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23.『素直になって』

読む自己で。

 僕は静かに体を起こす。

 ……隣には当たり前のように櫻が寝ているが気にせずベッドから下りた。

 ふむ、クリスマスだったというのになにもなく終わってしまったようだ。

 25日と26日の違いはなんだろうと考えていたら、彼女が「ん……」と小さく声をあげる。


「おはよ……」

「うん、おはよ」

「……ん……けーくん、抱きしめて?」

「甘えたがりなの?」

「だって、好きなんだもん」


 こういうところは可愛いんだけどなあ。

 新島先輩、紗織、燐先生、に申し訳ない。あと、千都も。


「櫻、今日はどうするの?」

「1回帰る」

「そっか、それならその時はあそこまで送るよ」


 え? 1回帰るってどういうことだよ。

 まるでまた来るみたいな言い方じゃないか、それじゃ。

 ……とりあえず1階に行って顔を洗ったり歯を磨いたりを済ませ、リビングのソファへと寝転んだ。

 同級生の女の子と寝てしまったあ……しかも瀬戸櫻とぉ……。

 いいのかこれで? キスをしなかったことは幸いだが、勢いに流されて一緒に寝てしまったのは良くないことだと思う。

 櫻が下りてきたので家へから出たら、見慣れた僕にとって最高級の車が……。


「ほう、昨夜はお楽しみだったようだな」

「り、燐先生……」

「今日は休日だ、燐さんもしくは燐と呼べ」

「燐! けーくんと付き合いたい?」

「はぁ? あ、言っておくけどな、昨日のはそういうつもりで誘ったわけではないぞ? 冬休みにひとりというのも寂しいだろう? まあ、28日までは仕事があるんだけどな」


 深く考えすぎていたということか。

 僕らは先生の車に乗させてもらって、また前の場所に行くことになった。

 今回は助手席に乗ったため、燐さんとの距離が近い。


「啓、キスくらいはしたんだろうな?」

「いや……抱きしめたくらいだよ」

「はぁ? お前……ヘタレだな」

「聞いてよ、この子の昨日のお昼に『一緒にいたくない!』とか言っていたくせに夜にひとり公園にいたらやって来て僕のこと好きとか言ってきてさ。おかしいと思わない?」

「ま、好きだからって完全に真っ直ぐいられるわけではないからな」


 そりゃそうだけど、これまでやってきていたことが逆効果すぎる。

 適度に会話しつつ30分くらい経過して、またあの場所に着いた。

 後ろに乗っている子はあまりの快適さにすぅすぅしているので起こさないということになった。

 僕と燐さんは降りて向こうの景色を眺めることに。


「啓、すまない」

「え――」


 いきなり後ろから抱きしめられて僕は体を固まらせる。


「……お前に家に住んでほしいと言ったのは紛れもなく本心からだ。ただ、立場的にそれは叶わないこと……だからせめて最後にこうしたかったんだ」

「燐さん……」

「ふぅ、ありがとう、満足できた」


 燐さんは抱きしめるのをやめて気持ちのいい顔で笑う。

 僕としてはモヤモヤしか残らないそんな結果だった。

 櫻の言うように格好いいとか綺麗とか平気で口にしてその気にさせてしまったのなら――自惚れかもしれないが責任を取る必要があるのではないだろうか。

 燐さんが抱きしめてくるなんて相当なことだ。あれだけ言っても靡かなかった彼女がこうして……。


「けーくん、素直になって」

「「櫻……」」

「けーくんが燐をその気にさせたんだよ? 責任取らないと最低になっちゃう」

「櫻……これが最初で最後の行為なんだ、だから余計なことを気にしなくていい」

「だめだよ、だって燐もけーくんもモヤモヤしてるもん」

「でもな……私は教師で……」

「休日に会えば先生じゃないんでしょ!」


 だけど櫻を抱きしめたのと寝てしまったのが引っかかる。というかこの時点で最低野郎なのは変わらない。

 とにかく、この先を決めるのは燐さんということになるわけだ。


「燐っ」

「駄目だ! 私は教師だぞっ」

「だったら抱きしめなければ良かったじゃん! そんなことしたってモヤモヤするだけなのにっ」

「それは……」


 残念ながら僕はなにも言うことはできない。

 ひたすら傍観者に徹して、櫻と燐さんが決めた結果を聞くだけだ。


「燐、素直になって」

「……そもそも啓にその気がなければ意味のない話だ」

「けーくん」

「……櫻を抱きしめたり一緒に寝てから言うのもなんだけど、先生とかそういう立場じゃなかったら燐さんのことが1番純粋に好きだった。でも、先生を困らせるだけだから言わなかったんだけど……」

「一緒に寝た……」

「……だからそもそも最低野郎なんだ。とにかく、燐さんのことが格好いいとか綺麗だと想ったのは本当だよ。燐さんといるのは好きだったし、だからこそ放課後に残っていたわけだから……説得力ないけど」


 人が全然来ない場所で良かった。

 そうしないとこの思いを吐露することはできなかったから。


「でもお前には……啓には櫻が……」

「燐、私はけーくんが燐と付き合うなら納得できるよ? 紗織や千都に取られるのは嫌だけど、燐ならなんか逆に嬉しいんだよね。それにほら……私は中学のときにやらかしちゃってるから……あとキスはしてないからね、けーくんもまだ私のこと好きなわけじゃないからさ」

「櫻……」


 ただ、仮にここで燐さんが僕を選んだとして、幸せにしてあげられるのかな?

 こんなひとりじゃなにもできないやつが、この人のためになにかをできるか?


「やめてくれ……揺らいでしまうから、最後のつもりだったんだ……もうこれ以上は正しい距離感を保つと――」

「燐」

「……櫻を連れてくるのではなかった……櫻がいなければあくまで普通に抱きしめて終わりだったというのに……」


 僕のことを好きだと言ってくれた櫻がここまで燐さんに言ってくれているのに、僕は本当にこのまま黙りを決め込んだままでいいのか? それって情けないような気がする。


「燐さん、あなたが僕のことを好きでいてくれているなら……いえ、僕はあなたとお付き合いがしたいです」

「そんなこと言うな! 櫻がいるんだぞ……」

「燐、啓くんが勇気を出して言ってくれたんだよ? その気がないならちゃんと言ってあげなきゃ。でも、その気があるなら、受け入れてあげて?」

「私は……」


 燐さんはそこから先は答えず僕を抱きしめた。

 そんな僕らを櫻が呆れたような笑みを浮かべ見ていた。


「燐、帰りたい。あとはふたりきりになりなよ、それで」

「……そもそもそろそろ帰ろうとしていたところだ。帰るか」


 車が走り始める。

 悪いとは思いつつも助手席から謝罪をさせてもうことにした。


「櫻……ごめん」

「ううん、ちゃんと燐が相手だからいいんだ。だって燐は完全に純粋に啓くんのためを思って行動していたからさ、勝てないよそれには」

「……ありがとう」

「ちゃんと燐のこと幸せにしてあげてよ?」

「それなんだけど、どうすればいいのかな? 僕にできることってなんだろう」

「うーん、一緒に住むとか?」

「ぶっ!? ごほごほっ! ……櫻、流石にそれは啓でも無理だろう」


 燐さんをそれを望んていたらしいけど――というかこれを母に言うべきなのか?

 いや、そもそも母は鋭いのですぐにバレそうものだな……。


「啓、きちんとお前のお母さんには説明する。駄目と言われたらそこで終わりだ」

「まあそうだよね……うん、少なくとも母にだけは隠したくないからね」


 ――家の近くに戻ってきて、


「ばいばいふたりとも! 楽しかったよ!」

「ああ、またな櫻」

「またね櫻」

「うん、ばいばい!」


 櫻と別れてふたりきりに。

 僕ん家の、もうずっと昔に使わなくなった車を止める場所に燐さんが車を止めてふたりで家の中に入った。

 会話がなかった。多分、僕も彼女も緊張でやばかった。

 まだ12時前だったというのに、ひたすら18時過ぎまでそのまま待った。


「ただいま――え? に、西山先生」

「お母さん、僕は西山先生とお付き合いがしたいんだ!」

「ええ!?」


 驚くのも無理はない。

 僕だって今朝はこんなことになると思わなかったんだ。

 恐らく息子が先生を連れてきた母ほど驚いてはいないが。


「えと……啓の冗談というわけではないんですよね?」

「……はい、あの、無理なら――というか本来はするべきではないと分かっているんですが……その……」

「年上が好きなのは私とふたりだけだったからかな……あ、うーん、バレないようにすれば大丈夫じゃないですか?」

「「軽い……」」


 ま、櫻とかも平気で泊めようとする母親だったし、こういうものかもしれない。今はそれよりも息子に大切な人ができたのが勝っているのかも。


「いやいや、邪魔はできないでしょ。それにこんなこと言ってきてくれたの初めてだし。私、前々から西山先生の髪の毛を直したいなって思ってたんだよね」

「わ、私の髪の毛をですか?」

「うん、なんか勿体ないかなって。あ、敬語はやめてね、それが条件かな。というわけで、早速お風呂に行こう!」

「え……ああっ」


 め、珍しいな燐さんが押されているなんて。

 ――数十分後、何故かツルツルキラキラヘアーになった燐さんが戻ってきた。

 顔は真っ赤に染まっており、それが色っぽくてそっと視線を逸らす。

 母はなにをやったんだろう……あれは髪の毛だけイジられた反応ではないぞ。


「……啓、お前のお母さんは怖いものだな」

「ごめん。あんな楽しそうなお母さん久しぶりに見たよ」

「客室に案内してくれないか、今日はもう寝たい」

「え、泊まってくの?」

「……君のお母さんがそうしろと。車があったら怪しまれると言ったんだが……大丈夫だから、と」

「そっか。うん、じゃあ」


 案内すると言ってもリビングの目の前。

 扉を開ければもう到着だ。押入れから布団を取り出し敷かせてもらう。


「できたよ?」

「……寝られるまで手を繋いでてくれないか?」

「うん、分かった」


 寝る準備が完了し彼女が手を差しだしてきたので握ると、


「恥ずかしいな……」


 そんな意外なことを燐さんが呟く。


「なあ、いいんだろうか?」

「燐さんがしっかりと教師をできるならいいと思うよ」

「そういうところはきっちりとするつもりだが……しっかりしろとか叱る時にブーメランにならないか?」

「……ごめん、それについては言えないけど、僕は燐さんといられて嬉しいと思うから」

「そうか……いや、私もそうだからな。公私混同せずきっちりすれば大丈夫か」


 新たな問題に悩ませることになってしまったのは後悔だったが、結局僕は燐さんが自分の彼女になってくれて嬉しかったと、そう思ったのだった。

あれ、どうしてこうなっているんだろう。

気づけば燐ENDになっている……いや、これが書きたかったんだけど。

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