12.クラスの日常、非日常。
昼休みが、波乱続きで騒がしかった昼休みがもうすぐ終わる。
本当に濃すぎる昼休みだったとしみじみと思う。
今日だけで俺は、怒ったし、泣いたし、羞恥もした。黒歴史だって沢山作った。
どれもこれも今までの人生では経験したことの無い、とても新鮮な出来事だった。
今までの人生で泣いたことはある。もちろん怒ったことだって⋯⋯でも、あんなにも心の底から感情を表したのは初めてだ。
それで気付いたのだ。俺が本当の意味で怒ったり、泣いたりしたのはこれが初めてだったことを⋯⋯、痛いほどに痛感してしまった。
でも、それが今は少しばかり楽しく思えた。
◆◇◆◇◆
予鈴が鳴って学校内が殊更に慌ただしくなる。それに乗じたように俺は出来るだけ速く、教室を目指す。
教室前に着いた時には授業がもう始まるという時間だった。
俺は慌て、教室に入ろうと扉に手をかける。
少しばかりその手に力を込めた時だった。
何かが違うと、いつもの教室と明らかに違うと悟ったのは。
明らかな違和感、いや、異変が起きている。
しかし、その正体を理解するより先に俺は教室の扉を開けてしまっていた。
「⋯⋯⋯⋯」
静寂、静謐。
息を呑むことさえはばかられる、そんな重々しい空気が教室内には広がっていた。
いつもなら、授業が始まるギリギリまで誰かが話していて⋯⋯いや、始まってからも話しているヤツが大半だった。
だけど、今は誰一人として話す気配すら見せない。
本当に何があったのだろう。
⋯⋯考えたって答えは出ない。
そんな時、この教室に不相応、人目を気にする気なんて微塵も無い音、バタバタと騒がしい足音がどこからともなく聞こえてきた。
教師のものでは無い、それは誰の目にも明らかだった。
じゃあ、教師では無いとしたら誰のものだろうか。
それも、もう分かっていた。
それは多分、俺の他にずっと教室に居なかった人物のものだ。
人気者でムードメーカーで美少女で、常に笑顔を振りまく彼女⋯⋯それ以外にはいない。
「高島くーんっっ! 待ってよーーー」
誰かが走ってくる。見るまでもなくその彼女である。
誰かが俺の名前を響き渡るほどに大きく発した。
声はどこまでも、どこまでだって響く。
その一声がクラスを変えた。いや、戻した。
即ち、いつも通りの、あるいはそれ以上の鳴り止まない喧騒、乱舞。
授業中、休み時間、そんな事は彼らには関係が無いらしく⋯⋯さっきまでの沈黙が嘘みたいだ。
水上が教室に入るや否やクラスメイト達は一斉に水上の元へと駆け寄った。
「み、みんな!? どうしたの?」
驚いた様子で当然の疑問を口にする水上。
「あ、明美ちゃん? もう大丈夫なの?」
ある女子生徒がそんな事を言った。
「うん? 大丈夫って?」
水上は何の話か分からないと言った様子で首を捻る。
「え? お、覚えてないの?」
「何の話?」
その女子生徒を含めたクラスの大半は驚きを隠せないようだった。ちなみに俺にも何の話をしているかは分からなかった。
「明美ちゃんさっきまでずっと元気なかったじゃん!!」
「そ、そうかな」
「そうだよ!!」
女子生徒は声を荒らげる。
「だって明美ちゃん、ずっと下向いてたし⋯⋯話しかけたって何も言ってくれなかったんだよ!?」
目元に涙、震えた声で女子生徒は言う。
どうやら相当に色々と溜まっていたらしい。
「私たちずっと心配で⋯⋯クラスの皆も明美ちゃんが心配で⋯⋯、」
言い終える前に彼女は紡ぐ言葉を中断した。
いや、水上が女子生徒の言葉を無理矢理に止めた。
水上が女子生徒を抱きしめたのだ。息が止まる程に精一杯に。
「ごめん!! ごめんね⋯⋯蕾ちゃん、みんな⋯⋯」
そうして、謝った。
瞬間、女子生徒は目元に溜めていた涙をぽろぽろと流し始めた。
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