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14.『内側の感情は』

読む自己で。

 お昼くらいまでと決めて僕らはファミレス店内に居座ることに。

 ジュースを注いできたらスタート。とはいえ、改めて休日に話すようなことはないような気がするのは、僕の気のせいだろうか。


「ねえ啓くん、朝にどこか行ってたでしょ?」

「あ、うん、先生とちょっとね」

「やっぱり! あんなところに立ってておかしいと思ったもん」


 名前呼びを頼まれたとかそういう細かいことは説明しないで――しておこう。


「へぇ、あの西山先生がね……啓くんは気に入られているんだね」

「うーん、休日にまで来るとなればそうかもね」


 僕が無理やり乗っただけではあるが、連れて行ってくれたのは事実だ。

 あそこを選んだのは景色が綺麗だったから、かな? 

 とにかく、片道30分は結構大変だろうし、そうじゃなければ乗せることすら許可しないと思う。だから距離感に悩んでしまうということでもあるが。


「啓くんなんて迷惑しかかけてなさそうなのにね」

「そうだね、実際に紗織の言うとおりだ」


 他の子がタメ口だった時は「敬語を使え」と口にしていたというのに、僕の時は寧ろやめろなんてね。先生こそ風邪を引いていたのではないだろうか。


「ね、どうなの? 西山先生のこと好き?」

「そりゃ好きだけど、異性として好きというわけじゃないからね」


 そもそも僕はズタボロに振られたし、ダメ出しされたし、その可能性は0だ。

 それに先生と生徒の恋愛なんて許されるわけがない。つまり、最初からどちらにしても無理なわけだ。

 そういう点では勘違いしないで済むものの、あまりにああいう行為が続くと自惚れてしまいそうなのでやめてほしかった。


「紗織は好きな人いないの?」

「んー、そうだね、いまは特にいないかな」

「今はって、昔はいたんだ?」

「まあね、私だって恋する乙女だもん、好きな人くらいできるよ」


 櫻にもいるみたいだしみんな頑張っているんだなあ。

 その点、僕はひとり残されているかのよう。

 先生が言っていたように恋愛が全てではないけれど、このまま高校を卒業したらますます恋なんかできなさそうだ。


「啓くんにもし好きな人ができたら、ちゃんと隠さずに教えてよね」

「できたらね、そっちこそ教えてよ?」

「できるかなあ」

「格好いい子は沢山いるからできるよ」


 うーん、落ち着かない。

 櫻のスマホを持っているということが罪悪感やばいし、櫻が気になる男の人がどんな感じなのかが気になる。

 にしても、紗織にすら家を教えてなかったなんて驚いた。

 やっぱり家になにかあるのか? 家庭の事情に首を突っ込むわけにもいかないし僕にできるのは傍観することだけ、これはいつもそうだが……。


「ひゃっ!?」

「えっ? あ……」


 紗織の声に反応して見てみれば、窓ガラスに張り付く櫻の姿が……。

 彼女は慌てたように入ってきて、そして当たり前のように僕の隣に座った。


「けーくんスマホ知らない!?」

「あるよここに、はい」

「ありがと! ずっと探してたんだよね……道路に落ちてたとかじゃなくて良かったよ……」


 家にいた方が良かっただろうか? ……申し訳ないことをしてしまったな。


「櫻、通知きてたよ」

「え、み、見た?」

「ううん、ディスプレイが点いただけ」

「よ、良かった、見ていないなら安心だ」


 なっ!? そこまで隠しておきたいということは、うん、確定だなこれは。

 なんかショックを受けている自分がいた。その人の前でしか見せない1面とかありそうで、それが見られないことが少し悲しい。


「櫻~そんなに大事な人からだったの?」

「もう紗織、ちがうよ~」

「でもさ、どうしてそんな慌ててたの?」

「それは……紗織が相手でも言えないかな、それにけーくんがいるし」


 前々から感じていたが、このふたりが仲いいのか分からない。

 家すら教えてないって言うし、本当に信頼しているんだろうか。

 もし表面上だけであったとしたら、自分のことじゃないのに寂しいと思う。


「ぶぅ、櫻っていつもそうだよね、全く大事なことは言ってくれないというか」

「人間ってそういうものでしょ? 誰にだってホイホイ言えるわけじゃないよ」

「だけどさあ……ずっと一緒にいるのに」

「だからこそだよ、親しいからこそ言えないこともあるよ」


 親しいから言えないことってなんだろう。

 ひょっとして、紗織のことが好きだけど素直になれないから、その人に相談に乗ってもらっている、とかだろうか。

 僕らにだけモヤモヤを残して、櫻は呑気にドリンクバーを注文していた。


「はぁ、怪しいよねあれ」

「うん、私もそう思う」


 あの子がジュースを注ぎに席を立ってから密談。


「あまりに露骨すぎるっていうか、別に言いふらしたりしないのにね」

「うっ、私が言うのはちょっと説得力ないから」

「僕はともかく、紗織のことは信用してあげてほしいけどなあ」


 彼女が戻ってきて楽しそうに紗織と会話を始める。

 彼女の横に櫻が移動したため、頬杖をついてそれをぼうと眺めることに。

 あくまで普通の彼女だ。最近変化した点は薄い笑みを浮かべることが少なくなったこと。つまりまあ、なにかがあったと予想することはできる。

 と言っても、昨日から今日にかけては彼女も家にいたわけだし、あったとすれば一昨日ということになるのか。その前も彼女が家に泊まったため、そこしか有りえない。


「櫻、家ではどうやって過ごしてるの?」


 丁度その時、紗織が少し踏み込んだことを櫻に聞いた。


「うーん、スマホで動画を見てるかな」

「お、どういう動画見てるの?」

「れ、恋愛アニメ……」

「櫻が恋愛アニメ……」


 僕も紗織と同じように驚いた。

 まさかそのようなジャンルを好むとは思っていなかったから。

 それとも単に、今の自分が恋をしているから勉強のために見ているだけなのか?


「でもさ、あんまり参考にならないんだよね。だってアニメのヒロインって可愛い子が多いし、最初にツンツンしている割には主人公の子がちょっと頑張っただけで好きになっちゃうからさ」

「さ、参考……」

「あっ!? ……そういうことには慣れないからさ……」


 彼女は隠すのが下手くそだな。

 ますます見たくなる、この彼女が興味を抱いた男の人ってやつを。

 冗談だったのかもしれないが、友達いらないみたいなことを言った子だぞ……。

 その人がいるから、その人との時間を確保できないから、ということだろうか。


「ね、私にだけ教えてくれない?」

「ごめん、紗織が相手でも言えないよ」


 これは信頼できないからというわけではないな。

 彼女の顔は物凄く真剣で、食いつくようなことはできないそんな雰囲気。


「もう……なんか悲しいよ、小学生の頃から一緒にいるのにさ」

「そう言わないでジュースでも飲んで、紗織だって隠してることあるでしょ?」

「ないよそんなの」

「好きな人とか、隠してるでしょ?」

「さっき啓くんにも聞かれたから答えたけど、べつに啓くんのことが好きとかじゃないからね? 私は櫻と違って隠さないもん」


 待て待て、櫻の表情が少し厳しくなったぞ今っ。


「だ、誰でも紗織みたいに言えるわけじゃ――」

「はい、終わり! せっかくファミレスにいるんだから喧嘩は駄目だよ!」


 どうしてこんな流れになったんだっけか、なんてすっとぼけることはしないが。

 まあ、誰が誰を好きになろうと簡単に言えば自由だ。

 相手が犯罪者とかではない限り、彼女を大切にしてくれる人が相手なら心の底から応援することできる。だというのに僕らは食いついてしまった。


「櫻、ごめんね」

「ど、どうしてけーくんが謝るの?」

「いや、そもそも朝に僕が気づいておくべきだったんだ。そうしたらこうはなってなかったからね、だからごめん」


 そこでジュースを飲んで席を立つ。

 正直、瀬戸櫻という女の子が余計に分かりにくくなってしまった。

 分かっているのは、僕に興味を抱いていないこと。

「けーくん」なんて呼んでくれるのは可愛いが、本命の人に申し訳ない。

 とりあえず、家に泊めるとかはもうやめよう。

 彼女のためにもならないことを続けたら足を引っ張ることになる。

 彼女がそうしたように僕も気持ちを吐露しない、偽り続けてみせるぞ。

 別に僕が彼女のことを好きというわけではないし、なにも困ることはない。


「けーくん」

「どうしたの?」

「なんか難しく考えてない?」

「そんなことな……あ、そう考えているよ? どのジュースにするかってね」


 敢えて紅茶とかでも面白いかもしれない。

 というかなんだ彼女は、また妙な鋭さで勘付いたということだろうか。

 結局、僕は黒い炭酸を選択してグラスに注いでいく。

 ボタンを押すだけで炭酸が出てくるんだから凄い話だ。


「けーくん、もうあふれるよ?」

「おわっ、あ、ありがと。先に戻ってるね」


 この子及び先生との距離感を適切なラインに戻す。

 あとは約束どおり、紗織との散歩をするだけでいい。

 ミロちゃんは僕のことを気に入ってくれているので、会えると思えばこちらも楽しいわけで、マイナスなことはなにもないんだ。


「紗織、お昼に帰ったらミロちゃんの散歩に行こうか」

「うん、ミロは歩きたがりだし、啓くんに会えたら嬉しいだろうから」


 この子も母親はどうだか知らないけど。

 やっぱり完全に信じられるのは自分だけ、悲しいな本当に。

 母もと言いたいところだけど、疑われたことがあったからなぁ……。

 過去のことを完全に気にせず生きるなんて無理だ。先生ほど強くないから。

 ところで、彼女達はどう思っているんだろう。

 程度はどうであれ、自分らが原因でひとりの人間を追い込んだという現実を前に、どういう風に折り合いをつけていたのだろうか。

 そしてその追い込んだ人間とこうして普通に喋るというのはどういう……。


「けーくん?」


 この曖昧な表情の内側は、どうなっているんだ?

 もっとも、僕が聞いたところで答えないのは分かっているため、適当に「うん」とだけ返しておいた。

 恋愛アニメを参考にし活かしたい相手がいるというのに、彼女はなんでここにいて、なんで僕に話しかけてくるんだ。


「紗織、帰ってきたら連絡くれる? そしたら散歩に行くからさ。で、ここにお金を置いておくから、悪いけど会計を頼むね。それじゃあ」

メインヒロイン決まらないよ。

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