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18.『クリスマスは』

読む自己で。

「んー、これからどうしようか?」

「どうしようって、会話くらいしかやることないでしょ?」


 手を繋ぎながらなのがなんとも気恥ずかしいが。

 彼女もどうして今日は甘えん坊さんなんだろうか。


「あ、そういえば啓くんって踏まれるのが好きなんだよね?」

「櫻か千都か……」

「ふ、踏んで……あげようか? お風呂には入ったし……臭くないよ?」

「じゃあお願いしようかな! なんて言うわけないでしょ……」


 こんな時間にふたりきりの状況で踏まれなんかしたら完全に目覚める。

 いい方向に進化するならともかくとして、それは完全に劣化ではないだろうか。


「た、試しに……」

「……ならちょっとだけ」


 彼女の前に仰向けで寝転んだ。

 ただ、想像と違ったのはおなかではなく顔を踏まれたということ。


「ど、どう?」

「……なんかうん……変な感じ」

「おなかとかも好きなんだよね?」


 ふみふみされていると……なんだろうかこの気分は。

 彼女は僕の服と短パン姿のため下着が見えるとかそういうのはないが、女の子に踏まれているという事実になんとも言えない気持ちになる。


「あ、あとは……ここ――」

「それは駄目だから!」

「ひゃっ!? さ、触って……」


 生足を掴んだことは申し訳ない。

 でも、あのまま続けさせていたらマジでいけないプレイになっていたから。


「ごめん……ただ、やっぱりするべきではないね」

「うん……また触られてもあれだし……やめるよ」


 完全に良くないことだった。

 あんなことをしたせいで雰囲気が微妙になりお互いに無言――とはならなかったが、変な扉が開く前に止められて良かったと思う。


「クリスマス、もう少しだよね」

「そうだね。紗織は家で過ごすんだよね?」

「うん……出られないんだ」

「僕はそもそも出ても相手いないけどね」


 家の中での様子が分からないから、それを言及することはできなかった。

 出られないと言うのは大袈裟で、恐らく家族過ごすことを大切にしているだけではないだろうか。彼女が無理やり連れ込まれたという情報を聞き僕を叱りつけたくらいだ、決して虐待とかそういうのは一切ないはず。

 とはいえ、彼女にとってはそれが少し重いということなのかもしれない。だから「君のお母さんは君を大切に思っているだけだよ」とは言えなかった。


「……櫻が啓くんに怒る気持ちが分かる気がする」

「え、ど、どこが悪かったかな?」


 きちんと聞いて直せるなら直していきたい。


「言わない、ばか」

「えぇ……」


 あ、ひとりアピールをするのが悪いのかも。

 次からは気をつけよう。




 翌日。

 外のベンチに座ってごはんを食べていたら新島兄妹がやって来た。

 直人先輩は横に座り、残念美人さんは僕の膝の上に座った。


「千都、そんなことを気軽にするな」

「いいじゃない、けいちゃんだって喜んでいるわよ」


 にしても美形兄妹だな。

 それなのにどうして僕のところへと来てくれるんだろう。


「新島先輩、瀬戸さんとはどんな感じですか?」

「んー、普通の後輩と先輩って感じだな。あ、なあ、クリスマスに誘うべきだと思うか?」

「一緒に過ごしたいならそうするべきだと思いますけど」

「私はけいちゃんと過ごすけれどね」

「いや、いらないかなあ」


 彼女は「なんでよ!」と怒った。

 いや、クリスマスとはいっても普通に過ごすからだ。

 わざわざピザとかそれっぽいのを頼んだりしないし、だから来られても大したおもてなしをできないからというわけで。


「むぅ、ならお兄ちゃんの恋路を邪魔するわ」

「いや、寧ろお前がいてくれると助かるわ。流石にクリスマスにふたりきりは緊張するからな、緒方も呼んでぱーっとやるか」

「そうね、空気の読めない誰かさんはひとりでいいのよ」


 元からみんなでわいわいやることを僕は望んでいない。

 今年は母が友達に誘われているためひとりだけど、ひとりのクリスマスもまたいいと思うんだ。


「千都下りて」

「ええ」


 ああ、やっと柔らかい感触から解放される。

 うーん、でも先輩達が紗織を誘ってくれれば彼女も楽しめるわけだし、是非とも頑張ってもらいたいところではあった。

 イメージは恐らく回復しきれていない僕が誘うよりかは、まだ可能性があるように感じるからだ。


「新島先輩、紗織のこと頑張って誘ってあげてください」

「お、おう?」

「千都、なかなか大変だろうけど紗織のこと頼んだよ」

「ふぅん、ま、あなたが言うならそうするわ」


 僕はふたりに挨拶を済まし、校舎内へと戻ることにする。

 教室に戻ったら櫻と盛り上がっている紗織を確認――うん、あくまで普通だ。

 昨日のあの後は不機嫌モードになってしまったため、この結果には安心した。


「けーくん、クリスマスどうするの?」

「うん? ああ、僕は家でゆっくりするつもりだよ。あ、そういえば千都が君と過ごしたいって、紗織も一緒がいいって言ってたよ」

「けーくんは?」

「うーん、僕はお母さんとだけでいいかな。プレゼントを用意できるお金もないし面白い話をできるわけでもないしね。というわけだから紗織もお母さんを説得してみんなのところに行ったらどうかな?」


 櫻に抱きついて黙っていたままだった彼女に進言をする。

 別に今から言っておけば大丈夫だろう。友達を優先するのは悪いことではない。

 そりゃ家族で過ごすのも大切だけど、縛るのは良くないわけで。


「……啓くんが一緒に説得してくれれば……」

「そういうのは櫻や千都に頼んだ方がいいよ。あんまりこういうこと言うのはあれだけど、君のお母さんに会いたくないんだ。ごめんね」

「櫻、いい?」

「うん、だってみんないた方が楽しいから。紗織とだって過ごしたいし」

「ありがとっ。どこかの誰かと違って優しいね」

「けーくんよりは優しいよ、私は」


 ああ……やっぱり無駄に口撃するのが好きだな。

 別に僕は自分が優しいなんて思っていないし、どう思われても構わない。

 しかもクリスマス前にもっとやらなければいけないことがある。

 ま、言うまでもなく期末テストがあるわけだ。


「それぞれのクリスマスを楽しむためにも、期末テストを頑張ろう」

「「あ、そういえばそうだった……」」


 なあに、僕らは赤点を取るほどギリギリなわけではない。

 だから、特に不安視はしていなかった。




「燐先生はクリスマスにどうやって過ごすんですか?」


 放課後、仕事を手伝いながらなんとなく聞いてみていた。

 今日は完全に先生とふたりきりで、なんか凄く久しぶりな気がする。


「実家に帰るだろうな、多分」

「やっぱり実の家族と過ごすのが1番ですよね」


 友達とワイワイするのもひとつの形ではあるが、それもまた普通のことで。


「なんだ、誘われていないのか?」

「いえ、家で過ごすって決めているんです。別に普通でいいんですよ家は」

「分かる、クリスマスだからなんだよって話だよな。問題なのは、母親からまだ気になる男のひとりもできないかと言われることだが」

「最近は結婚しない人も増えていますし、気にしなくていいじゃないですか。それに先生がその気になったら、あっという間にできますよ」


 変に異性が近づいて来ないのは先生が格好いいからではないだろうか。

 そこら辺の男子よりよっぽど男らしくて、誰かのために動けるいい大人の人。

 こういう人は女子からモテそうだ。嬉しいのかどうかは分からないけれども。 


「簡単に言ってくれるな、相性だってきちんと確認しなければいけないんだ。生徒に接するのとは違う、だろう?」

「そうですね。失礼な話になりますけど先生の年齢的に、結婚を前提にお付き合いをする、という感じでしょうから」

「結婚ね……私は今の生活で満足しているがな」


 安定した職、稼ぎがあってひとりで気ままに生活できる今を気に入っていると。

 若い内はそれでいいかもしれないが、更に歳を重ねた時に寂しくなるかも。


「それに勿体ないですよ、せっかく綺麗なんですから」

「やれやれ、生徒から言われるのは実に惨めな気持ちになるな」

「真面目に言っていますからね? そういう人がなにもせずじっとしているのは複雑なんですよ。頑張ってください、応援しますよ?」

「なにが応援だよ、自分のことも人に相談しないとできなくせに」


 これはなんとも痛いところを突いてきたものだ。

 まあでも、僕がなんと言われようと構わない。

 ましてや中学の頃のそれに比べれば、なんてことはないただの小言だ。


「ま、お前は仲間だからな、アンチクリスマスだ」

「そういうつもりじゃないですけどね。12月24から25日というだけで盛り上がるみんなが凄いなと思っているだけです」

「それは同じだから認めろ」


 なんだかんだいって今年初めてのひとりクリスマス。

 お金は3000円ぐらいあるし、ファミリーアイスでも買ってやけ食いしよう。

 仕事を終わらせひとつ息をつく。

 先生はまだ真面目にやっているようだったので、勉強をして時間を潰すことに。うん、特別難しいわけではない。ひとりというのはこういう時に集中できるので、悪いことばかりではないと言える。

 30分くらい集中してやって気づけば18時過ぎ、そろそろ帰ろうとした時のことだった。


「せんせ……あ、寝てる」


 風邪を引いてほしくないので上着を脱いでかけておいた。

 疲れているだろうから起こさずに荷物を持って教室及び学校から出た。


「真面目にやっていると思ったら寝てたとか……」


 これならさっさと帰れば良かったのかもしれない。

 てか寒い、自分が風邪を引かないようさっさと帰ろう。




「ただいま」


 挨拶をしてもこの時間に母はいないので意味はないが、昔からずっと続けてきていることなので癖になっていた。

 ソファに寝転びスマホをいじる。……通知は一切なし、悲しいね。

 集団に溶け込めないというかなんというか、変に遠慮してしまうようになっているのは正直微妙だ。

 ひとりだと分かっていて、でも自分からは積極的に参加というのもできなくて、結果は結局ひとりということになった。……自分から選んでおいてあれだが、やはり寂しいのは否めない。


「テスト頑張ろう」


 だってこれじゃ自分が1番『クリスマス』に引っ張られていることになる。

 リア充が楽しんでおけばいいのだ。特に気にすることではないさ。

クリスマスに家族以外と過ごす人は沢山いるんだろうか。

俺はずっと家族とだったからなぁ……。

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