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ふわりパステル大回転  作者: ソラマメ一番街
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第3話 尾行と追跡

お久しぶりです

「あ~、あっちぃなぁ~」


 陽光が降り注ぐ中、額ににじみ出る汗をぬぐいながら一人の少年が気怠そうに呟いた。彼の名は田中。法学校に通いチン法を習っている。本来ならば法学校へと登校する時刻だが法学校は昨日よりめでたく夏休みを迎えた。彼は夏休み初日から発売される人気シリーズゲームソフトの購入のため早朝から出かけており現在はその帰路の最中である。


「でも、並んだ甲斐あってなんとか買えてよかったぜ」


そう嬉しそうに語る(他に誰かいるわけでもないが)彼の右手にはお目当てのソフトが入った袋がしっかりと握られていた。

「ドナシリーズ最新作!今からプレイするのが待ち遠しくてワクワクするな~」

ドナシリーズとは大手ゲーム会社「曇天堂」より発売されているゲームのシリーズの事であり、今最も熱いシリーズタイトルである。前作の「ドナ3」が名作だったこともあり、田中は今回も期待が高まっており意気揚々としている。


「…ん?……んんん!?」


広がる妄想を膨らませながら、ふと前を見ると一組の男女が歩いていることに気がついた、それだけであるならば特別気に留める必要も無かったが、次第にハッキリとしていく後ろ姿に田中は覚えがあった。


「あれ、セカイじゃねーか!一緒に歩いてる女は誰だ...?」


空野セカイ。田中と同じ法学校に通いマ法を学んでいる。田中とは法学校に入学する以前からの付き合いであり親友である。といっても法学校に入学してからはお互いマ法とチン法と分野が違うため以前ほど頻繁に会う事はなくなっていた。


「もしかして、あの女アイツの彼女か?なんだよぉ!アイツも隅に置かねぇなぁ!」


勝手な想像をしニヤニヤとする。思えば空野セカイという男は女というものに全く興味を示さない男だった。その事に対して田中も「つまらn...いや親友として心配だ」と常々に思っていたのだ。


「それにしても、彼女が出来たなら俺に言ってくれりゃいいのになんだよアイツーけしからん奴だな!」


と自分勝手極まりない考えを口にした後、田中は何か閃いた様子でハッ!となった。その後彼の口元は邪悪な笑みを浮かべていた。


「親友の大切なデートだ、何かヘマを起こさないか俺が見張ってやらないといけないよなぁ?」


誰かに聞かせるわけでも無い言い訳を口にし、田中は2人を尾行する事を決心した。幸い2人は何か熱中して話し込んでいる様子でこちらに気づいてはいないらしい。


「へっへっへ、こりゃスクープになるぜぇ!俺に言わなかった事を後悔するんだなセカイ!」


もはや言い訳をする気すら無いようで、彼は2人の後をつけていくのだった...。








「おい空野、今更過ぎる質問かもしれんが今は一体どこに向かって歩いてるんだ?」


ハルカナタに向けて出発してから少し歩いた後、海崎ユリは空野セカイに質問した。


「.........」


空野は直ぐには答えようとしない、海崎は「まさかコイツ...」と嫌な予感が脳裏に浮かんだ


「お前まさか....考えなしにハルカナタに行こうなんて思ってるんじゃ無いだろうな!?」

「待て、ちゃんと考えがあるんだ。だからその魔導書で僕を叩こうとするな」


海崎は今にも手に持った魔導書を振りかざしてきそうな剣幕で僕に問い詰めてきた。多分ぺちぺちでは済まないだろう。僕は叩かれる前に透かさず荷物の中からあの地図を取り出した。


「この地図を見ればわかると思うけどハルカナタがあるのは世界の中心だ。だけどここに行くには海を渡る必要があるからまずはここから1番近い東の港に行って移動手段を探そうと思うんだ」

「...なるほどな、一応考えてはいる訳だ。まったく、それなら早く言えっての」


そう言うと海崎は魔導書で僕をぺちぺちと叩いた。


「ただ、1つ気になった事があって」


そう言うと空野はボロボロになった地図の端を指差した


「昨日地図を見返してて気づいたんだけどこの端の所よく見ると文字が書いてあったような跡があるんだ」


そう言われて海崎は地図を覗き込む。なるほど、よく見ると確かに文字があった所が破れているように見える。僅かにしかその跡が確認出来ないためなんて書いてあったかは読み取ることは出来ない。


「確かに文字だった様なものが破けて読めなくなっているな」

「もしここに書いてあった事がハルカナタを見つける鍵だとしたらただ世界の中心に行くだけじゃダメなのかもしれないと思ったんだ」


なるほど、それでさっきは歯切れが悪かったのかと海崎は納得した。


「だがそんな事を今更気にしても仕方ないだろ、とりあえず港に行くぞ考えるのはその後でいいだろ」


「...そうだな、ありがとう海崎お前居なかったら詰んでたわ」

「詰むの早すぎだろ」


空野の冗談に海崎は呆れた様子で返事を返す。ふと昨夜の事を思い出した


(「空野セカイという男の人を知りませんか」)


空野の事を知る謎の2人組。空野の知り合いでは無いとは思うが一応本人に聞いてみるか。


「なあ、話は変わるんだがお前知り合いにアリスとテレスっていう奴はいるか?」

「誰だそれ、そんな奴知らないよ。そもそも女で知り合ってお前くらいだし後は愉快な男達しか知り合いには居ないよ」


...案の定というかそれもそうだ、今までコイツの口から私以外の女性の名前が出た事なんて無かったな。愚問だった


「それがなにか?」

「いや、特に意味はない」

「なんだそれ」


あまり深く聴くのはやめておこう、向こうの事も私は何も分かっていないし不安要素だけ増えるのはごめんだしな


「はぁ...それにしても暫くあいつらに会えないのは寂しいなぁ」


「松田、一ノ瀬、ジョナサン、田中、校長先生...」と此処にはいない男達の名前を漏らしながらため息をつく空野。全く...と海崎も呆れる。数十分後、同性の名前を呟きながら港へと歩を進める2人組の姿があった...














町外れの河川、人から発せられる音は聞こえない、ただ虫のさざめきのみが響き渡る。そんな場所を壊すかのように、1人の女が踏み入った。



「...クソッ!!あんなガキにさえ邪魔されなければ成功したのにぃぃぃぃぃぃ!!!!」


「キィィィィィィィィィ!!」とハンカチを咥えながら切れているこの女はエド。つい先日まで反社会組織に雇われ命令をこなしていた彼女だが、法学校襲撃という任務に失敗し、組織から解雇され途方に暮れていた。


「そもそも、いっかいのミスでクビにしやがって...あんのブラック企業がッ!記憶操作マ法さえ掛けられ無ければアイツらのアジトバラしてやったのにぃぃぃぃ!!」


行き場のない怒りを撒き散らしていると突如背後から声がした。


「貴女がエドさんですね」

「あん?誰よアンタら」


声のする方向へ振り返ってみるとそこには真っ白なローブを纏った人影が2つあった。月明かりがだんだんと差し込みその姿が徐々に浮き出てくる。


「失礼、私はアリスとと言うものです」

「私はテレスというものです。以後お見知りおきを」


薄い黄色の髪色をした方がアリス、薄い水色の髪色をした方がテレスと名乗った。


「あらそう、で?私に何の様なの?悪いけど今物凄く機嫌が悪いからあまり話しかけないでほしいのだけれど?」


そう言うとエドは指をサムズアップする構えをとる。が、アリスが手を前に出すと急に手が思う様に動かなくなった。


「まあまあ、まずは私達の話を聞いて下さい。」


無表情でそう言うと同時にエドの手を押さえつける力が強くなる。ついにはエドの意思に反して構えていた態勢が解かれてしまった。


「ッ...!! なんて力してんのよッ...!」

「私達は貴女と争いに来たわけではありません」

「そうです、貴女には1つ頼みたい事があるのです」


アリスとテレスが交互に話す。


「チッ....本当なんでこんなにもツイてないのかしら私」


力量で圧倒的に差がある事を悟ったエドは攻撃する態勢を解く


「空野セカイという男の子をご存知ですね?」

「はぁ?悪いけど私のボーイフレンドにそんな名前の奴いな」

「先日、貴女が法学校を襲撃した時に対峙した男の子の事です」


エドが話し終わるより前にテレスが口を開いた。


「ああ、あの坊やの事ね。確かに1人男子生徒に会ったわ、

....ああ!!思い出したらまた腹が立ってきたわ!」


「クソッ!」吐き捨てながらとエドは何もない地面を蹴った。そんな傍でアリスが口を開く。


「そうですその男の子です」

「頼みというのはその男の子を私達の元へ連れてきて欲しいのです」


それを聴くとエドは呆れたように言う


「はぁ?なんで私がそんな事しないといけないのよ」

「もちろんタダでとは言いません」


アリスはそう言うと同時に両手を差し出す。すると、彼女の手のひらに魔法陣が出現しその中から突如アタッシュケースが出現した。


「貴女が私たちに手を貸してくれるのであればコレは全て貴女に差し上げます」

「!?」


そう言うとアリスはアタッシュケースを開ける。中には目視だけでもざっと一千万ビルはあるであろう大金が入っていた。それを見たエドは思わず生唾を飲み込む。


「コレ全部貰えるの...?」

「はい。貴女が空野セカイを連れてきてくれた暁には全て差し上げます」

「悪い話ではないでしょう?」


アリスとテレスは真っ直ぐにエドを見つめながらそう言った。エドは警戒こそするものの現状こんなチャンスを逃す訳は無かった。


「...どんな手を使ってもいいのよね?」

「その返事は手を貸していただけると受け取ってよろしいですか?」


エドはニヤリと笑って言う


「いいわ、やってやろうじゃない。それにあの坊やには仕返ししたいと思っていた所だったし♡」


不適に笑うエド。彼女の周辺で小さな炎がボゥと燃える。


「ありがとうございます」

「では、こちらを受け取ってください」


テレスがそう言うと今度は彼女が両手を差し出す。すると先ほどのアリスのように彼女の手のひらに魔法陣が出現する。先ほどとは違い、小さな魔法陣が出現し魔法陣の中から2つの物体が出現した。小さく煌いている物と小包らしき物だ。テレスはそれを手に取り説明する。


「こちらの道具は空野セカイの魔力を感知して彼の居場所を知らせる魔法道具です。コレを使って彼を探してください。」


テレスがそう言うと指輪型の魔法道具をエドに渡す。透明な水晶体がリングに付いている。


「ふぅん、なかなか洒落てるじゃない」


悪くないと言った様子で指輪を装着するエドを確認するとテレスは続ける。


「今はまだ貴女と指輪の魔力が同調していないので使えないですが暫くすれば貴女の魔力と同調して使えるようになるでしょう」


そう言い終えると今度はもう一つの小包について説明を始めた。


「この中には我々が開発した精霊の魔力を凝縮したカプセル錠が入っています。一粒でも飲めばたちまち潜在魔力が活性化され普段の数十倍の力を発揮出来ます。」


そう言い終えるとテレスは小包をエドに手渡す。


「精霊!?馬鹿なこと言わないでよ」


精霊とはマ法に深く関わる存在だと古くから言われているがその存在を確認した物はいない。つまり伝説上の生き物、又は古代人の妄言程度の認識である。

エドは渡された小包に目をやる。黒を基調とした小包には鍛精霊きたじんと書かれていた。なんとも胡散臭いわね...と思いながらエドは中から一粒を取り出しエドは言う


「こんな胡散臭い錠剤一粒で精霊の魔力が得られるなんてにわかには信じがたいわね...」


「無理に飲んでいただかなくて結構です。私達は空野セカイさえ連れてきていただければいいので」


アリスがそう言う


「まぁいいわ、私もそのアタッシュケースの中身が欲しいだけだもの好きにやらせてもらうわ♡」


そう言うとエドはアリスが持つアタッシュケースを観ながらペロった舌舐めずりをする


町外れの河川、夜空の雲から刺す月明かりがエド顔を照らす

その表情は邪悪な笑みを浮かべていた。

まだつづくかも

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