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20.彼女/彼──これから

最終話です

 何かを⋯⋯忘れている気がする。

 そんな違和感を覚えたのは数日前、中学生時代のクラスメイトに会った時の事である。

 色々と中学時代の事を思い出し、話も盛り上がり、懐かしさに打ちひしがれ、その友達と別れた後も延々と中学時代の事を考え込んでいた。

 そんな中、何かが、誰かが、すっぽりと私の記憶から抜け落ちている気がした。


 何度思い出そうとしても、頭に靄がかかり、その思い出だけは思い出せそうにない。


 たぶん男の子だった。それもとても、厄介な⋯⋯私が世話を焼きそうな、猫を被った、ああ、でも最後の最後で素を見せてくれたんだっけ。


 あれ? 誰の話だろう。分からない。分からないけど⋯⋯。


 私、たぶん楽しかったんだろうな。たぶん⋯⋯だけどねっ!

 さあ、今日もがんばろっと。


 彼のおかげで今の私がいるのだ──



 ◇◆


 目を開けると、そこは教室だった。

 いつも通りの眠ることすら憚られる騒がしい教室だ。

 いや、でも俺は長い間、本当にとても長い間眠っていた気がするのだが気のせいだろうか。

 こんな馬鹿うるさい教室で安眠なんて出来るはずは無い。気のせいだろう。

 

 それでも、やはり気のせいではない気がする。

 それに、何か大事な物を手に入れた気もする。

 それはお金だとか、ゲームだとか、そんな物では決して無い。もっとかけがえのない大切なもの。

 でも俺はそれを手に入れた瞬間、それを失くしてしまった。


 その失くしたものが何かは分からない。

 でも本当に大切だったものだということは考えるまでもなく分かる。


 それになぜか今は妙に気分が良い。

 眠る前までは、今この状況に絶望していたはずだが、眠ってからは前までの俺とは別人のように変わっているような気さえする。


 俺はふと立ち上がる。それが無意識だったか、意識的に行ったかは分からない。

 そして、俺と同じくぼっちでいる生徒の元へと歩いていく。


「おはよう──」


 おそらくこれが、俺のやるべきことなのだ。

 まずは友達一人目から、いや──


 何はともあれ。これから少しずつ頑張っていこう。


 あれ?なぜだろう。つい最近までは頑張るなんて大嫌いな単語の一つだったはずなのに⋯⋯今はなぜか、そういう風に思えた。


 友達を作るために、俺がまず、するべきこととは⋯⋯


 それは、『笑顔の練習』から。


 なぜかそんな言葉が自然と浮かんだ。

 これは誰の言葉だっただろう。


 ⋯⋯⋯⋯忘れた。


 でも、たぶん、かけがえのない大切な人の台詞だった、そんな気がする。


 それにしても、友達もいた事のない俺に大切な人? 妙な話だな。


 まあ、いいか。友達はこれから──


 そのとき、誰かが「頑張れ」と俺の背中を押しているような感覚に見舞われた。


 それは、いつも笑顔で、たまに俺をからかって笑わせてくれる、人気者でムードメーカーの美少女。

 いや、そんなはずないか。俺にそんなハイスペックな知人はいない。


 だけど──


 俺は朗らかに笑った。

ありがとうございました!!

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