15.意思は固く。
俺は自分の席へと着席する。
机に書かれていたのは「消えろ」「ぼっち」「キモイ」など、そういった悪意以外を持たない文字の羅列。
立花蕾、その他二名からの俺への贈り物である。
何も思わなかったと言えば嘘になる。いや、正直に言うと心が折れそうになった。
それらの文字の羅列にではない。そんな言葉に少しでも動揺した自分がいたことを自覚したからだ。自分の弱さに苛立ちを覚えたのだ。
その現実に打ちのめされながらも、俺は机の文字を消すべく消しゴムを動かす。
そんな中、ふと思った。なぜ俺はあんなことを、あんな火に油を注ぐような事を口走ったのだろうか。
立花蕾が水上に好意を持っていることは昨日の時点で分かっていた。
ならば彼女が、大袈裟に言えば水上に裏切られた、なんて話を聞かされたらどう思うかなど想像に難くないはずだ。
それが全くの事実無根である虚言であったとしてもだ。
彼女自身の心のどこかで少しくらいそういう風に思うところもあったのかもしれない。
だから彼女はまんまと俺の虚言を信じた。信じざるを得なかったのだ。
そんな嘘を吐いてまで立花を不快にさせて、俺は何がしたかったのだろう。
くだらないと吐き捨て、無視を決め込むことだって出来たはずなのに。
ああ、そうか。
分かるものだと思っていたのだ。
彼女の友達ならば分かっていて当然だと、そう思ってしまったのだ。
だけど違った。違ったのだ。
それはとても悲しいこと。
彼女は俺ととても似ている。だから彼女の気持ちが分かってしまう。
彼女は⋯⋯立花蕾はおそらく、水上を友達だとは思っていない。
◆◇◆◇◆
それは、たぶん必然だった。
俺が彼女らに刃向かった時点で決まっていたことなのだ。
さして珍しい事でもない。この学校に今までそれが存在したかは分からない。だけど、どこの学校にでもあるはずだ。
単にその人間の醜さを象徴したような行為のターゲットが俺になってしまったというだけの話。
立花は「潰してやる」と言った。
潰す⋯⋯つまり俺をこの学校にいられなくするということ。俺の居場所を無くすため、精神的にも肉体的にも追い詰める。
それをするのに最適な方法は一つである。
つまるところ、俺はいじめられっ子になってしまったのだ。
ならば、もう終わりだ。俺にはどうすることも出来ない。
いや、どうすることもしない。してやるつもりはない。
反応を示したら負けだ。アイツらのようなレベルの低い人間と同じ土俵に立つことをしたくない。同レベルにはなりたくないのだ。
だから⋯⋯たとえ、机に悪口を書かれたとしても、教科書を隠されたとしても、顔を殴られたとしても、俺は無視を決め込むことにしたのだ。
それが、どれほど辛くたって絶対に⋯⋯⋯⋯
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