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箱庭実験  作者: 朝霧 橙子
6/20

4

最初に目を覚ましたのは男だった

男は目を覚ましてすぐに、死体となった二人を見、暫く何事か考えるような仕草を見せる。次いで、男は自身の隣で眠ったままの女を見つめて首を傾げた


まるで思考回路が確立されているかのような行動に、ツヴァイ達は慌てて男のモニターに目を向ける

脳波を示すモニターは、確かに思考している事を示しており、記憶も、学習もさせていなかった男が初めから知能がある事を示唆していた


「……何故だ?」


「わからない。けど、あいつは理解ができるかもしれないな」


AIに指示を出すと、AIは映像と共に音声と文字を表示していく


男にはかつての世界で始まりの存在だったものを意味するアダムと名付け、エリスと名付ける事にする。それを伝えると、AIはその通りに表示し


「おはようアダム」


と、繰り返した

アダムは黙ってその言葉と文字を見つめる

死んでいる二人の映像を映し、男が埋める動作行い二人を埋める


「アダム、二人を埋めてください」


幾度か繰り返すと、アダムはゆっくと体を起こし死んでいる二人に砂を掛け始める。時折映像を眺めては手を止め、掘る映像の時は二人の下に手を入れて砂を掘り、掛ける仕草の時には掛けていく

一日中手を休めることなくそれを行うのかと思ったが、アダムは疲れたら手を止めて休んでいた。喉の渇きや空腹もあるかもしれない。数回目の休憩で、近くにある木の映像と、木の実を映し、それを取って食べる動作を映す


「アダム、木の実を食べてください」


アダムは、確実に「アダム」という言葉が自分を示していると理解し始めた

AIの音声がアダムという単語を口にすると、顔を上げるようになったのだ。アダムは黙って立ち上がると、木の実を探すために歩いた。数メートル先に同じ木が生えている。辿り着いたアダムは、手を伸ばして木の実を取るとためらいなくそれを齧る。種ごと齧ってしまってはいるが、それは映像に種を吐き出す動作が無かったためだろう。食べる。という行為を気のすむまで行い、アダムは自然と元の場所に戻っていった


暫くして、アダムが腹部を押さえて立ち上がった

排泄にあたる行動だろうか? そう推測し、排泄場所の指定と排泄の仕方を映像で流していく

アダムはその通りに行い、行うとまた作業に没頭した。排泄も、食事に関しても、言葉は理解していないのだろうが、時折その行動を挟むようになり、そこに関してはAIは指示ではなく、アダムが今何をしているのかを説明するようになっていた。そんなアダムの行動に二人は静かに興奮し、一つも逃さないように記録していく


「これってさ、生まれついた知能があるってことかな」


「まだ何とも言えない。女が目覚めてないからな。アダムが特異的なものである可能性もある」


二人で会話をしながら、モニター越しにアダムの行動を記録し、推測を組み立てていく


アダムは自身の呼び名を理解している


指示を出されたことはやるが、その通りではない


映像が行動を示していると理解している


排泄に関しては、学習が早い


等、いくつかの情報に確信を得る事が出来た

アダムはと言えば、日が沈むまで行い、女が埋まった。男は体格がいいからか半分ほど埋まっている。


「お休みなさい。アダム」


体を横たえ、目を閉じる動作と共に、AIが休むように指示を出す

その意味を理解しているわけではないのだろうが、アダムはその映像通りに行動し、暫くして脳波が睡眠状態であることを示した

作業の終了と共に、二人も部屋を後にする。ただし、何か突発的な事が起きたら、二人の部屋には連絡が入るように設定もした。二人しかいない状況だ。もしエリスが目覚めたら。そう思うと、今夜はあまり眠れないだろうと、二人は胸の内で思った

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