん」

 エレインさんは目に涙を浮かべながら私の手を握ってきた。

「そのとおりだ、ソアラ! 私たちはどこまでもあなたとともに歩む覚悟はとうについている!」

「ソアラ様~、ソアラ様は私たちの最高のリーダーですよ!」

「ソアラ先輩、わたくしは先輩となら地獄の果てにだっていきますわ!!」

 みんなが口々に私のことを褒めてくれる。

 それが嬉しくて私はまた泣きそうになってしまう。

 それでも、ぐっと堪えた。ここで泣いてしまったらせっかくみなさんが信頼してくれているのに情けない姿を晒すと思ったからだ。

 だから私は笑ってみせる。みなさんの信頼に応えられる強いリーダーになるために。

「はい、これからもよろしくお願いしますね。では、参りましょう。目指すはエデルジア王国の大聖堂です!!」

 私は笑顔でこれからの旅路を行くことを決意した。

 大丈夫……、きっとこのパーティーならばどんな困難も乗り越えられるはずだから――。


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