無くなった消しゴム
遥彼方さま主催
夏企画
「夏祭りと君」
2019.07.01~2019.07.31
再度、誠に勝手ながら、無断で参加しました。
あなたの行動は自分の意志ですか? ……それとも、
少年が消しゴムをケースから取り出し、それを見つめる。少年はそこにある文字に胸の鼓動が高鳴るのを感じていた。
それは少し時を遡る。
授業中の出来事だった。
「あっ、消しゴムがない……」
「あたし二つあるから貸してあげる。はい」
「おう、サンキュー」
なんてことはない会話だった。
放課後、未だに消しゴムは少年の下にあった。
少女に返そうとしたら、家でもなかったら困るでしょ、と明日まで貸してくれたのだ。
少年は誰もいない家の中で、あることに気づく。
噂のお呪い、それが誰にも気づかれることなく確認できるという状況に。
勝手に盗み見る罪悪感と共に、他人の秘密を覗き見るなんとも言えない高揚感が少年に湧きおこる。
そして少年は至上の幸福感を手にする。
叫んで転げ回っても、仕方がない事だった。
そして翌日の行動へと考えを巡らす。幸せな未来を妄想しながら。
他愛のないお呪い。
好きな子の名前を見つからないように消しゴムのケースで見えない所へと書く。
実際はそれを知った人物が名前を見つけることで両想いならば告白する後押しとなる。
見つからないように、というのは建前だ。
見つけさせることにこそ本来の意味がある。
両想いであれば告白しても振られる心配はない。
あとは羞恥心に打ち勝って告白できる勇気があるかどうかだ。
そのお呪いは何故か一週間ほど前に急速にクラス中に広まった。
少年は少女が夏祭りを楽しみにしていることを聞いている。
なのに今年は行けそうにないと愚痴っていた。
それは両親が忙しいそうだ。だが一人で行くのはダメだという。一人娘を心配しない両親はいない。しかし誰か一緒に行くならば良いとも、少年は聞いた。
少年は少女のために夏祭りへ一緒に行くことを誘うように決めた。
翌日の放課後。赤い顔の少年が口を開く。この時期の太陽はまだ赤くなるには早いから顔が赤いのは夕方だからではない。
「今度の夏祭り、君と一緒に行きたい!」
「ホント! 両親が忙しいから今年は行けないと思っていた。誘ってくれて、ありがとう。嬉しい」
人は自らの選択した結果を容易に受け入れる。
自分の心で選んだ選択肢。つまりは自分の意志。
だからこそ結果がどうであれ、それを受け入れる。
自己の責任において選び抜いたのだから。
ただし、その選択肢を用意した者が別にいたのだとしたら……
他の選択肢よりも良いと思えるよう誘導されていたとしたら……
少女はそっと少年の机の中へと盗んだ消しゴムを入れるのだった。
((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
女の子怖い。
緑のペンでとかお呪いはいろいろあるんでしょうねぇ。