16.幼稚な彼女。
俺が立花蕾と対峙してから既に三日が経ってしまっていた。
朝は机に悪口を、昼は教科書を隠され、放課後には外靴を隠される。
そんな嫌がらせが毎日のように繰り広げられ、気付けばそれが俺の日常になっていた。
立花の嫌がらせはとても低レベルだ。
机に落書きをしたり、物を隠したりとまるで小学生と見紛うような、そんな幼稚なものばかり。
いや⋯⋯嫌がらせに低レベルも高レベルもないか。
嫌がらせなどという行為をした時点でそれはもう低レベルなのだ。
だから、無視を貫き通すことにした。
別にどうってことはない。たかが中学生の幼稚な嫌がらせだ。わざわざ相手をしてやることはない。
思い、次の授業の準備をしようと机の中に手を入れる。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ああ」
またか。まただ。またやられた。
もうこれで教科書を隠されたのは八回目だ。別にどうでもいいが。
すると、後ろからクスクスと笑う声が聞こえた。嘲るような、嘲笑うような、下品な笑い声。
それが誰に対しての笑い声で誰がそれを発しているかか、振り向かなくとも分かる。
その不快な笑い声をもう既に十回以上は聞いているからだ。
それは俺に対して発せられたもので立花蕾が発したモノである。
これを俺はあと何度聞けばいいのだろう。
笑い声が頭にこびりついて離れない。とても、とても不快な笑い声に思わず声をあげそうになる。
だけどそれは出来ない⋯⋯してはならない事なのだ。
それをしてしまったらアイツは嬉嬉として、更に磨きのかかった笑い声をあげるだろうことは想像するまでもなく分かる。
だから、己を殺してでもそれだけは絶対に避けなければならないことである。
「高島くん? どうかした?」
そんな言葉がどこからか聞こえた。
音の方に目を見やる。
長い艶やかな黒髪を揺らしながら立っていたのは水上明美だ。
俺と目が合うと、彼女は柔らかい笑顔で俺を迎えた。
水上がいつものように俺を気にかけ、話しかけてきたのだ。
「別に、何もないよ」
だから俺も彼女同様いつもと同じ返しをする。
見栄を張った訳じゃない。俺は本当に心の底からそう思っている。
俺にとって、最早彼女達の一連の行動は日常になっているというだけの話なのだ。
そんなことより、⋯⋯水上は立花の嫌がらせに気づいているのだろうか。
いや、それはないか。
水上のことだ⋯⋯気付いていたとしたら、彼女がそれを黙って見過ごすことはないだろう。
それに立花蕾の嫌がらせはいつも水上の居ない教室で行われる。それも水上には絶対にバレないように見張りを立てて行うのだ。
どうやら立花にも水上から嫌われるような事をしているという自覚はあるらしい。
「うーん、そっか。じゃあまたね」
言葉とは裏腹に納得はしていない瞳で水上はじゃあねと俺に手を振った。
「うん、また」
そう言い、俺もまた手を振る。
その瞬間、誰かが鋭すぎる眼光で俺を睨みつけていたことは言うまでもない⋯⋯⋯⋯
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